M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの頭文字を取ったものであり、事業の買収や売却、合併を行うための手法を指しています。
クリニックにおいても、事業承継の一手段として活用されることがありますが、こちらに失敗しないためには、どのようなポイントを押さえておけば良いのでしょうか?
概要とあわせて解説したいと思います。
目次
M&Aによる事業承継とは?
仲介会社などのM&Aの専門家に依頼し、見つけ出してもらった後継者となる個人や法人に対し、クリニックを売却する方法が、M&Aによる事業承継です。
後継者が法人の場合、資金力がある企業にクリニックを譲ることになるため、今後の経営が安定する可能性が高いです。
また、クリニックの事業を全て売却する場合は、売却した分の利益を得ることもできるのがメリットです。
クリニックの要望すべてに応えてくれる買い手企業を探すのは簡単なことではありませんが、もし理想の買い手が見つかれば、院長先生にかかる負担を効率的に減らすことができます。
クリニックがM&Aに失敗しないためのポイント3選
クリニックの院長先生は、M&Aに失敗しないよう、以下のポイントを押さえておきましょう。
・情緒的な理由で買い手を選ばない
・折衷案を出す
・買い手の言うことを鵜呑みにしない
情緒的な理由で買い手を選ばない
クリニックの院長先生の中には、「これまでお世話になっているから」といったような情緒的な理由で、取引先企業などを買い手に選んでしまう方がいますが、こちらは間違った行動です。
買い手を選ぶ上で重要なのは、相乗効果が期待できる企業かどうか、良い財務状況を維持している企業かどうか、またはクリニック側の意見を汲み取ってくれる企業かどうか、といった点です。
クリニックと買い手企業の関係性が良いことも、M&Aにおいて重要なポイントではありますが、情緒的ではなくあくまで合理的な考えを持って、買い手企業を選ぶことを心掛けましょう。
折衷案を出す
買い手との話し合いの際、折衷案を出さず、自身の意見ばかりを押し通そうとするのも、クリニックのM&Aにおいて避けたい行動の1つです。
譲渡価格、または譲渡した後のプランなど、譲れない部分はいくつかあるとは思いますが、M&Aにおいては、基本的に自身の意見がすべて通ることはないと考えておきましょう。
お互いの条件をすり合わせ、できるだけ双方の意見が反映された契約内容にすることができれば、スムーズかつ良い条件のM&Aにつながりやすくなります。
買い手の言うことを鵜呑みにしない
買い手の言うことを鵜呑みにしないというのも、クリニックのM&Aにおいては重要なポイントです。
とにかく早くM&Aを成立させたいと考えるクリニックの院長先生は、買い手の言うことを鵜呑みにしてしまいがちです。
例えば、買い手企業から提示された譲渡価格が、院長先生の希望価格を大きく下回っているような場合、鵜呑みにせずに必ず意見しましょう。
先ほど、自身の意見を押しつけるのは良くないという話をしましたが、逆に意見を伝えすぎないのも良くありません。
小規模なクリニックでもM&Aは成功するのか?
M&Aには、中規模のクリニックにおいて行われるイメージが強いです。
その理由として、実際企業間で行われているM&Aでは、規模の小さい企業の需要が少なくなっていることが挙げられます。
また、企業間で行われるM&Aにおいて、規模の小さい企業の需要が少ない理由には、シナジー効果が薄いという理由があります。
つまり、規模の小さい企業を買収しても、自社の市場規模拡大、競争力アップにはつながりにくいと考える買い手が多いのです。
では、企業同様、規模の小さいクリニックは、M&Aにおいて需要が低いのでしょうか?
結論を言うと、クリニックのM&Aにおいて、規模の小さいクリニックはある程度の需要があると言えます。
規模の小さいクリニックの需要がある理由には、買い手がリサーチを短縮できるということが挙げられます。
例えば、都内を中心に規模を拡大している、大手クリニックチェーンがあるとします。
こちらの大手クリニックチェーンが、都内以外にもクリニックを進出したいと考える場合、そのエリアのリサーチを行わなければいけません。
しかし、リサーチには時間も費用もかかるため、大手クリニックチェーンは、なるべくこれらの負担を減らしたいと考えます。
そのような場合に効果的な方法が、当該エリアにあるクリニックを買収するという方法です。
当該エリアで経営されるクリニックを買収することができれば、当然リサーチの手間は省けます。
ましてや、何十年も経営されてきたクリニックともなれば、そのエリアのことを熟知していると判断できるため、進出エリアを広げたい大手クリニックチェーンからすれば、とても魅力的です。
まとめ
M&Aを行うクリニックの多くは、後継者がいなかったり、資金繰りが苦しくなったりしているため、できるだけ高い価格、短い期間での譲渡を成功させたいと考えますが、焦りは禁物です。
また、規模の小さい調剤薬局であっても、M&Aに成功する可能性は十分にあるため、「規模が小さいから、どうせ買い手は見つからない」と考えている院長先生は、一度考えを改めるべきだと言えます。