介護老人保健施設は“老健”とも呼ばれるもので、介護レベルが高い高齢者の方のみが利用する施設を指しています。
入居者のほとんどが病気、ケガなどの経験をして、回復はしものの、自宅で生活するのには支障があるという方ばかりです。
今回は、開業医が介護老人保健施設に転職するメリット・デメリットについて解説します。
目次
開業医が介護老人保健施設に転職する2つのメリット
開業医がセカンドキャリアとして介護老人保健施設を選ぶことには、以下のメリットがあります。
・入居者が自立できたときの喜びが大きい
・さまざまな仕事を見ることができる
入居者が自立できたときの喜びが大きい
介護老人保健施設に転職するメリットとしては、まず入居者が自立できたときの喜びを感じられるということが挙げられます。
介護老人保健施設の入居者は、あくまで自宅に戻ることを目的としているため、数ヶ月~半年程度で戻ることができるよう努力をします。
また、こちらで働く医師はその努力のサポートをしていくため、一緒にリハビリを頑張った入居者の方が自宅に帰れるぐらい回復したときには、医師としての喜び、やりがいをすごく感じることができます。
数ヶ月経っても、まだ自宅で生活するのには不安があるという方は、別の介護施設に移ることもありますが、自立へのサポートをするということは変わりません。
そして、医師だけではなく、介護士や看護師も多く勤務していることが多く、すべての方が入居者を自立させてあげたいという一心で勤務しています。
そのため、職場の中だけではなく、医師や看護師、介護士と入居者の一体感が強い現場が多く、雰囲気が明るいところも多いのがメリットです。
さまざまな仕事を見ることができる
介護老人保健施設のメリットはまだあります。
それは、医師以外の仕事も見ることができるという点です。
介護老人保健施設は、医師の他にも介護士や看護師、リハビリ職といったように、いろんな肩書きの方が集まって働いています。
1つ1つの仕事がどこまで行われるのかというのは、施設によって異なるため、線引きが難しいのですが、いろんな仕事が連携している現場というのは、病院やクリニック以外でなかなか見られるものではありません。
グループホームやデイサービスなど、その他の介護施設の現場は、基本的に介護士同士の連携だけで動いている中で、介護老人保健施設はかなり特殊な現場と言えます。
さらに、さまざまな仕事を見られるというだけでなく、実際に医師が行う作業も、介護士の知識と合わせた健康管理や、リハビリ職の知識と合わせたサポートなどを実践できる可能性もあります。
似たような環境でも、有料老人ホームでは、このような経験をすることはまずありません。
未経験の方が介護老人保健施設に転職するときは、最初はかなり戸惑うかもしれませんが、徐々に良さや楽しさを理解していくことになります。
開業医が介護老人保健施設に転職するデメリット
デメリットも紹介しておきます。
介護老人保健施設は、開業医のセカンドキャリアとして選ばれることが多い現場であり、運営主体の約7割が医療法人だと言われています。
そのため、医師や看護師といったような、医療職が主体の現場になっているケースが多いです。
基本的には、現場の環境の決定権なども、既存の医療職が持っています。
つまり転職した開業医は、介護老人保健施設において、お世辞にも肩身が広いポジションとは言い難いのです。
こちらはデメリットの1つと言えます。
既存の医療職の方と上手く関係を作っていかないと、人間関係で悩み、働きにくい環境になってしまうかもしれません。
介護老人保健施設から、さらに他の介護の現場に転職したいと考える方の中には、このような人間関係が嫌になってしまった方が多く存在します。
さらに、介護老人保健施設は特別養護老人ホームなどと違い、1人の入居者にそれほど長く関わることがありません。
半年ぐらいが関わる期間の限度で、定期的に退去か継続かの判断が行われます。
このことから、1人に深く関わり、仲良くなってどんどん人と接したいという方には、あまり向いていない現場だと言えます。
こちらは冒頭でも触れたように、居住することが目的の老人ホームと、自立させて家に帰らせるというのが目的の介護老人保健施設の、大きな概念の違いを表しています。
もちろん、入居者を自立させることができたときに、それほど大きな喜びを感じない場合も、あまり介護老人保健施設には向いていないかと思われます。
同じ施設であっても、入居が目的のところと自立が目的のところ、さらにはデイサービスのような支援が目的のところなど、いろんな種類があることを知っておきましょう。
まとめ
ここまで、開業医がセカンドキャリアとして、介護老人保健施設に転職することのメリット・デメリットを見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
介護老人保健施設の医師は、非常にやりがいのある仕事ですが、施設の目的や特徴を理解していなければ、働きにくさを感じてしまうかもしれません。
そのため、今後開業医の立場を退き、別の道に進もうとしている方は、すべて理解した上でこちらの選択肢を選ぶ必要があります。