開業医が引退後もクリニックを存続させるのであれば、後継者を見つけ、その地位を引き継がなければいけません。
では、後継者をうまく育て、引退後も経営状況を安定させるために、開業医はどのような取り組みをしなければいけないのでしょうか?
今回は、後継者教育のコツについて解説します。
目次
後継者教育がうまくいかないとどうなる?
開業医が後継者をうまく育てられなかった場合、クリニックの従業員にうまく指示が出せなかったり、経営における不備が出たりする可能性が高くなります。
また、こちらはクリニック全体の業務効率が悪くなったり、従業員のモチベーションが低下したりすることにもつながり、患者満足度の低下や従業員の離職率上昇など、悪循環の原因にもなります。
そのため、開業医は引退をする前に、後継者として十分に活躍できる人材を育てておかなければいけません。
こちらは、開業医としての最後の大仕事だと言えます。
【開業医の事業承継】クリニックの後継者の教育方法
経営の安定化や従業員確保、患者満足度の低下防止のため、後継者を教育する方法には、主に以下のようなものが挙げられます。
・各業務のローテーション
・経営幹部としての参画
・開業医による直接指導、引き継ぎ
・他院勤務の経験
・院外セミナーへの参加
各業務のローテーション
クリニックの後継者を育てる方法は、院内で行うものと院外で行うものに分かれます。
また、院内で行う代表的な教育方法としては、まず各業務をローテンションで実施させることが挙げられます。
診療や受付に至るまで、一通りの業務をローテーションで経験させることにより、クリニックの経営に関する専門的知識が身に付き、承継後の経営状況悪化などを防止します。
経営幹部としての参画
クリニックの後継者には、経営幹部として経営に参画させ、意思決定や対外的な交渉なども任せなければいけません。
こうすることにより、責任感や使命感が芽生え、開業医がいなくなった後のクリニックにおいても、リーダシップを発揮することができます。
開業医による直接指導、引き継ぎ
開業医は、実際に自身が引退するまでの間に、クリニック経営の引き継ぎ期間を設け、経営者としての心構えや経営理念、ノウハウなどを直接後継者に指導することも忘れてはいけません。
また、同時に自社の経営状況、今後の事業計画、業界動向といった情報も、説明を加えながら引き継ぐことにより、承継後の経営状況悪化やチームワークの欠如、離職率上昇などを防止することができます。
他院勤務の経験
院外で行う後継者教育としては、まず他院勤務を経験させることが挙げられます。
開業医とつながりのあるクリニックなどにおいて、後継者に業務経験を積ませることにより、自院にはない経営手法が身に付いたり、新たな人脈をつくり出したりすることにつながります。
院外セミナーへの参加
後継者を院外のセミナーに参加させることでも、クリニックの経営状況は維持されます。
セミナーは、経営に必要な一般的知識を、比較的短期間で効率良く習得させることができます。
また、こちらは院内での後継者教育と並行して行うことができるため、後継者はセミナーで得た知識やスキルを院内の現場で活用することも可能です。
ちなみに、クリニックの開業に関するセミナーは、クリニック専門のコンサルティングサービス会社などが中心となって開催していて、中には後継者の受講に特化したものもあります。
クリニックの後継者教育におけるその他のポイント
クリニックの開業医は、上記の方法で後継者を教育するとともに、以下のポイントを押さえておかなければいけません。
・後継者を補佐する人物も育成する
・前向きに後継者教育に取り組む
後継者教育と同時進行で、今後後継者を補佐する人材についても、確保、育成することが大切です。
院内で孤立しがちな後継者が健全に経営を続けるためには、日々の相談相手となるパートナーの存在が欠かせません。
ちなみに、そのクリニックで長年勤務しているベテランの医師や従業員などは、補佐役として向いている人物だと言えます。
また、開業医が後継者教育を行う際は、何より開業医自身が前向きに教育に取り組む必要があります。
例えば、後継者を信頼しきれず、承継直前まで開業医自身が仕事を抱え込んだり、「好きなようにやれば良い」とほとんどを後継者任せにしたりすると、教育はうまくいきません。
一方、後継者と二人三脚で教育を行い、成長を自らのことのように喜び、なおかつしっかりと褒めることで、後継者は必然的に自信とモチベーションを高め、ますますのスキルアップに励むことができます。
まとめ
ここまで、開業医が引退後もクリニックの経営状況、患者満足度などを維持するために実施すべき、従業員教育の方法やポイントについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
開業医は引退後、後継者が経営するクリニックのサポートに回るケースもあります。
そのような場合は、過干渉にならないよう、適度にアドバイスを送り、クリニックの下支えとして貢献することを意識しましょう。