整形外科を開業した後は、1日に必要な平均患者数、平均売上をクリアし、まずは経営を安定させなければいけません。
もちろん、こちらの目標達成がゴールではありませんが、当面の間意識しなければいけないのは確かです。
ここからは、経営のポイントとあわせて、整形外科の平均患者数、平均売上について解説します。
目次
整形外科の平均患者数、平均売上について
クリニックの規模や、リハビリサービスの提供具合にもよりますが、整形外科は1日100~130人程度の平均患者数を達成すべきとされています。
ちなみに『平成26年医療施設調査』によると、整形外科のクリニックの平均患者数は、1日あたり103.6人でした(月23日計算)。
また『支払基金「統計月報」』によると、整形外科の1日あたりの単価は427円となっています。
つまり、整形外科が目指すべき1日あたりの平均売上は、単純に103.6×427で44,237円ということになります。
では次は、こちらの平均売上について、他の診療科目と比べて多いのか、少ないのかを見てみましょう。
整形外科の平均売上は他の診療科目よりも多い?少ない?
先ほども参考にした医療施設調査、統計月報を基に、他の診療科目の平均売上を算出すると、以下のようになります。
・内科:1日あたり平均患者数35人×1日あたり単価764円=1日あたり平均売上26,740円
・小児科:1日あたり平均患者数43.3人×1日あたり単価510円=1日あたり平均売上22,083円
・外科:1日あたり平均患者数人45.4×1日あたり単価675円=1日あたり平均売上30,645円
・皮膚科:1日あたり平均患者数60.4人×1日あたり単価391円=1日あたり平均売上23,616円
・整形外科:1日あたり平均患者数103.6人×1日あたり単価427円=1日あたり平均売上44,237円
このように比べてみると、整形外科が達成すべき1日の平均売上は、他の診療科目よりも極めて多いことがわかります。
整形外科は、1日に必要な平均患者数がダントツで多いため、平均売上が高くなるのは当然と言えます。
整形外科が平均売上を達成するのは難しい?
整形外科は、達成すべき平均売上の金額が大きいですが、他の診療科目に比べて、患者様一人当たりの平均診療単価が圧倒的に低いです。
そのため、多くの患者様を集めなければ、平均売上の達成はもちろん、必要な収入を確保するのも難しくなります。
しかし、院長先生が一人で1日100~130人もの患者様を診察するのは難しいため、リハビリサービスの充実を図る必要があります。
また、整形外科は、院長先生の専門性を出すのが難しい診療科目でもあります。
よって、理学療法士を在籍させて体制を充実させるなど、リハビリサービスの部分で差別化を図ることも重要です。
整形外科の経営におけるポイントについて
整形外科が平均売上をクリアするにあたって大事なポイントとしては、まず立地が挙げられます。
整形外科に訪れる患者様には、足を骨折している方なども多いため、車での乗り入れがしやすい入口が必要であり、立地としては、駅もしくはバス停が近いエリアが望ましいです。
そして、いずれの立地にしても、駐車場は必ず用意すべきです。
駅前だと土地の費用が高額になってしまうため、近くにコインパーキングがあるような場所にクリニックを建てるのも1つの手段です。
また、前述の通り、リハビリサービスを充実させることは重要ですが、開業時にすべて揃えると、開業資金が倍ほどかかってしまうため、少しずつ導入するようにしましょう。
戸建てとテナントビルではどちらの開業がおすすめ?
整形外科の立地選びをする際には、同時に戸建てクリニックを開業するのか、テナントビルで開業するのかを選ぶことになります。
戸建てクリニックは、設計プランの自由度が高く、希望に合ったクリニックを作ることができます。
また、駐車場の台数も確保できる場合が多いため、車を利用した患者様の来院も見込めます。
しかし、戸建てクリニックは開業資金が高額になるだけでなく、開業までの期間も長引きやすいというデメリットがあります。
一方、テナントビルでの開業は、初期投資が比較的少なく、駅前などの好立地物件や、医療モールといった集患に有利な物件を選ぶことができる可能性も高いです。
その反面、テナントビルは設計プランの自由度が低く、制約も多いケースが多いです。
窮屈な設計になることから、医療機器の搬入や設置、空調設備、換気設備、給排水設備などの対応に関しても工夫しなければいけません。
どちらがおすすめとは一概には言えませんが、優先したいポイントさえ決まっていれば、それほど開業形態に悩むことはないかと思います。
患者様のニーズを合った医療を提供することも重要
整形外科が平均売上を達成するためには、立地やサービスなどの面で優位に立つことも大切ですが、その地域との連携を深め、患者様のニーズに合った医療を提供することも忘れてはいけません。
例えば、整形外科は高齢の患者様が多いため、生活習慣病治療に関する潜在的なニーズがあることに着目すれば、近隣の内科専門医との積極的な連携も考えられます。
また、整形外科では専門性をアピールするのが難しいですが、リュウマチ科やリハビリテーション科を標榜することで、患者様にどのような整形外科なのかを汲み取ってもらいやすくなります。
その他、中高年女性の間では、骨粗鬆症のニーズも大きくなっています。
そのため、平均売上の達成間近、あるいは達成したくらいのタイミングで、骨塩量測定装置を導入し、こちらのニーズに積極的に応えていくなど、特色のある医療サービスを心掛けることで、一度軌道に乗った経営をさらに安定させることができます。
内装にも気を遣うべき
整形外科で平均患者数、平均売上の両方を増やすためには、クリニックの内装にも気を遣わなければいけません。
まず、院内は車椅子や松葉杖の患者様が訪れることを見越して、全体的に広めである必要があります。
また、待合室のイスに関しては、少し高めの腰掛など、高さが異なるものをいくつか用意することをおすすめします。
ちなみに、リハビリ室の広さに関しては、運動器リハビリの施設基準を満たすため、最低でも45㎡以上にする必要がありますが、実際の運用では、これだけの広さでも手狭に感じるケースが多いため、少し余裕を持って設計すべきです。
整形外科の人材募集におけるポイントについて
整形外科が経営に失敗しないためには、優秀な人材が必要不可欠です。
“整形外科が平均売上を達成するのは難しい?”の項目で少し触れましたが、リハビリサービスの充実を図るためには、まず理学療法士、作業療法士、放射線技師といった専門職を採用すべきです。
また、上記の専門職の人材を募集する際の給与条件ですが、こちらは最初に周辺の給与相場を確認しておかなければいけません。
なぜなら、理学療法士や作業療法士、放射線技師といった職種は、通常の地域差に加え、供給が学校の数によっても変わってくるからです。
ちなみに、整形外科で専門職の求人募集を行う際は、通常の求人媒体だけでなく、各専門職が閲覧するWebサイトにも求人票を掲載すべきです。
まとめ
ここまで、整形外科の平均患者数や平均売上、経営戦略について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
整形外科は診療単価が低い分、他の診療科目よりも多くの患者様を集め、平均売上を伸ばさなければいけません。
また、整形外科は、院長の専門性のアピールや他院との差別化が難しい診療科目でもあるため、平均売上を達成し、その後も安定した経営を続けていくのであれば、さまざまな角度からの工夫が必要です。