開業医なら知っておくべき従業員の退職金の計算方法


美容クリニック等の開業医は、自身の退職金対策だけでなく、従業員の退職金対策も取らなければいけません。
ここからは、開業医ならぜひ知っておくべき、従業員の退職金における計算方法を中心に解説します。
計算方法を知り、必要な金額を把握しておくことで、退職金の捻出に頭を悩まされずに済むため、ぜひご覧ください。

目次

そもそも退職金とは?

退職金とは、読んで字のごとく会社を退職する従業員に対して支払われる金銭のことをいいます。
こちらは、法律で支払いについて強制されているものではありません。
労働基準法では、退職金がある場合、就業規則にその支払い方法や金額について記載することが求められていますが、事業所が退職金を支払わなければいけないというルールは存在しないのです。
そのため、美容クリニックの開業医は、退職金を支払うかどうか、自分自身で決めることが可能だと覚えておきましょう。

クリニックにおける従業員の退職金事情について

国立病院や公立病院、大手総合病院や企業資本の病院では、おおむね高水準の退職金が支払われている傾向にあります。
一方、美容クリニックを含む小規模な病院やクリニックでは、退職金規定を定めていないところも多く見られるのが現状です。
こちらの理由としては、単純に国立病院や公立病院などと比べて、退職金を支払う余裕がないクリニックが多いことが挙げられます。

退職金を支払うことのメリットについて

美容クリニックを含む小規模な病院、クリニックでは、経済的な都合上、従業員に退職金を支払えないケースも多いという話をしました。
しかし、美容クリニックが退職金を支払うことで、いくつかのメリットも生まれるため、可能な限り財源を確保し、計画的に支払うことをおすすめします。
具体的には、以下のようなメリットがあります。

・良い人材を確保できる
・早期退職を促進できる
・給与から人件費負担を軽減できる

良い人材を確保できる

美容クリニックで勤務しようと考える方は、福利厚生として退職金制度の有無を必ずと言って良いほどチェックします。
そのため、退職金を支払うクリニックには、多くの勤務希望者が集まり、必然的に良い人材も確保しやすくなります。
また、退職金は現在美容クリニックで勤務する従業員が、長い間勤務することに対するモチベーションにもなります。
つまり、良い人材が早期に流出するのを防ぐことができるということです。

早期退職を促進できる

美容クリニックにおける退職金の支払いは、従業員の早期退職をスムーズに促すために役立ちます。
例えば、今後大きな不況が訪れ、どうしても雇用調整をしなければいけなくなった場合でも、退職金制度を用意しておけば、これまで献身的に勤務してくれた従業員にも納得してもらった上で、クリニックとしての危機も乗り越えることができます。

給与から人件費負担を軽減できる

退職金には税制上の優遇措置があり、社会保険もかかりません。
一方、退職金として支払う金額を給与や賞与(ボーナス)という形で支払うと、その分社会保険がかかってきます。
また、こちらの金銭は、従業員だけでなく美容クリニック側も負担するため、退職金と支払えば負担する必要のなかった社会保険費がかかってしまい、非常に人件費が大きくなってしまいます。
よって、美容クリニックは給与から人件費負担を削減するためにも、退職金制度を設けるべきだと言えます。

退職金の計算方法は主に4つ

美容クリニックの開業医が従業員の退職金を計算する際には、主に以下の4つの方法も用います。

・固定金額に勤続年数をかける方法
・基本給に勤続年数をかける方法
・基本給に勤続年数をかけ、さらに上乗せする方法
・あらかじめ勤続年数に応じた額を決めておく方法

それぞれ詳しく見てみましょう。

固定金額に勤続年数をかける方法

まずは、美容クリニックによって定められた固定の額に、退職する従業員の勤続年数を掛けるという計算方法が挙げられます。
こちらの計算方法では、各院によって定められた固定の金額がいくらなのかによって、従退職金の額にも大きな差が出ます。
例えば、固定金額が10万円で、退職する従業員の勤続年数が10年の場合、退職金の金額は10万円×10で100万円ということになります。
一方、固定金額が30万円であれば、同じ勤続年数であっても、退職金の金額は3倍の300万円になります。

基本給に勤続年数をかける方法

次に挙げられるのは、基本給に勤続年数をかけて、退職金を算出するという方法もあります。
例えば基本給170,000円で2年勤務し、その後基本給が200,000円に上がり、その基本給で3年勤務した従業員の場合、退職金の金額は以下のように算出されます。

・(170,000×2)+(200,000×3)=940,000円

こちらの計算方法では、勤続年数が延びるだけでなく、基本給が上がることでも、従業員に支払う退職金の額は大きくなります。
また、何度も基本給が変わっている従業員の退職金を算出する場合、多少計算が複雑になることもあります。

基本給に勤続年数をかけ、さらに上乗せする方法

基本給に勤続年数をかけ、さらにそこに貢献度、功績などをかけて、従業員の退職金を算出するという方法もあります。
貢献度や功績といった指標の基準は、美容クリニックによってさまざまですが、基本的には、続年数が長い従業員の場合、必然的に貢献度や功績の数字が大きくなる傾向にあります。
例えば、基本給が200,000円、勤続年数3年の従業員の場合、そこに貢献度、功績として140%をかけるとすれば、退職金の額は以下のようになります。

・200,000×3×140%=840,000円

あらかじめ勤続年数に応じた額を決めておく方法

最後に、開業医があらかじめ、勤続年数に応じた退職金の金額を決めておくという方法について解説します。
こちらの方法では、勤続年数何年目から退職金を支払うのかをまず明確にし、1年の場合は○○万円、2年の場合は○○万円と、計算をせずに決められた金額を退職金として支払うということです。
そのため、勤続年数が同じ従業員が2人退職する場合、それぞれの退職金の金額はまったく同じとなり、美容クリニックの開業医はわざわざ計算をする必要もありません。

クリニックの従業員における退職金の相場

美容クリニックの開業医は、退職金の金額について従業員とトラブルにならないように、あらかじめ相場を知っておくことをおすすめします。
クリニックで働く従業員の退職金相場は、勤続年数によって異なり、3年で30万円前後、5年以上で50~100万円程度とされています。
また、10年以上で250~300万円程度、20年以上で450~600円程度と言われていて、こちらに役職手当や功績倍率が反映されることもあります。
もちろん、必ずしも上記の目安に応じた金額を支払わなければいけないわけではありませんが、美容クリニックが勤続年数ごとにあらかじめ退職金額を設定する場合などは、参考にすべきです。
ちなみに、こちらもクリニックによって異なりますが、退職金が発生する勤続年数は、2~3年からに設定しているところがほとんどです。
1年未満など、短期間しか勤務していない従業員に対して、退職金が支払われるケースはあまりありません。

まとめ

ここまで、美容クリニック等の開業医が知っておくべき退職金対策として、従業員の退職金の計算方法を中心に解説してきました。
退職金制度を採用していない美容クリニックも、今後の医療法人化、MS法人設立などを考えると、本記事で解説したことは知っておいて損はありません。
美容クリニックの開業医として知識の幅を広げ、同時に選択肢も広げられるように努めましょう。


この記事に関するお問合わせ

    お名前 *

    メールアドレス *

    メールアドレス(確認用) *

    お問合せ内容 *