クリニックの助成金について

クリニック開業のためのイニシャルコストは、予想より高額になることも珍しくありません。
首尾よくクリニックを開業できたとしても、人件費や医療機器の維持管理費、家賃といったランニングコストは必要です。

特に、開業して間もなくは想定外の出費があるなど、思うように集患が伸びない可能性もあります。
健全なクリニック運営のためには、運転資金にゆとりを持ちたいもの。
そこで活用したいのが「助成金」です。

「助成金」と「補助金」について

そもそも、どのようなものを助成金というのでしょうか。
助成金とは、主に雇用活動にかかわる資金に充てることができ、国・地方自治体から支給される企業への支援金です。
似た性質のものに「補助金」がありますが、管轄の違いや支給対象の違いによって、区分されています。

助成金は受給要件さえ満たせば、100%受給でき、資金用途は問われません。一方、条件を満たしたうえで、審査を受けなければならないのが補助金です。受付期間や審査がシビアなケースがあるばかりか、必ず支給されるわけではなく、平均採択率は30%。審査に通りやすいものでも、60%です。
しかも、資金使途は申請した内容に限られています。補助金の受給を前提とした資金計画を立てるのは得策ではありません。

支給された助成金、補助金については返済しなくてもよいというメリットがあります。助成金が支給されれば、その分経営は楽になるはず。原則的に申請主義の仕組みとなっていますから、たとえ要件を満たしていても受給できるわけではありません。
活用し損ねてしまい、経営が苦しくなってしまったら後の祭り。要件を確認しながら、積極的に活用していきましょう。

助成金、及び補助金の種類について

助成金は、従業員の雇用・福利厚生・雇用期間の延長・従業員の研修、教育など多岐にわたり、さまざまな種類があります。
そのすべてをご紹介できるわけではありませんが、クリニックの経営で活用できる助成金の例をいくつか取りあげていきます。

なお、ここで記載した以外にも雇用関係の助成金に対する共通の要件など、受給要件が設定されています。
詳しくは関係公共団体、自治体等にお問い合わせください。

1, キャリアアップ助成金

非正規雇用の労働者を正規雇用へ転換、または賃金の改善、短時間労働者の労働時間延長などの取り組みを行った事業者に対して支給される助成金が、「キャリアアップ助成金」です。「正社員化コース」「人材育成コース」「賃金規定等改定コース」「健康診断制度コース」「諸手当制度共通化コース」「賃金規定等共通化コース」「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」「短時間労働者労働時間延長コース」の8コースからなります。有期雇用労働者、派遣労働者、短時間労働者といった、いわゆる“非正規社員”のキャリアアップを促進するための制度です。

従業員1人につき、東京都であれば110万円、地方でも60万円支給されます。開業時には300万円~400万円超の助成が見込めます。

2, 人材開発支援助成金(旧:キャリア形成促進助成金)

従業員に行った職業訓練の経費、および訓練期間中の賃金の一部が助成されます。5つのコースが設定されていますが、いくつ取り組んでも構いません。それぞれ助成金額は50万円となっています。

なかでも「教育訓練・職業能力評価制度」「セリフ・キャリアドック制度」「教育訓練休暇等制度」は、どの業態でも取り組みやすいものです。3つの取り組みで、合計150万円分支給されます。

3, 雇用調整助成金

景気の変化など経済的な理由によって、事業規模の縮小を図らなければならなくなった事業主が、一時的に休業・社員の教育訓練(雇用調整)を行うことによって、その従業員の雇用を維持すると受給できる助成金です。

雇用主が従業員に対して支払った、賃金相当額の一部、約3分の2が支給されます。休業・教育訓練の場合、1年間の間に最大で100日間、3年間の間に最大150日分受給できます。ただし、教育訓練については1人1日あたり上限7,775円とする基準があります。

4, 特定求職者雇用開発助成金

「特定求職者雇用開発助成金」は、ハローワークなどを通じ、高齢や障害で就職が困難な人を、雇用保険の一般被保険者(継続して雇用する労働者)として雇用する事業主が受給できる助成金です。

5, 職場定着支援助成金(旧:中小企業労働環境向上助成金)

労働における処遇や評価の仕組みを整えたり、研修体系を整備したりすることで労働環境の向上に努めた際に支給されます。雇用管理の改善推進、雇用創出を図ることが目的です。

6, 再就職支援奨励金

従業員の再就職を支援するための費用について助成されます。事業規模縮小等により、離職をせざるを得ない従業員の再就職にかかわる支援を外部に委託して実施した場合などが対象です。

7, トライアル雇用奨励金

就業経験、技能、知識の不足で安定的な就労が困難な求職者を、ハローワークからの紹介によって一定期間(原則3か月)試行雇用した場合、助成が行われます。対象の求職者1人あたり、月額4万円が最大3か月まで支給されます。なお、平成26年3月から対象要件等が変更されており、学校卒業後に安定した職業に就いていない人、妊娠・出産・育児を理由に離職後、1年以上安定的に就労していない人など、安定した就職が困難な求職者全般に拡充されています。

8, 両立支援助成金

従業員が仕事と家庭の両立ができるよう支援したり、女性が活躍しやすい労働環境を整備したりしている事業者に支給される助成金です。「事業所内保育施設コース」「出生時両立支援コース」「介護離職防止支援コース」「育児休業等支援コース」「再雇用者評価処遇コース」「女性活躍加速化コース」があります。