これから美容クリニックを開業しようと考える方は、どれくらいの平均患者数を目指せば良いのか、開業前に知っておかなければいけません。
また、開業時に必要な取り組みもあわせて把握することで、スムーズに平均患者数を達成することができます。
今回はこれらのことについて、具体的に解説します。
目次
平均患者数とは?
そもそも平均患者数とは、文字通りその美容クリニックにおいて、平均でどれくらいの患者さんが訪れているかという数字を指しています。
年単位、月単位、週単位などで算出することもありますが、本記事では1日に訪れる患者さんの平均数、つまり日単位で算出したものを平均患者数とさせていただきます。
また、1日の平均患者数は、延べ外来患者数を診療実日数で割ったものです。
診療が休みの日は、必ず訪れる患者さんの数がゼロになるため、こちらはカウントしません。
美容クリニックの平均患者数について
結論からいうと、美容クリニックが達成すべき1日の平均患者数は、およそ40人です。
こちらは、美容クリニックだけに限らず、すべての診療科目において目安となる数字であり、最初に設定すべき目標としては非常に適していると言えます。
ただし、こちらはあくまで平均値です。
1日100人以上来院している美容クリニックも当然存在するため、開業前の準備を万端にし、より多い数字の実現を目指すに越したことはありません。
ちなみに、美容クリニック以外の診療科目には、以下のような平均患者数の目安があり、科目によってかなりのバラつきがあることがわかります。
診療科目 |
1日の平均患者数(目安) |
眼科 |
50人 |
内科 |
35人 |
外科 |
45.4人 |
小児科 |
43.3人 |
整形外科 |
103.6人 |
耳鼻咽喉科 |
65人 |
皮膚科 |
60.4人 |
参考:平成26年 医療施設調査
開業時に必要な取り組みについて
美容クリニックを開業する際の各項目において、さまざまな取り組みを行うことで、開業後に目安の平均患者数を実現しやすくなります。
では、以下の項目において必要な取り組みを見てみましょう。
・立地選び
・内装づくり
・広告宣伝
・その他
立地選び
美容クリニックを開業する際は、まず立地選びから始めることになりますが、このときに意識したい取り組みとしては、患者さんに認識されやすい場所を選ぶということが挙げられます。
美容クリニックを訪れる患者さんの多くは、スマートフォンでWeb検索を行いますが、このとき駅の出口の近く、特徴的な建物の近くなどにクリニックがあれば、迷わずに来院することが可能です。
また、どうしても視認性の悪い場所にしか開業できないというのであれば、ホームページなどに駅の出口からの道順を説明する写真、動画などを掲載し、カバーしなければいけません。
内装づくり
美容クリニックの開業後、スムーズに平均患者数を増加させるためには、内装づくりにもしっかりこだわらなければいけません。
例えば、美容クリニックの場合、靴を脱いでスリッパにするか、靴のまま入るシステムにするかは、どちらであっても問題のない診療科目です。
そのため、施術内容をチェックし、下半身の脱衣回数が多いかどうかを見極めた上で、採用する形を選びましょう。
また、美容クリニックには女性が訪れることも覆いため、パウダールームは広めに設計し、なおかつメイク落としシートなどのアメニティは充実させておく必要があります。
その他、患者さんに良い印象を持ってもらうためには、プライバシーを重視した内装づくりを心掛けることも重要です。
美容クリニックの多くは予約制ですが、待合室で患者さん同士が鉢合わせるような状況は作るべきではありません。
なぜなら、“美容クリニックを訪れている”ということを、他人に見られたくないと考える患者さんは多いからです。
よって、内装づくりの際は、誰とも鉢合わせることのない個室の待合室を設けたり、契約の内容を他人に聞かれずに話すことができるスペースを設けたりしなければいけません。
広告宣伝
美容クリニックの開業後、スムーズに平均患者数を増やすためには、広告宣伝も欠かせません。
また、美容クリニックの場合、クリニックの基本的なマーケティングの他に、エステサロンやスポーツジムといった店舗に似た広告宣伝の採用が求められます。
例えば、以下のような案は採り入れるべきです。
・紹介キャンペーン
・コース割引
・SNSインフルエンサーの活用 など
ちなみに、広告宣伝は美容クリニックだけに限らず、すべてのクリニックにおいて必要不可欠なものですが、コストは非常に高く、売上の30%にも及ぶと言われています。
そのため、一度実施した広告宣伝を継続し続けることなく、毎月効果の検証を行い、最適なコストパフォーマンスを求めて修正しなければいけません。
その他
美容クリニックは、他の診療科目と比べて自由診療の多いクリニックです。
このことから、施術内容や施術時間、スタッフの構成などに関しては、保険診療中心のクリニックと比べて多岐に渡るケースも多いです。
そのため、このような状況にも柔軟に合わせることができる電子カルテシステム、予約システムの選定は必須だと言えます。
また、美容クリニックでは、問題なく施術を行ったにもかかわらず、患者様に納得してもらえないというケースがあります。
このようなケースに備え、契約書や同意書を作成するとともに、医師賠償責任保険への加入、顧問弁護士との契約など、守りを固めておかなければいけません。
もちろん、このようなバックアップは、患者さんを安心させること、ひいては平均患者数の増加にもつながる取り組みです。
美容クリニック経営の失敗事例
では最後に、美容クリニックの開業や経営に失敗し、平均患者数の目安を達成できなくなる事例について解説したいと思います。
具体的には以下の通りです。
・開業コストを使いすぎる
・コンセプトが明確でない
・スタッフが定着しない
開業コストを使いすぎる
美容クリニックの開業時、売上見込みの数字だけを見て、「多少開業コストが多くなっても、これだけ売上があればすぐプラスにできる」と考える開業医の方は多いです。
さらに、開業コンサルタントの言葉を鵜呑みにしすぎた結果、開業コストが莫大な額になってしまうというケースもよく見られます。
もちろん、美容クリニックを開業するにあたって、ある程度の開業コストは必要ですが、簡易な売上見込みだけをみてその金額を決定するのは危険です。
大事なのは、あくまで中長期の売上見込みを堅実に算出し、開業コストの上限を把握することです。
コンセプトが明確でない
美容クリニックの売りや強み、つまりコンセプトが明確でない場合、ターゲットを絞ることができず、開業後に思いの外平均患者数が伸びないケースがあります。
このような状況を避けるためには、開業前の広告宣伝において、自身の美容クリニックが近隣と比べてどこに強みを持っているのかについて、明確に打ち出す必要があります。
スタッフが定着しない
美容クリニックの開業準備を適切に行い、無事に平均患者数を達成できたとしても、そこで油断してはいけません。
患者さんの数が増加すれば、スタッフを増員しなければいけない可能性がありますが、マネジメントがうまくできていないと、せっかくコストを費やして採用したスタッフが定着しなかったり、患者さんに悪い印象を与えてしまったりするおそれがあります。
まとめ
ここまで、美容クリニックの平均患者数、開業時に必要な取り組みなどについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
美容クリニックが平均患者数を達成するためには、開業後にスムーズな経営をするためのプランを用意しておく必要があります。
また、成功するためのコツだけでなく、失敗を避けるためのコツについても、同時に把握しておかなければいけません。