医師会に入らないことによる開業医のメリット・デメリット


“医師会”は、医師であれば入会することができる職能団体です。
主に医学の発達、社会福祉の増進を目的としています。
美容クリニックを開業するタイミングで、医師会に加入するというケースは多いですが、逆に医師会に加入しないことで、開業医にはどのようなメリット・デメリットが生まれるのでしょうか?

目次

医師会に入らないことで開業医に生まれるメリットについて

医師会に加入しないことで開業医に生まれるメリットについては、主に以下の通りです。

・年会費を支払う必要がない
・クリニックの診察や治療に専念できる

年会費を支払う必要がない

医師会に加入するには、お世辞にも安いとは言えない年会費を支払わなければいけません。
“郡市区医師会”、“都道府県医師会”の年会費については、エリアによって金額が異なりますが、“日本医師会”の年会費は一律です。
また、美容クリニックの開業医の場合、“診療所の開設者、管理者およびそれに準ずる会員”に該当するため、年会費はかなり高額になります。
具体的には年額12万6,000円を支払う必要があり、自身の美容クリニックを持ったばかりの開業医からすれば、大きな経済的ダメージと言わざるを得ません。
一方、医師会に加入しない場合は、当然上記の費用を負担する必要がなくなります。

クリニックの診察や治療に専念できる

医師会に加入している開業医は、休日当番医、夜間診療を請け負う場合があり、休診日やクリニックの診療時間が終わった後などにも、診療や治療を行う機会が多くなります。
また、クリニックで行う診療だけでなく、医師会ならではの仕事を任されることもあります。
具体的には、介護保険の審査や市民公開講座の委員などを依頼されるケースがあり、選挙が近づくと、選挙活動への協力を求められることも考えられます。
このような状況になると、当然美容クリニックの診療時間中に外出しなければいけない場合も出てきます。
もちろん、診療時間中に席を外す場合、その時間を休診にする必要があったり、他に医師を雇わなければいけなくなったりと、美容クリニックにかかる負担はさらに大きくなってしまいます。
逆に、医師会に加入しない開業医は、クリニック内での診療や治療のみに専念できますし、不本意な休診や人件費の増加といった問題に悩まされることもありません。

医師会に入らないことで開業医に生まれるデメリットについて

一方、医師会に加入しないことで開業医に生まれるデメリットには、主に以下のようなことが挙げられます。

・収入が少なくなる
・広告宣伝の機会が減少する
・情報収集に苦労する
・賠償責任保険の対象にならない

収入が少なくなる

医師会に加入することで、健康診断、予防接種など、市で費用を負担する自治体主導の業務を委託されることになります。
よって、医師会未加入の開業医と比較すると、必然的に収入源は増加します。
逆に、医師会に加入しない場合、これらの収入源を得ることができません。
つまり、美容クリニックが経営に苦しんでいる場合、経営を立て直すことでしかキャッシュフローを改善させる方法はないということです。

広告宣伝の機会が減少する

医師会に加入している開業医は、学校健診で地域の子どもや親と交流したり、インフルエンザの予防接種などの委託で高齢者と交流したりすることが可能です。
また、これらの交流は、クリニックの広告宣伝を行う大きなチャンスとなります。
このときに良いイメージを持ってもらえたり、スムーズかつ適切な医療を提供したりすることができれば、自ずと患者さんは集まりやすくなります。
しかし、医師会に加入しない開業医には、なかなかこのようなチャンスがありません。
ある程度コストをかけながら、ホームページやSNS、ポスティングといったさまざまな媒体を駆使し、広告宣伝をしなければ、経営を軌道に乗せるのは難しいでしょう。

情報収集に苦労する

医師会には、現役の開業医が数多く加入しています。
その上、講習会なども頻繁に行われていて、これにより地域の他院における医師とのつながりを持つことができます。
また、このような他の医師とのつながりは、医療の情報が手に入りやすい環境を作ることにもつながります。
さらに、医師会に加入していれば、行政からの医療情報、厚生労働省の通知、保健所からの食中毒・感染症の発生情報なども周知されます。
一方で、医師会に加入しない開業医は、これらの恩恵を一切受けられません。

賠償責任保険の対象にならない

医師会における年会費には、日本医師会の医師賠償責任保険の保険料が含まれています。
こちらは、医師会員の医療事故により紛争が起きた場合に、賠償と紛争の解決を日本医師会、都道府県医師会、保険会社の3者がバックアップする制度ですが、医師会に加入しない場合、保険料も支払わないことになるため、当然こちらの対象にはなりません。

医師会には加入すべきなのか?

美容クリニックを開業する開業医が医師会に加入すべきかどうかは、やはり今後クリニックを経営していくにあたって、何を優先したいかによって変わってきます。
例えば、「少しでも収入を増やしたい」「クリニックの存在を直接多くの方に広めたい」と考えている方は、多少のコストや手間がかかることを差し引いても、医師会に加入すべきだと言えます。
逆に、「できる限り支出を減らしたい」「美容クリニックでの診療や治療に全力を注ぎたい」という方は、無理やり医師会に加入しなくても良いでしょう。

医師会に加入する場合の注意点について

医師会への加入を選択する場合、いくつかの点に注意し、スムーズに入会できるように準備しておきましょう。
具体的には、以下の点に注意してください。

・各エリアのローカルルールについて
・年会費の準備について

各エリアのローカルルールについて

地方の郡市区医師会、都道府県医師会に加入する場合、各エリアのローカルルールを必ず確認しておかなければいけません。
例えば、エリアによっては、医師会に加入する意思があったとしても、医師会に挨拶する前にクリニックを開業してしまうと、入会しないと見なされることもあります。
加入するつもりだったにも関わらず、このような状況になると非常にややこしいため、開業エリアを決定したら、まず地区医師会に電話で問い合わせをしましょう。
そして、このタイミングで医師会長、新規会員担当役員を紹介してもらい、入会手続きを取る前に挨拶しておくことをおすすめします。
ちなみに、美容クリニックを開業する際には、近隣の医療機関にも挨拶をしておきましょう。
近隣との関係を円滑にしておくことで、今後さまざまな場面で助け合うことができる可能性があります。

年会費の準備について

医師会への加入が完了したら、年会費を納入します。
前述した通り、美容クリニックの開業医は、“診療所の開設者、管理者およびそれに準ずる会員”に該当するため、それに応じた金額を支払います。
また、こちらの年会費に関しては、開業直後の収入が少ない時期に支払うことになるため、あらかじめ開業資金の一部として、準備しておくことをおすすめします。

まとめ

ここまで、医師会に入らないことで開業医に生まれるメリット・デメリットについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
医師会は、必ずしも加入しなければいけないものではありません。
今回解説した加入しない場合のメリットやデメリットを把握し、自院の目指す医療や目的と照らし合わせた上で、加入するかどうかを検討しましょう。


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