MS法人の社債を利用した節税方法とはどういったものなのか?


MS法人を設立する医療法人は、MS法人がないと実現できないさまざまな節税方法を実践するべきです。
ここからは、MS法人がないと実現できない節税方法の1つ、“社債”を利用した節税方法を中心に解説します。
理解していただくことで、医療法人にとって非常に効果的な節税となります。

目次

社債の概要

そもそも社債とは、企業が資金調達の手段として、投資家から資金を募る際に発行する有価証券のことをいいます。
社債には、返済期日や利息率が記されていて、企業が投資家に対して発行する借用証明の役割を果たします。
また、企業の資金調達手段として近いものに“株式”がありますが、こちらは社債とはまったく異なるものです。
株式は投資家による出資であり、企業はその金額を返済する義務を負いません。
投資家は株価の変動によって利益を得たり、配当金を受け取ったりすることができます。
一方、社債はあくまでの債券の一種であり、あらかじめ定められた期限に到達したとき、企業は投資家に対して返済義務を負います。
投資家側からすると、企業から元本の返済を受ける権利、設定された利息を受け取る権利を有するのが社債ということになります。
ちなみに、社債と株式では、企業が倒産した際の元本の扱いも異なります。
株式の保有者は出資者、社債の保有者は債権者であり、倒産時の弁済は債権者である社債の保有者の方が、株式の保有者よりも優先されます。

MS法人がないと社債を利用した節税ができない理由

MS法人がないと社債を利用した節税ができない理由は、至ってシンプルです。
医療法人では、社債の発行が認められていないからです。
もっと言えば、医療法人では株式の発行も禁止されており、不特定多数の人物から資金を集めることができません。
請求してから実際に支払われるまで、何ヶ月もかかる診療報酬債権を収入の中心としている医療法人にとって、こちらはとても不便な話です。
一方、MS法人は株式会社や合同会社として設立されるため、社債や株式の発行が認められています。
したがって、MS法人で社債を発行すれば効果的な資金調達ができる上に、節税も実施できるというわけです。

MS法人の社債を利用した節税方法

MS法人の社債を利用した節税方法は、まずMS法人で社債を発行するところからスタートします。
その後、発行した社債の利息を受け取ることで、医療法人の院長の収入にかかる税金を節税できます。
なぜかと言うと、社債利息で受け取ることにより、税率が大きく変わるからです。
医療法人の院長の収入における所得税の最高税率は45%です。
ただし、こちらには住民税が10%加算されるため、実質院長の収入における最高税率は55%ということになります。
一方、社債利息で受け取る場合は、税率が一律20%となります。
つまり、MS法人で社債を発行して利息を受け取るだけで、医療法人の院長の収入にかかる税金は35%も節税できるということです。
仮に院長の収入が4,000万円であれば、この節税方法で1,400万円もの節税が可能になります。

MS法人は社債発行のための借入もしやすい

MS法人で社債を発行する際は、MS法人が金融機関から借入を行う場合もあります。
金融機関には、医療法人に対する融資を渋るところも多いですが、MS法人で不動産を所有していれば、借入がしやすくなります。
こちらは、不動産があればそれを担保にできるため、金融機関は信頼して融資をしてくれやすくなることが理由です。
つまり資金的な余裕がない場合でも、こちらの節税方法は実現できる可能性が高いということです。

MS法人を活用したその他の節税方法について

MS法人を活用した節税方法には、社債を利用する方法以外にも以下のようなものがあります。

・家族をMS法人の役員にする
・MS法人を介して商取引を行う
・MS法人から医療法人に不動産を貸し出す

家族をMS法人の役員にする

こちらは、個人の開業医が医療法人化する際にも言えることですが、MS法人を活用すれば、家族を役員にして所得の分散を図ることができます。
個人のクリニックでは、青色事業専従者給与しか認められず、しかも専従が条件となることから、実質的には配偶者にしか適用されません。
一方、MS法人を活用すれば、家族に経営者として高い役員報酬を支払うことができるため、所得の分散が可能です。
さらに、役員が退職した後は、役員への退職金も支払うことができます。

MS法人を介して商取引を行う

医療法人は、他の企業だけでなく、関連するMS法人を介して商取引をすることで、所得を分散することが可能です。
例えば、Aという商品を医療法人が仕入れ、使用する場合、特に利益は発生しません。
一方、こちらをMS法人が仕入れる場合、Aの仕入れ価格に利益を上乗せし、医療法人に販売するという方法を取ります。
医療法人は、MS法人の利益加算後の価格で仕入れ、患者様に販売することで利益を得ます。
もちろん、販売できるものは生活用品などに限定されますが、こういった些細に見えるキャッシュフローを変えることで、医療法人の売上をMS法人に流すことができ、利益が分散され節税につながります。
ちなみに、医療法人は、クリニックの建物内であれば、生活用品の販売をMS法人に任せることに関しても、付帯業務として実施することが可能です。

MS法人から医療法人に不動産を貸し出す

その他の節税方法としては、現在、医療法人が所有・使用している土地や建物を一旦MS法人に売却し、その不動産を医療法人に賃貸として貸し出すという方法もあります。
こうすることで、医療法人からMS法人に資金が流れるようになり、その流れの中で発生した収益はMS法人の収入に、医療法人が支払う費用は経費として控除の対象になります。

MS法人を活用した節税の注意点

MS法人で行う節税にはメリットばかりのように見えますが、実際は注意すべき点もあります。
医療経営上、必要な取引を行うのであれば問題ないですが、節税が先行してしまうようなことはないようにしましょう。
特に、強引に医療法人、MS法人間の取引を作ることは避けるべきです。
ここでいう強引とは、過剰な利益の上乗せによる、市場価格から乖離した高額取引のことを指しています。
もちろん、高額取引の方が、医療法人の節税メリットは大きくなりますが、税務上容認されるものではないため、注意してください。

適正な商取引のラインについて

先ほど、医療法人とMS法人との間では、強引な取引をしてはいけないという話をしました。
では、適正な商取引のラインについて、もう少し踏み込んで見てみましょう。
双方の取引価格は、以下の金額が適正とされています。

・医療消耗品、医療器具の仕入れ販売価格:10%程度の差益が目安
・適正リース料:リース料倍率は取得価額の1.25倍程度が目安
・不動産賃貸料:近隣相場との比較等を基に総合的に決定
・人材派遣料:実際の人件費の1.2倍程度が目安

あくまでも目安ではありますが、医療法人と通常の企業が取引を行う場合、上記の金額を目安に取引することが多いです。
また、その通常の企業と同じくらいの利益率を維持しながらの商取引であれば、不自然だと判断される可能性は低くなります。

まとめ

ここまで、MS法人の社債を利用した節税方法を中心に解説してきました。
前述した節税方法を実現することができれば、医療法人の税負担は大幅に軽減されます。
特に、社債を利用した節税方法は、MS法人の“社債が発行できる”、“借入がしやすい”という利点を最大限に活かした節税ができるため、おすすめです。
MS法人をさまざまな場面で活用したいという方は、一度実践してみることをおすすめします。


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