医師免許を取得し、実際医療機関で勤務し始めるまでには、ある程度の期間が必要です。
また、国によって、医師免許の取得に関するルールは変わってきます。
ここからは、日本と海外諸国の医師免許取得におけるルールの違いついて解説しますので、興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
目次
日本の医師免許取得におけるルール
日本で医師免許を取得するためには、まず6年制の医学部に入学し、教育を修了しなければいけません。
その後、卒業試験に合格して初めて、医師国家試験を受験し、免許を取得する権利を得ることができます。
つまり、日本ではどれだけ早くても、24歳まで医師免許を取得することができないということです。
また、日本で医師免許を取得するには、6年生の医学部に入学し、教育課程を修めなければいけないという話をしましたが、医師国家試験の受験資格は他にもあります。
具体的には、以下の条件をクリアすることで、受験資格を得ることが可能です。
A:医師国家試験予備試験に合格した者で、合格した後1年以上の診療および公衆衛生に関する実地訓練を経た者
B:外国の医学校を卒業し、または外国で医師免許を得た者であって、厚生労働大臣にAに掲げる者と同等以上の学力および技術を有し、かつ適当と認定した者
C:沖縄の復帰に伴う厚生省関係法令の適用の特別措置等に関する政令第17条第1項の規定により、医師法の規定による医師免許を受けたものとみなされる者であって、厚生労働大臣が認定した者
ちなみに、正式に医師として医療行為を行うためには、医師免許取得から2年間、研修医として臨床研修を受けなければいけません。
アメリカの医師免許取得におけるルール
一方、アメリカで医師免許を取得するためには、4年制のメディカルスクールを卒業し、医師国家試験(USMLE)に合格する必要があります。
また、日本では高校卒業後、すぐ医学部に入学することが可能ですが、アメリカの場合、高校卒業後すぐにメディカルスクールに入学できるわけではありません。
メディカルスクールに入学するためには、まず4年制大学を卒業し、学士号を取得する必要があります。
つまり、アメリカで医師になるには、最低でも8年かかるということです。
ちなみに、メディカルスクールに入学するにあたっては、病院などでボランティア活動の経歴なども評価されるため、大学在学中には、そのような活動に注力することが求められます。
そして、アメリカの医師国家試験であるUSMLEには、ステップ1~3まで存在します。
もちろん、これにすべて合格しなければ、アメリカで医師免許を取得することはできません。
また、アメリカの医師免許には、他にも厳しいルールが多数存在します。
例えば、アメリカの医師免許交付は州ごとになるため、勤務する州が変更になった場合は、その州で再取得しなければいけません。
日本でいうと、横浜で医師免許を取得した方が東京に転勤になった場合に、もう一度東京で医師免許を取得しなければいけないようなものです。
さらに、アメリカの医師免許は2~3年の更新制であるため、医師になることだけでなく、医師であり続けることも大変だということがわかります。
ただし、日本ですでに医師免許を取得している方は、アメリカの医師国家試験に合格することで、医師としての臨床留学をすることが可能です。
カナダの医師免許取得におけるルール
カナダにおける医師免許取得のルールは、やはり隣の国ということもあり、アメリカに似ている部分が多いです。
医師国家試験(Medical Council of Canada Evaluating Examination)を受験し、合格後には最低1年間の臨床研修を経て、医師免許取得を目指します。
ただし、外国人医師の場合、医師免許の取得が制限される州も存在します。
つまり、日本人の方は、カナダで医師免許を取得できない可能性があるということです。
イギリスの医師免許取得におけるルール
イギリスの場合、イギリスの5年制医学校を卒業したら、すぐに医師登録をすることができます。
国家試験は存在しません。
より正確にいうと、イギリスの医学校だけでなく、一部のオセアニアやアジア地区の医学校の卒業であっても、そのまま医師登録が可能です。
もちろん、他国の医学校は、イギリスの医学教育と同等であることが確認済の医学校に限られています。
ただし、イギリスで日本人の方が医師免許を取得する場合は、まったく違った流れになります。
まず、臨床研修を行うために、Limited Registrationという在留登録をしなければいけません。
また、そのためにはPLABという試験に合格し、研修先を見つけることが求められます。
PLABは、語学試験での成績もあわせて求められる、非常に難易度の高い試験です。
そして、規定の学習を履修した後には医師登録が可能となり、医師登録をした場合はイギリスへの永住権取得が優遇される措置があります。
その他、ODTSという外国人医師のための研修システムに参加する方法もあります。
フランスの医師免許取得におけるルール
フランスでは、医科大学での卒前教育の6年間に加え、一般医であれば3年、専門医であれば4~5年の卒後臨床研修を受け、国家博士論文を提出した上で、ようやく医師国家免許が与えられます。
また、医師免許を取得した方は、公衆衛生法典に定められている医師会への登録や、フランス国籍保有などの諸条件を満たすことで、はじめて勤務医、開業医などとして医療業務に従事することができます。
ちなみに、フランスでは日本の医師免許を持つ日本人の方が、診療活動や臨床研修を行うことは、原則的に認められていません。
そのため、研究以外の分野で医師として働くことは難しいと言えます。
ドイツの医師免許取得におけるルール
ドイツでは、6年生の医学校を卒業した後、第1回、第2回医師国家試験を受け、免許取得を目指します。
このとき卒業する必要のある医学校はセメスター制を採用していて、6年間のカリキュラムは、多くが基礎科学に2年、臨床医学に3年、臨床実習に1年を費やします。
また、ドイツの医学校の入試には、以下のような多彩な選抜方式が採用されています。
・アビトゥーア:大学へ進学するための資格試験で、医学部の約2割はアビトゥーアの上位成績者から選抜される
・大学独自の選抜制度:医学部の約6割は、大学ごとの書類選考および面接試験によって選抜される
・待機期間制度:ドイツ特有の選抜法で、看護学実習や市民活動に参加しながら、医学部入学のチャンスを待つ制度で、医学部の約2割が選抜される
ちなみに、日本ですでに医師免許を取得した方が、ドイツで医師免許を取得しようとする場合、以下の要件を満たす必要があります。
・母国の医学部教育が、ドイツのものと同等と認められること
・ドイツ語が話せること
日本の医学部を卒業していれば、ドイツの医学部卒業と同等扱いになるため、新たに研修を複数年行ったりする必要はありません。
また、ドイツ語の能力には国の定めたレベルがあり、B2以上であることが求められます。
B2とは、ドイツ語の具体的あるいは抽象的なテーマについて内容を把握することができる、短い文章から比較的複雑で長い解説記事、報道記事などまで、さまざまな文章が理解できる程度の能力とされています。
まとめ
ここまで、日本と海外諸国における医師免許取得の流れやルールなどについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
日本で医師免許を取得することは、決して簡単ではありませんが、海外にはアメリカのように、さらに複雑で厳しい医師免許のルールを採用している国もあります。
また、今後海外で医師として働きたいという願望がある方は、各国の外国人医師に関するルールを頭に入れておきましょう。