医療法人の持分なし法人への切り替えが難しい理由


医療法人は、持分あり法人から持分なし法人に切り替えることで、相続税の負担額を軽減することができます。
しかし世の中には、まだまだ持分なし法人に切り替えることができていない医療法人も多く存在します。
利点は明確なのにも関わらず、なぜ持分あり法人から持分なし法人に切り替えられない医療法人が多いのでしょうか?

目次

医療法人の持分なし法人への切り替えには欠点がある

医療法人の持分なし法人へ切り替えることによって、相続税の負担額を軽減できると解説しました。
これは、医療法人の余剰金が出資者の相続財産にはカウントされないことが理由です。
ただ医療法人の持分なし法人に切り替えると、贈与税の課税対象になってしまう可能性があります。
出資持分の放棄により、医療法人の出資者の相続人における相続税負担額、贈与税負担額が減少する代わりに、医療法人が個人扱いとなり贈与税の課税対象になるという仕組みです。
つまり医療法人の持分なし法人への切り替えで相続税負担額が軽減できても、それは“不当な減少”と判断されてしまうのです。
これが持分なし法人への切り替えにおける大きな欠点であり、多くの持分あり法人が切り替えをためらっている理由でもあります。

医療法人の持分なし法人における贈与税は回避できるのか?

では、医療法人の持分なし法人において課税される贈与税は回避できるのでしょうか?
結論から言うと、医療法人の持分なし法人が個人扱いされることによって課税される贈与税は、要件を満たせば回避することができます。
ただ回避のための要件を全て満たすのは非常に難しく、要件の実現が難しいというのも、医療法人の持分なし法人への切り替えがなかなか進まない理由です。
医療法人の持分なし法人への切り替えで課税される贈与税は、以下の要件をすべて満たせば回避できます。

① 残余財産の帰属先が一定
② 適正な運営組織で運営されている
③ 役員等のうち親族等の占める割合が1/3以下
④ 医療法人関係者への特別利益供給を行っていない

この中で特に困難なのが③です。
この要件を満たすには、医療法人の理事等も親族以外が務めなければならず、実行できる医療法人はそう多くはありません。

まとめ

医療法人の持分なし法人への切り替えがなぜ難しいのかを解説しました。
持分なし法人への切り替えができない医療法人が多いのは、利点と欠点を天秤にかけたとき、欠点の方が大きいと感じるケースが多いためです。
これから切り替えを考えている医療法人は、利点だけでなく欠点にもしっかり向き合った決断を心掛けましょう。
一度医療法人の持分なし法人に切り替えをすると、二度と持分あり法人に戻すことはできません。


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