開業医が引退後、介護老人保健施設で働くメリット・デメリット


開業医のセカンドキャリアとしては、非常勤医師や健康診断医、産業医などさまざまな選択肢があります。
また、中には自身のクリニックを廃業した後、“介護老人保健施設”で医師として働く方もいます。
今回は、こちらの選択肢におけるメリットやデメリットを中心に解説したいと思います。

目次

介護老人保健施設の概要

介護老人保健施設とは、通称“老健”とも呼ばれるものであり、介護を必要とする高齢者の方の自立をサポートし、在宅復帰または在宅療養支援を行う施設のことをいいます。
厚生労働省は、介護老人保健施設について、リハビリテーションを提供する心身機能の維持、改善の役割を担う施設と位置付けています。
また、こちらは主に長期入院をしていた方が、退院して自宅に戻るまでの間に利用されることが多く、特別養護老人ホーム(特養)などと同様に、介護保険が適用される公的施設です。
平成30年の介護保険法改正により、介護老人保健施設には基本型、加算型、在宅強化型、超強化型、その他という5つの区分が設けられました。
これらの中でも、加算型、在宅強化型、超強化型は厚生労働省が定める要件のうち、高い基準を満たしているため、特に在宅復帰や在宅支援機能が高いことが認められています。
ちなみに、クリニックの開業医が引退した後、セカンドキャリアとして介護老人保健施設で勤務する場合は、リハビリテーションを中心とした入所者の健康管理、または健康指導が主な業務となります。

開業医が引退後、介護老人保健施設で働くメリットは?

開業医が引退した後、介護老人保健施設に活躍の場を移すことには、主な以下のようなメリットがあります。

・身体的な負担が少ない傾向にある
・医療に寄ったサービスになりやすい
・幅広い職種が在籍している
・さまざまな出会いがある

身体的な負担が少ない傾向にある

介護老人保健施設を利用する高齢者の方は、在宅復帰を目的としています。
そのため、介護度が低いケースが多く、こちらで医師として勤務する場合、身体的な負担はそこまで大きくならない傾向にあります。
あくまでメインは身体介護であるため、ある程度年齢を重ねた医師の方であっても、長期間勤務できる可能性は高いです。

医療に寄ったサービスになりやすい

全国に存在する介護老人保健施設の約75%は、医療法人によって運営されています。
また、介護老人保健施設は、医療やリハビリテーション関連の従業員比率も多いことから、他の高齢者施設と比べ、介護よりも医療に寄ったサービス内容になりやすいとされています。
そのため、これまで開業医として、さまざまな医療を提供してきた医師にとっては、自身の実力を存分に発揮できる職場となる可能性があります。

幅広い職種が在籍している

介護老人保健施設には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション関連の専門職が多数在籍しています。
そのため、これまで介護やリハビリテーション関連の業務に携わってこなかった医師であっても、すぐに専門職の指示を仰ぐことができる環境は整っています。

さまざまな出会いがある

介護老人保健施設は、終身入所できる特養老人ホームなとの高齢者施設とは違い、入所期間が設けられていて、入所者は退所を前提としています。
そのため、人の入れ替わりが早く、新しい入所者との出会いは多くなります。
年齢を重ねても、多くの出会いを求めている開業医の方にとっては、非常に適したセカンドキャリアだと言えます。

開業医が引退後、介護老人保健施設で働くデメリットは?

一方、開業医が引退後に介護老人保健施設で働くデメリットには、主に以下のことが挙げられます。

・イベントや企画が少ない
・医師の発言権が弱い場合がある

イベントや企画が少ない

何度も言うように、介護老人保健施設の入所者は、在宅復帰を目的としています。
そのため、リハビリを中心としたプログラム設計となっていて、他の高齢者施設で実施されるようなレクリエーション、イベントといった企画や娯楽コンテンツは少ない傾向にあります。
入所者との時間を楽しんだり、イベントに参加したりして、賑やかなセカンドキャリアを送りたいと考える開業医にとっては、少々物足りなく感じるかもしれません。

医師の発言権が弱い場合がある

介護老人保健施設の多くは、医療法人が運営していますが、中にはもちろんそうではないところもあります。
また、このような介護老人保健施設では、医師の発言権が弱くなる可能性もあります。
場合によっては、介護職の発言権や権限が強く、それに従いながら日々業務をこなしていかなければならないこともあるため、医師としての力を存分に発揮したい方は、多少やきもきするかもしれません。

まとめ

ここまで、開業医のセカンドキャリアの1つ、介護老人保健施設で働くことのメリット・デメリットを中心に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
医師としての実績を活かしながら、なおかつそれほど負担の大きくない施設で勤務したい開業医の方は、今後の働き方として、介護老人保健施設での勤務選択肢に入れておきましょう。
さまざまな選択肢を持っておくことで、クリニック廃業のタイミングも図りやすくなります。


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