医療法人における“持分払い戻し請求”とは、“持分を持つ社員が社員資格を喪失したとき、出資額に応じて払い戻しを請求できる”という制度のことです。
請求されるタイミングによっては、医療法人の経営が困難になることも考えられるため、院長は実際の事例を基に、持分払い戻し請求への対策を心得ておきましょう。
目次
事例で学ぶ“持分払い戻し請求”への対策~Kさんの場合~
医療法人を経営するKさんは69歳で、妻と医療法人の後継者となる予定の息子が1人います。
Kさんの医療法人における相続財産は9億円で、その内訳は医療法人の持分、Kさんが所有する土地と建物、賃貸経営用のマンション、現預金となっています。
またKさんには実の弟で、同じ医療法人の副院長を務めるSさんがおり、医療法人における持分はKさんが全体の半分、SさんとKさんの妻が1/4を持っています。
そんな中、副院長であるSさんが近々医療法人を退職する旨をKさんに伝えてきました。
Sさんは元々身体が良くないこともあり、3年以内には退職するという意思をすでに固めています。
退職時期は未定ですが、もしすぐにSさんが退職し、持分払い戻し請求をされてしまうと、院長であるKさんは医療法人から1億5,000万円を支払わなければいけません。
後継者も決定している中、それほどの大金を支払うことは難しいと判断したKさんは、Sさんの退職までに持分払い戻し請求への対策に打って出ます。
Kさんが実践した持分払い戻し請求への対策
KさんはSさんからの持分払い戻し請求がされる前に、70歳で自身を退職させ、退職金として2億円を用意しました。
そして持分評価が下がったのを見て、2億円の内1億円を使用し、Sさんの持分を買い取ります。
こうすることで、Sさんによって持分払い戻し請求がされるリスクをなくすことに成功したのです。
また後継者に決定している息子に与えるリスクも、極限まで抑えることに成功しています。
つまり持分払い戻し請求への対策は、実際に請求されるまでにどれだけ対策が取れるかがポイントだということです。
実際に持分払い戻し請求をされてしまうと、医療法人の院長がそこから打てる対策は少なくなってしまいます。
まとめ
医療法人における“持分払い戻し請求”への対策について解説しました。
院長は持分払い戻し請求への対策を考え、早めに実践しておくべきということを理解しておきましょう。
もし対策を打っていない場合、医療法人の経営どころか事業承継におけるプランも崩れてしまいかねません。
最悪の場合、法的なトラブルに発展してしまうことも考えられるため、注意が必要です。