MS法人設立に必要な手続きや要件、注意点などについて


開業医として働く方々は、MS法人がどのようにして設立されるのかをご存知でしょうか?
今後法人化を見据えている方にとって、こちらは必ず押さえておきたい情報です。
しかし、実際はそれほど詳しく把握していないという方も多いかと思います。
ここからは、一般的なMS法人設立手続きや要件、設立時の注意点などを解説します。

目次

一般的なMS法人の設立の手続きについて

MS法人の設立手続きは、一般的な株式会社、合同会社を設立する際の流れとあまり変わりません。
具体的には、以下のような流れで行われます。

・法人形態の選択
・定款の作成、認証手続き
・出資の証拠性の明確化
・会社実印の作成
・設立登記申請
・税務手続き

法人形態の選択

まずは、MS法人をどの法人形態で設立するのかを選択します。
法人形態には、株式会社や合同会社、合名会社などがありますが、一般的にMS法人は株式会社として設立されるケースが多いです。

定款の作成、認証手続き

定款とは、会社の基本情報や規則などが記載されたルールブックのことをいい、会社設立においてもっとも重要な書類の1つです。
また、MS法人の定款作成時には、以下の項目を明確にしなければいけません。

・商号、本店所在地等
・資本金
・目的、業務内容
・機関設計
・発起人、設立時役員、出資者
・役員の任期、事業年度等
・法人設立日(登記申請日)

資本金の条件に関しては、通常の会社の設立の流れを参考にしながら進めていくと良いでしょう。
医療法人化する場合と比べると、複雑な条件はそこまで求められないため、スムーズに進められることが予想されます。
ちなみに、MS法人が実施できる業務の種類としては、主に以下のことが挙げられます。

・病院、クリニックの建物、土地の賃貸および管理(不動産管理会社)
・医療機器の販売および賃貸
・医療用消耗品の販売
・給食業務の受託
・寝具等の貸付
・病院、クリニックのレセプト業務、経理業務および給与計算業務の委託
・病院、クリニックに対する経営指導
・薬品卸薬局(薬事法による規制あり) など

定款の作成が完了したら、認証手続きを行います。
認証手続きは、定款の正当性を公証人に証明するものであり、本店所在地と同じ都道府県内にある公証役場で実施します。

出資の証拠性の明確化

MS法人において、同族関係者が出資者を構成する場合、特にその資金出所について明確にしておくべきです。
配偶者などは、専従者給与等の預金口座から出資し、また資金力のない子どもについては、贈与証書、金銭消費貸借契約書などを作成する必要があります。

会社実印の作成、登録

MS法人を設立するにあたって必要となる、新設法人の実印を作成します。
また、作成した会社実印は、本店所在地を管轄する登記所に届け出ることで登録され、その後印鑑証明書が交付されます。

設立登記申請

以下の必要書類が揃い次第、登記所への設立登記申請を行います。

・登記申請書
・登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
・登記すべき事項
・定款
・取締役の就任承諾書
・払込証明書
・印鑑届出書

税務手続き

最後に、法人設立届出書や青色申告承認申請書など、MS法人設立にあたって必要となる税務上の手続きを行います。

MS法人の設立要件について

MS法人の設立要件は、決して厳しいものではありません。
まず、資本金の金額ですが、こちらは1円以上であれば認められます。
また、出資者1名以上、取締役1名以上が必要であり、取締役が2名以上の場合は、そのうち1名を代表取締役に就任させる必要があります。
ちなみに、監査役の設置に関しては、一般的な会社と同じく任意となっています。

MS法人設立時の注意点について

・役員について
・医療法、薬事法の知識や許認可について
・出費について

役員について

MS法人を設立する際には、法律上適切な役員構成を検討しなければいけません。
MS法人化を検討するクリニックの多くは、すでに医療法人化しており、新しい形態での経営に重きを置いています。
そのため、役員に関して安直に考えてしまうと、設立自体が困難になってしまう可能性があるため、注意してください。
いくら節税がメインの目的であってとしても、これでは目的を果たすことができません。
役員の選出や人選に関しては、時間をかけて検討すべき項目になることを理解していただけると幸いです。

医療法、薬事法の知識や許認可について

MS法人における、一般的な会社と違う点としては、医療法、薬事法の知識や許認可が求められる点が挙げられます。
なぜかというと、MS法人で可能な事業の範囲は多岐に渡るからです。
MS法人では、多くの場合、介護関係や調剤関係といった形で、何かしら医療に関わりのある分野を取り扱っています。
具体的には、化粧品や医薬部外品の製造販売、医療機器や医薬品の販売などが挙げられ、これらの業務を行う場合には、以下の薬事法、医療法の許可が必須となります。

・化粧品製造販売業許可
・高度管理医療機器販売業

化粧品製造販売業の総括責任者は、化学の専門科目を一定以上終了していれば就任でき、高度管理医療機器販売業の販売管理者は、医師資格があれば管理者になることができます。
ただし、病院やクリニックの管理者である医師は、薬事許認可における責任者にはなれません。
なぜなら、通常は統括責任者等に従事することにより、その時間帯に病院やクリニックの管理者として常勤していないことになってしまうからです。
また、クリニックとして届出もしくは許可を得ている場所では、販売用の化粧品等の製造業許可は所得できません。
管理者である医師以外の人物を責任者とし、適切な事務所、製造所を確保する必要があります。

出費について

MS法人を設立する際には、当然設立費用がかかります。
例えば、株式会社の場合、登録免許税と登録にかかる諸費用を含め、30万円程度の設立費用が必要です。
また、MS法人が赤字であったとしても、均等割は必ずかかってきます。
地方自治体によって多少異なりますが、こちらの金額は年間7万円程度になることが多いです。
その他、毎年の税務申告においては、税務顧問料(決算料)なども必要になります。
もちろん、規模や税理士事務所によって多少増減はありますが、個人のクリニックで初めてMS法人を設立する場合は、20万円前後の税務顧問料がかかるケースが多いです。

MS法人設立のタイミングについて

個人開業医の方は、所得が1,800万円に達するタイミングで、MS法人の設立を検討すべきです。
所得が1,800万円を超えると、超える部分の所得に40%の所得税がかかります。
もちろん、所得が900万円を上回り、所得税率が33%になったタイミングで、MS法人の設立を考える方もいますが、これくらいの所得ではまだ節税メリットが少ないため、あくまで1,800万円を1つの目安にしておくべきです。
また、医療法人の場合は、法人利益が800万円を超えるか超えないかというタイミングで、MS法人の設立を検討しましょう。
法人の場合、利益が800万円を超えると、事業税を除く法人税が18%から30%に跳ね上がるため、こちらのタイミングを狙うのがベストだと言えます。

まとめ

ここまで、MS法人設立手続きや要件、設立時の注意点などを中心に解説してきました。
役員の設置に関しては、主な取引先が医療法人であることから、法律上適切な形での役員構成を考えておく必要があります。
特に、人物の選出に関しては、誰ならば就任でき、誰が就任できないのか、そのケースが細かくなっているため、注意してください。
医療法人と同じくらい重要性のある法人であるため、不備がないように準備を行いましょう。


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