MS法人で実施する不動産投資のメリット・デメリット


MS法人は医療法人とは違い、多様な事業を実施することができます。
また、代表的な事業の1つに、不動産投資が挙げられます。
しかし、中には「簡単に始めても大丈夫なのか」と、疑問に感じている人もいるかと思います。
ここからは、MS法人で実施する不動産投資のメリット・デメリットを中心に解説していきます。

目次

MS法人で実施する不動産投資のパターン

MS法人が事業として行う不動産投資は、主に以下の2つのパターンに分けられます。

・第三者から借りている物件を医療法人に転貸
・所有している物件を医療法人に賃貸

第三者から借りている物件を医療法人に転貸

MS法人が不動産の所有者と賃貸借契約を結び、その物件を医療法人に転貸(又貸し)するというパターンです。
いわゆるサブリースと呼ばれる形態であり、こちらはMS法人が内装工事などを実施することで、その工事費用を上乗せした賃料で、医療法人に貸し付けることも可能です。

所有している物件を医療法人に賃貸

MS法人が不動産を購入・所有し、医療法人に賃貸するというパターンです。
このとき設定される賃料は、近隣の賃料相場を参考に決定する必要があり、税務上は金額の多寡が大きなポイントとなります。

MS法人で実施する不動産投資のメリット

MS法人で実施する不動産投資には、主に以下のようなメリットがあります。

・法人税や相続税の減税が期待できる
・収益業務が増加する

法人税や相続税の減税が期待できる

MS法人で不動産投資を行うことのメリットとしては、まず税制優遇が受けられることが挙げられます。
一般的には、法人税の減税が実現できることが知られていますが、実は同時に相続税もその対象となります。
なぜかと言うと、資産の所有に違いが生じるからです。
MS法人が会社として不動産を所有するとなると、理事長個人の所得を分散化させることかできます。
そうなると、個人の所得や資産にかけられる課税割合は、必然的に小さくになります。
また、対象となる金額が少なくなると、結果として納付額が抑えられることにつながります。
減税効果が期待できるというのは、この部分にあると言っていいでしょう。
例えば、直接的に資産に関わりなくても、事業として活用する不動産を所有する場合にも、この知識を応用することができます。

収益業務が増加する

MS法人で不動産投資を行うメリットには、単純に組織全体における収益業務が増加することも挙げられます。
医療法人は医療法の定めにより、不動産投資や小売といった収益業務を行うことができません(社会医療法人を除く)。
そのため、医療法人自体がクリニックの隣地を購入し、コインパーキングなどを運営することや、役員社宅を保有し、役員に賃貸することなどは認められていません。
一方、MS法人は、医療法人では認められていないこれらの事業を行うことができます。
もちろん、収益が増加すれば、その分組織全体の税額は高くなりますが、前述の通り理事長が個人で不動産を取得する場合に比べると、大幅な節税が期待できます。

MS法人で実施する不動産投資のデメリット

一方で、MS法人の不動産投資には、以下のようなデメリットもあります。

・不自然な取引には厳しいチェックが入る
・事務処理の手間と費用がかかる

不自然な取引には厳しいチェックが入る

MS法人で不動産投資を行う場合、調査の目が厳しく、慎重に行動しなければならないというデメリットもあります。
こちらは、常に注意深く行動しろというものではありません。
不自然すぎる取引には、その取引自体が認められない場合があるため、極端な形にならないようにすることが求められます。
例えば、不動産投資の場合でいうと、家賃相場が周辺の物件と比べた時に、明確な理由もなく高い設定であることが挙げられるでしょう。
こちらは、節税効果をフル活用したいがために、わざと行っていると思われる可能性があります。
MS法人として行うからこそ、個人の場合とは違い、取引金額の妥当性にチェックが入るということです。
その結果、利用できなくなってしまっては意味がないため、あくまでも法人が行っている不動産投資と考えて、適正な範囲で実施するようにすべきです。

事務処理の手間と費用がかかる

MS法人で不動産投資を行う場合、事務処理の手前と費用は以前よりも大きくなります。
MS法人は、当然医療法人本体とは別法人として運営しなければいけません。
具体的には、管理責任者を置き、事務局を整備する必要があります。
また、財務状況を随時把握できるようにしておかなければならないため、節税目的のためだけにMS法人を設立し、不動産投資を行う場合には、少々メリットとデメリットが釣り合わないことも考えられます。

MS法人で不動産投資を実施する際に押さえておきたいポイント

MS法人で不動産投資を実施するのであれば、以下のポイントは確実に抑えておくべきです。

・自然災害リスクについて
・加入保険について
・金利の上昇について

自然災害リスクについて

MS法人が実施する不動産投資は、貸し出すことができる物件があって初めて成立するものです。
しかし、火災や地震などの自然災害により、建物が損壊してしまうと、医療法人からの賃料が受け取れなくなるだけでなく、資産価値も大幅に低下してしまいます。
日本は自然災害の多い国として有名であり、なおかつ火災や地震はいつ発生するか事前に予測できません。
そのため、MS法人で不動産投資をするのであれば、常に上記のリスクにさらされているということを覚えておきましょう。

加入保険について

先ほど、MS法人が実施する不動産投資では、自然災害リスクを避けることができないという話をしました。
ただし、火災保険や地震保険に加入していれば、万が一自然災害によって建物に被害が生じた場合でも、修繕費を保険金で補うことが可能です。
もちろん、建物が滅失してしまった場合は、建て直すまで賃料収入を得ることができませんが、修繕費を負担するリスクを防止できるのは大きなメリットと言えます。
ちなみに、火災保険によって補償される災害の範囲には、地震を除く以下のようなものが含まれます。

・火災、落雷、破裂、爆発
・風災、雹災、雪災
・水災
・水漏れ
・外部からの物体の落下、飛来、衝突、騒擾
・盗難
・不測かつ突発的な事故による破損、汚損 など

金利の上昇について

MS法人が不動産を取得して医療法人に貸し付ける場合、金融機関から融資を受け、物件を購入するのが一般的です。
しかし、融資額が大きければ大きいほど、金利が上昇したときの影響を受けやすくなるため、注意しなければいけません。
例えば、返済期間20年、金利1%で4,000万円の融資を受けた場合、返済総額は4,414万9,732円になります。
一方、同じ条件で金利が1.5%に上昇した場合、返済総額は4,632万4,216円となり、金利上昇前と比べて200万円以上も高くなります。
低金利という理由で、借入時に変動金利のローンを選ぶ方も多いですが、金利が上昇すると返済総額がどんどん膨らみ、組織全体のキャッシュフローが悪化することも考えられるため、低金利というだけでローンを選択するのは危険です。

まとめ

ここまで、MS法人で不動産投資を行うことのメリット・デメリットを中心に解説してきました。
MS法人の不動産投資は、事業としての幅が広がるだけでなく、節税にもつながることから、やっておいて損はない手法です。
一方で、法人が行っていることから、個人の場合よりも過激な節税を狙っていないか注目されやすく、なおかつ押さえておかなければいけないリスクもあるため、事前に知識を得ることは必須です。


この記事に関するお問合わせ

    お名前 *

    メールアドレス *

    メールアドレス(確認用) *

    お問合せ内容 *