一般企業の場合、一定の年齢で退職制度がありますが、医師には定年がないと言われるほど、高齢の医師が現役で医療現場に携わっています。
そのような状況の中、不安材料となるのはやはり退職金の有無です。
今回は、美容クリニック医師の退職金の相場と現場の声、老後を安心して過ごすための対策などについて解説します。
目次
医師の退職金相場は、1,000万円から3,000万円が一般的
基本的に、退職金の金額は企業での勤続年数によって決まると言われています。
これに対し、医師は40代になるまでいろいろな病院を転々とし、一つの職場に定着するのはその後の15年から20年以上とされています。
こちらはもちろん、美容クリニック医師も例外ではありません。
また、一般的には医師の退職金相場は以下のようになっています。
・民間医師:1,100万円
・公務員医師:3,000万円
・私立病院勤務医師:1,000~2,000万円
・国立病院:1,200万円
一方、厚生労働省による「平成25年就労条件総合調査結果の概況」、平成24年1年間における勤続35年以上の定年退職者の学歴に合わせた退職金は、以下が一般的な数字になっています。
・大学卒:2156万円(2335万円)
・高校卒:1965万円(2001万円)
つまり、美容クリニック医師を含む医師の退職金相場は、一般企業に勤める方より高いケースがあるものの、そこまで大きな差があるわけではないということです。
医師の退職金における算定方法について
医師の退職金における算定方法では勤続年数が重視されますが、こちらは正確には定額制度というものです。
具体的には、勤続年数と退職事由のみで退職金の金額を決める制度であり、退職事由には自己都合、会社都合のいずれかが該当します。
その他の退職金算定方法は、主に以下の通りです。
・基本給連動型退職金制度
・別テーブル制度
・ポイント制
基本給連動型退職金制度は、退職時の基本給、在職年数、退職事由を連動させ、退職金の金額を算定するという制度です。
在職中、昇級したことで基本給が上がっていた場合、かなり高額な退職金が受け取れる可能性もあります。
また、別テーブル制度は、給与制度とは一切リンクさせない退職金の算定方法であり、勤務年数に応じた基準額に、退職時の役割といった等級に応じた係数をかけることで、金額を割り出します。
そして、ポイント制は医療機関での在籍年数、在籍期間中の各等級および各役職での滞留年数という2つをポイント化したものです。
在職数に蓄積されたポイント数に、ポイント単価をかけた金額が退職金となります。
こちらの算定方法の場合、同期入社で同じ年に退職したとしても、出世のスピードによって退職金額に大きな差がつきます。
医師の退職金に対する当事者の声は厳しい
場合によっては、医師には会社員の退職金より高い金額が提示されるものの、現状に不満を持つ医師が少なくありません。
最初に触れた医師の退職金金額も、勤続年数によって大きく変動する場合があります。
実際に、「65歳で退職したが、最後に勤務した病院には3年しかいなかった。退職後に明細を見たら、50万円しか退職金が出ていなかった」など、驚きの声もあります。
さらに言えば、医師業界では年俸制が導入されていることもあり、場合によっては退職金が出ないということさえあるそうです。
そのため、「退職したのにアルバイトせざるを得ない」「20年も勤務した病院が年俸制であることがわかり、退職金がほとんど出なかった」などという声が、医師業界から多く聞こえています。
開業医には退職金が存在しない
ここまで話したのは、あくまで美容クリニックを始めとする医療機関に勤務する勤務医の退職金についてです。
一方、自らクリニックを開業する開業医の場合、自身が経営者であることから、会社から支給される退職金は当然存在しません。
そのため、退職金制度がない医療機関に勤めている勤務医同様、自身で老後資産の形成をする必要があります。
また、開業医は個人事業主であるため、国民年金にのみ加入していることになります。
仮に20歳から60歳まで継続して国民年金に加入していたとすると、65歳以降に受け取ることができる年金額は、満額で78万円、夫婦で合計したとしても年間156万円です。
その反面、勤務医の場合、厚生年金にも加入しているため、年収にもよりますが、国民年金だけよりも大きな年金額を65歳以降に受け取ることができる可能性は高いです。
つまり、美容クリニック医師を含む開業医は、退職金が存在しない上に、将来の年金額も少ないため、ますます自助努力での準備が必要になるということです。
若いうちから老後に備えた金銭感覚を蓄えることが大事
このようなリスクを避けるためには、やはり早くとも美容クリニック医師を目指した段階で、老後の資金対策を考えておくことが大事です。
貯蓄に励んだり、定年後も仕事ができる人脈を探したり、開業して退職金を用意できる体制を整えたりと、さまざまな方法を実践する必要があります。
また、勤め先のクリニックが退職金制度に対応しているかも、必ず確認しておきましょう。
このような入念な準備こそが、老後の安定につながっていきます。
ちなみに、開業医の場合は、投資や小規模企業共済などを活用し、毎月老土資金を積み立てていくことをおすすめします。
小規模企業共済とは、会社役員を退任したときや、個人事業をやめたときなどに収入を補填するものとして、一時金や年金の方式で受給できるよう、あらかじめ積み立てておく共済制度のことをいいます。
将来の受け取り時には、一定の条件をクリアすれば利息相当額が上乗せされ手戻ってきます。
ただし、美容クリニック等の開業医が小規模企業共済に加入する際は、常時使用する従業員の数が5人以下という条件を満たさなければいけません。
そして、個人から法人成りし、医療法人を設立した場合には、その役員である医師も加入できなくなるため、注意が必要です。
医師に向いている投資の方法について
特に退職金が存在しない開業医は、現役のころから投資を採り入れ、老後資金を貯蓄しておくことが望ましいです。
このとき、特におすすめなのは不動産投資です。
不動産投資は、投資の中でも安定した収益を確保できるとされていて、初期費用はある程度かかるものの、医師が行う場合はかなり有利になります。
なぜなら、医師は職業柄、金融機関からの信用が熱く、融資を受けやすい傾向にあるからです。
また、医師は高収入であるため、所得額に応じて徴収される所得税、住民税などの金額が高くなりがちですが、不動産投資では、ローン金利や減価償却費、雑費などが経費として認められるため、初年度はかなりの節税効果が見込めます。
その他、万が一のときの保険になるというのも、開業医に不動産投資が向いている理由の1つです。
物件購入時のローン契約では、審査の条件として団体信用生命保険(団信)への加入が求められます。
こちらは、ローン契約者である医師が亡くなったり、高度障害になってしまったりして、返済が困難になった場合に、保険会社が残債を返済してくれるというものです。
つまり、万が一のことがあってもそのまま不動産が残るため、家族に迷惑をかける心配がないということです。
まとめ
ここまで、美容クリニックの勤務医や開業医における退職金事情、老後対策を中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
医師になるための勉強、業務内容が大変であるからこそ、老後は安定した生活を確立したいものです。
そのため、勤務医の方も開業医の方も、若いうちから老後に備え、計画的な金銭感覚を養っていきましょう。