MS法人を活用した節税の現状と注意点について解説します


個人のクリニックや医療法人によるMS法人の設立において、もっとも大きな利点は、やはり節税効果が期待できるという点です。
では、MS法人を活用した節税は、果たして現在でも積極的に行われているのでしょうか?
また、MS法人の利点を最大限に活かすには、一体どんなところに注意すべきなのでしょうか?
併せて解説します。

目次

MS法人を活用した節税の現状

MS法人は、個人のクリニックや医療法人における所得税、相続税の節税に効果を発揮する法人です。
そのため、MS法人の代表と株主を、クリニックや医療法人の院長の配偶者、あるいは子どもにし、医業収益を移転させるという方法が、非常によく行われていました。
また、MS法人に業務を委託し、委託料を支払って、収益を移転させるという方法も、非常にポピュラーな節税方法として、多くのクリニック、医療法人が行ってきました。
ただ、1992年、ある個人のクリニックが税務署からの指摘を受けたことにより、クリニックや医療法人全体のMS法人活用における流れに、少し変化が起こります。
具体的には、当該クリニックが診療報酬の10%を委託料としてMS法人に支払った金額について、同業者と比べて明らかに高額だとして、税務署の指摘を受けたものです。
このクリニックは、しっかりと実態のあるMS法人を経営しており、業務委託契約書も作成していたため、法律上の違反はしておらず、この指摘を不服とし、裁判を起こしました。
しかし、裁判では「10%は適性委託料を超えている」という判決が下され、当該クリニックの医師は、多額の所得税、延滞税、利子税などを支払う羽目になったのです。
この判決後、MS法人を活用し、積極的に節税を狙うクリニックや医療法人は、かなり減少してしまいました。

MS法人の利点を最大限に活かすには?

MS法人の利点である節税効果を最大限に活かすためには、必ず注意しなければいけないことがあります。
それは、“消費税を計算に入れて、節税のシミュレーションをする”ということです。
クリニックや医療法人の医業収益には、原則消費税がかかりません。
ただ、MS法人に支払う委託料に関しては、消費税の対象取引となってしまいます。
つまり、MS法人を活用することで、クリニックや医療法人だけ経営する場合はかからない消費税がかかってしまう場合があるということです。
そのため、節税効果のシミュレーションをする際は、所得税や相続税だけでなく、きっちり消費税に関しても考慮しなければいけないのです。

まとめ

MS法人を活用した節税は、個人のクリニックや医療法人にとって、間違いなく効果的な選択肢です。
そのため、以前よりも活用するクリニック、医療法人が減ったとは言え、それだけで選択肢から外してしまうというのは、いかがなものかと思います。
もちろん、委託料の設定や消費税を含めたシミュレーションなど、勘案すべき点が多い節税方法ではありますが、うまく行けば大きな節税効果が期待できます。


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