自らクリニックを経営するのが開業医で、病院やクリニックに所属し、従業員として働くのが勤務医です。
当然、これら2つには立場という大きな違いがありますが、他には一体どのような違いがあるのでしょうか?
ここからは、開業医と勤務医の細かい違いについて、詳しく解説していきたいと思います。
目次
開業医と勤務医の細かい違い6選
開業医と勤務医には、立場以外に以下のような細かい違いがあります。
・責任の重さ
・労働環境
・給与の安定性
・退職金の有無
・他の従業員との関係性
・人付き合い
責任の重さ
開業医と勤務医には、責任の重さという大きな違いがあります。
先ほども触れたように、開業医と勤務医は立場が違うため、当然経営者である開業医の方が、有事の際の責任は重くなります。
もちろん、勤務医の責任が軽いというわけではありませんが、開業医は自身のクリニックに所属する勤務医のミスに対しても、責任を負わなければいけません。
ましてや、開業医自身がミスをしてしまったなんてことになると、クリニックの品位や信頼性は大きく下がってしまいます。
労働環境
開業医と勤務医は、労働環境も大きく異なります。
開業医は、自らが勤務時間をある程度決めることができるだけでなく、休診日や半日診療の曜日も決まっています。
また、勤務時間と休憩時間がしっかり区別されていることも多いです。
一方、勤務医は、自身で勤務時間を決めることが難しく、拘束時間も非常に長いです。
休憩があまり取れないというケースも珍しくありません。
そのため、勤務医の方が、労働環境に対して、給与が低いという状況になりやすいと言えるでしょう。
給与の安定性
開業医と勤務医には、給与の安定性という大きな違いもあります。
勤務医は、言ってしまえば病院やクリニックに雇用されているサラリーマンであるため、毎月安定した給与が支払われます。
一方、開業医は、毎月給与が支払われるわけではありません。
クリニックで利益を上げた分だけ、開業医に還元されることになります。
つまり、クリニックの売上が給与に直接影響するため、決して給与の安定性が高いとは言えないということです。
もちろん、経営が軌道に乗った後は、コンスタントに安定した高収入を得ることができますが、そこまでの道のりは決して平坦ではありません。
退職金の有無
開業医と勤務医には、退職金の有無という違いもあります。
退職金は、定年退職する際、勤務先から支払われる報酬であり、退職金制度を採用している病院やクリニックに所属する勤務医は、こちらを受け取ることができます。
一方、開業医は自身がクリニックの経営者であるため、基本的に勤務先から支給される退職金は存在しません。
こちらは開業医の辛いところだと言えるでしょう。
また、多くの開業医は、不動産投資や小規模企業共済などを活用し、退職金相当の金額を積み立てています。
ちなみに、小規模企業共済とは、中小機構(独立行政法人中小基盤整備機構)に掛金を支払い、退職金代わりにまとまった金額を受け取ることができる制度をいいます。
他の従業員との関係性
開業医と勤務医とでは、医療機関内における他の従業員との関係性も大きく変わってきます。
勤務医にとって、同じ立場の勤務医や看護師といった他の従業員は同僚にあたります。
また、もともとそこで勤務していた従業員、新しく採用された従業員のいずれも、自身で選んだ同僚と働いているわけではありません。
極端に言えば、そこで人間関係が険悪になってしまったとしても、お互いにずっと在籍するわけではないため、割り切った関係として捉えることができます。
人間関係に耐えられない場合は、その病院やクリニックを辞めるという選択肢もあり、そこまで人間関係に責任を持たなくても問題はないでしょう。
一方、開業医は自分の意思で採用した他の従業員と、常に顔を合わせて働くことになります。
そのため、人間関係には大きな責任を持たなければいけません。
言い換えると、慎重に従業員を採用し、人間関係が悪くならないよう、接し方にも注意を払う必要があります。
もし、他の従業員との人間関係が悪くなったとしても、開業医は自身のクリニックを辞めることができませんし、かといって関係の修復も容易ではないため、ここが非常に難しいところです。
人付き合い
開業医と勤務医には、人付き合いの範囲に関しても違いがあります。
勤務医の場合、患者様以外でいうと、人付き合いを行う範囲は基本的に開業医である院長先生、同僚の勤務医、看護師、医療事務員などにとどまります。
一方、開業医はこれらの人物に加え、地域の医師会の先生や、医師以外の経営者などともコミュニケーションを取らなければいけません。
開業医は、医師である上に一経営者であり、同じような立場の人々と交流しながら、日々クリニックを良くするための勉強をすることが求められます。
もちろん、このような人付き合いを充実させるためには、時にプライベートの時間を削らなければいけないこともあります。
開業医と勤務医、どちらを選ぶべきなのか?
開業医と勤務医には、立場以外にもさまざまな違いがあることがわかっていただけたかと思います。
では、自身のクリニックを開業し、開業医として働くのと、さまざまなクリニックで勤務医として働き続けるのとでは、一体どちらが選択肢として正しいのでしょうか?
それぞれ向いている方の特徴を見てみましょう。
開業医を選ぶべき方の特徴
自身の理想の医療を実現したいと考える方、あるいは自身の力でどれだけ医療に貢献できるかチャレンジしたいという方は、開業医を選ぶべきだと言えます。
開業医は、自身の判断と裁量で診療、クリニックの運営をすることができ、ふるさとの地域医療に貢献するなど、勤務地も自由に選択できます。
また、開業医になると、勤務医の時には求められなかった経営者としてのコミュニケーション能力が求められます。
もちろん、集患数を増やすための広告マーケティングなど、医療以外の分野における幅広い知識も必要であるため、多角的なスキルや知識を発揮したいという方にも、開業医は向いていると言えます。
勤務医を選ぶべき方の特徴
勤務医は給与が安定している一方で、雇用されているという立場上、どうしても仕事の自由度と年収は比較的低くなります。
一方、それ以外に大きなデメリットは存在しないため、「人の下で働く方が性に合っている」という方は、勤務医として働き続けるのも良いでしょう。
医療行為を行う立場である以上、当然勤務医にも責任は生じますが、開業医に比べると精神的な負担やプレッシャーは少なくなることが予想されます。
また、とにかく医療の技術を磨くことを優先する方も、勤務医を選ぶべきだと言えます。
開業医は、前述の通り経営者としての業務もこなさなければいけないため、医療行為に集中しやすい環境とは言えません。
その点、勤務医の場合は、事務的な業務を担ってくれる部署がある勤務先を選ぶことで、医療行為に集中でき、充実した環境の中で、スキルを早く磨くことが可能です。
もちろん、医師としてのスキルがアップすれば、収入面の待遇が良くなることも期待できます。
まとめ
ここまで、開業医と勤務医の細かい違いについて解説してきました。
「勤務医よりも儲かりそう」というような単純な理由で、開業医を志している方もいるかもしれませんが、こちらは決して正しい認識ではありません。
開業医だからといって、すべての勤務医より収入が多いわけではありませんし、収入を増やすためには、開業医であっても努力を忘れてはいけないのです。