認定医療法人制度が制定された事により、持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行する医療法人が増加しています。厚生労働省の発表によると、医療法人の総数は5万1958法人で、このうち持分あり医療法人は4万601法人(昨年比マイナス426法人)、持ち分なし医療法人は1万976法人(昨年比プラス1523法人)でした。(2016年調査)持分なし医療法人が多い都道府県は東京都の1704法人、次いで大阪府、神奈川県、埼玉県の順となっています。この様に持分なし医療法人へ移行する背景にはさまざまなメリットがあるからであると思われます。持分なし医療法人へ移行するメリットとは、どの様なものがあるのでしょうか?
目次
持分なし医療法人へ移行するメリット
①持分なしであるため、相続税の課税がない。また、それに伴う財産評価の必要もない。
②払戻し請求をされたり、残余財産の分配ができなかった事などによる医療法人の資産流出リスク最小限にする事ができ、安定して医療法人の経営を継続できる。
③役員の同族要件に社員は含まれていないため、社員の総会運営を親族の社員で実施する事が可能となる。
④持分あり医療法人の際に、出資金額が1億円を超えているケースでは、持分なし医療法人へ移行する事により中小法人の優遇税制が適用となる。
⑤持分あり医療法人同士の合併では、持分あり医療法人のまま継続する事が可能。
⑥社会医療法人や特定医療法人へ移行する事ができ、税金の優遇を受ける事ができる。
⑦2014年10月からの3年間、税制の優遇措置や低金利で融資を受けられる制度を利用できる。(2017年に制度改正され、2020年9月まで期間が延長されました。認定を受けるための要件も一部変更になっています。)
持分なし医療法人へ移行するデメリット
持分なし医療法人は全国的に増加していますが、もちろんデメリットもあります。メリットとデメリットを考慮して持分なし医療法人へ移行するべきなのかを考えましょう。
①もしも、法人の解散した場合には、残余財産については分配請求権がなくなるため、国などに帰属してしまう。
②今までに減税対策として持分を生前贈与して贈与税を払ってきた事の意味がなくなってしまう。
③剰余金の配当禁止により、法人内に留保している資産を払戻しに当てる事ができない。
④持分なし医療法人への移行において、相続税や贈与税の負担が不当に減少してしまうケースにおいては、その医療法人に対して贈与税が課税される。