MS法人設立のデメリットに、“経費が増加する”ということが挙げられます。
これは、クリニックだけでなく、MS法人も運営しなければいけないことで、帳簿作成や決算確定申告、事務費用などの諸経費が増えることを指しています。
では、このようなMS法人設立のデメリットをメリットに変えるには、どうすればいいのでしょうか?
目次
MS法人設立のデメリットをメリットに変える方法
MS法人を設立する目的は、なんといっても節税です。
ただ、MS法人を設立することで、経費の増加というデメリットが発生するため、税率を下げないことには、「経費の方が高くなってしまった」ということにもなりかねません。
そのため、MS法人設立前に、しっかり節税ができるような仕組みを作り上げ、正確なシミュレーションをしておく必要があります。
MS法人を活用した節税の事例について
ここからは、MS法人のデメリットをメリットに変えるための仕組みと、実際節税できる金額について、事例を交えながら解説したいと思います。
モデルケース
院長における個人の課税所得:12,000,000円
院長における個人の所得税率:33%-1,536,000円(控除額)
現状、クリニックで診療報酬請求事務、会計事務、窓口業務、受付業務に対して、人件費を年500万円支出しているとします。
そして、これらの業務に携わる人材をMS法人に転籍させ、クリニックはMS法人に対して年625万円の委託料を支払うとします。
また、クリニックはMS法人に経営管理業務を年300万円で業務委託するとしましょう。
ちなみに、クリニックはMS法人を設立することで、425万円の経費が増加することになります。
MS法人の概要
代表取締役:院長の妻(年額給与300万円)
平取締役:院長(年額給与60万円)
平取締役:顧問税理士(年額給与50万円)
※諸経費は15万円
MS法人の収支は、以下の通りになります。
収入:9,250,000円
経費:9,250,000円(院長の妻、院長、顧問税理士の年額給与、人件費、諸経費を合わせた金額)
差引収支:0円
MS法人には利益を残さず、親族に分配させます。
では、MS法人設立前と設立後の納税額には、どれくらい違いがあるのか、シミュレーションしてみましょう。
設立前の納税額
12,000,000×33%-1,536,000=①2,424,000円
設立後の納税額と追加支出
医院院長:12,000,000-4,250,000-7,750,000
7,750,000×23%-636,000=1,146,500円
院長の妻:3,000,000×70%-180,000(給与所得控除)=1,920,000
1,920,000×10%-97,500=94,500
MS法人の税金:地方税80,000円
税理士報酬と諸経費:650,000円
合計:②1,971,000円
①-②=453,000円
上記の方法だと、MS法人設立前より設立後の方が、453,000円節税できるということになります。
まとめ
MS法人のデメリットをメリットに変える方法とは、つまり“経費が高い”というデメリットを、“節税できる”というメリットに変える方法だということです。
また、それを実現するためには、上記のような細かい仕組みの構築と、綿密なシミュレーションが必要不可欠となります。
そのような準備ができれば、MS法人設立によって節税できる可能性は高いでしょう。