失敗しないクリニック開業

かつて、クリニックは開業さえすれば、それなりに成功できるものでした。
しかしクリニックの数が増え続けている現代では、綿密な計画・戦略を立てなければ生き残れません。
勤務医時代と違って、経営者の視点も求められることになります。
クリニック経営に失敗しないためには、以下のような点に注意したいものです。

クリニックのコンセプトを明確に

現在、特に内科系のクリニックが急増しているといわれています。
埋もれてしまわないためには、明確なコンセプトを打ち出し、差別化を図る必要があるでしょう。

クリニックの名称も「●●(名前)内科クリニック」では、インパクトに欠ける印象です。
「芝公園●●内科クリニック」のように地名ブランドを生かす手もあります。
また、専門性を前面にアピールして、ターゲットを絞ることも有効です。やりたい医療やご自身強み、弱みをまとめておくとスムーズです。

エリアマーケティングを欠かさずに

クリニック開業のエリアで人気の目黒区、品川区。ご自身がお住まいである場合や、住民が比較的高所得者層という理由などで、開業を希望される方が多いようです。
ところが、人気のエリアは群雄割拠。すでにクリニック飽和状態を迎えています。立地ありきでは上手くいきません。成功にはマーケティングが不可欠です。

闇雲にたくさんの媒体に広告を出すのは、コストもかかり得策ではありません。ターゲットの目につきやすく、費用対効果の大きい媒体を活用していきましょう。
たとえば、30万円かけて300万円の売上が見込めれば、十分効果はあったといえます。しかし、いくらコストが安く抑えられてもパフォーマンスが0円なら、まったく意味がありません。目先の数字にとらわれないことが重要です。

たとえば、小児科系のクリニックを開業するのなら、一般に子どもの多いファミリー向けマンションの密集エリアが適しています。しかし、そんなエリアでありながら「小児科専門クリニック」がない地域もあるのです。そこへ小児科専門のクリニックを開業すれば、集患に苦労しないことは想像に難くないでしょう。

ネットワークを活かす
開業もあり

勤務していた総合病院の近隣のエリアで、開業するのも有効です。
地域に根付いた病院でキャリアを積んだ医師であればあるほど、周辺住民からの信頼度は高く、安心感もあります。

何より、自分の患者がそのまま来てくれる可能性が高いですし、患者の紹介を含め連携した医療ができる点で、大きなアドバンテージといえるでしょう。
開業当初から来院してくれる患者がある程度見込めるというのは、クリニックを経営していく上で非常に重要です。もし、まったく知らない土地に開業するのならば、じっくり時間をかけて調査する必要がありますし、イチから信頼関係を築いていかなければなりません。

開業資金は借り入れの割合
を増やすことも検討

日本医業総研の調査によると、開業資金にあたっての自己資金は1000万円~2000万円が最も多くなっています。とはいえ、準備した資金をすべて開業費用に充ててしまうのは、考えものです。ある程度はランニングコストの補填や、生活費のために確保しておくことが安全といえます。

開業資金を全額金融機関から借り入れるのも選択肢のひとつです。金融機関の立場からみると、医院・医師は安心、安全な融資先のため、無担保無保証でも多額の融資を受けられる可能性があります。

スタート時は人件費の
コスト削減を視野に

クリニックの経営安定化のためには、優秀なスタッフは欠かせません。
しかしながら、必要なスタッフ数の把握が曖昧な開業時点で、常勤スタッフを雇うと多額のコストがかかり、経営を圧迫してしまうかもしれません。

クリニックの開業当初は、パートのスタッフだけをそろえることも検討してみてください。そのなかから、自分のクリニックのコンセプトにあった、能力ある人材を常勤化する……そんな選択肢もあるのではないでしょうか。

インターネットを最大限活用する

どんな業種であっても、ネットを活用しない手はありません。
スマートフォンの普及率も右肩上がり、性別・年齢を問わず、なにをするにも検索する時代です。クリニックのサイトやブログ、SNSを通じて積極的に専門性や強みをアピールしていきましょう。

患者の立場からすれば、自分に起こっている症状や病気について詳しい医師のもとに行きたいと思うのは当然です。
専門分野の傷病を詳しく取り扱ったブログの更新など、絶えず情報発信を心がけるようにしてください。

医業はもはやサービス業だと認識する

せっかくネットで集患を心がけても、継続して通ってもらわなければ意味がありません。患者数を維持するためには、大きな病院と異なるきめ細やかなサービスや、感じのいい接客などがあげられます。ホリピタリティが向上し、医療以外の部分でも付加価値を提供することが、患者を惹きつけます。

地域によっては、まだまだクチコミの影響は大きく、根強いものがあります。ひとりの患者がやがて数十人の患者を呼んでくれるかもしれません。
医業は需要のなくならない仕事ではありますが、少子高齢化によって、やがては現在よりも供給過多になるでしょう。そうなれば、いくら医師といえども斜陽産業と呼ばれる日が来てしまうかもしれないのです。今のうちから、患者に喜んでもらえるクリニック作りが重要です。