閉業するクリニックにおける従業員への心遣いとは?


閉業することが決定した美容クリニック等は、粛々と手続きを進めていく必要があります。
また、閉業手続きを進めるにあたっては、これまで勤務してもらった従業員への心遣いも忘れてはいけません。
ここからは、具体的にどのような心遣いをすべきなのかを中心に解説したいと思います。

目次

クリニックが閉業する主な理由

美容クリニックは、さまざまな理由で閉業を余儀なくされることがあります。
具体的には以下のような理由です。

・院長の体調悪化、高齢化
・収益の低下
・後継者がいない

院長の体調悪化、高齢化

美容クリニックでは、院長が体調を悪くしたり、高齢化したりすることで、やむを得ず閉業するというケースがよく見られます。
特に、院長が特殊な資格や技術を持っているような美容クリニックでは、たとえどれだけ経営が安定し、他の従業員を豊富に抱えていたとしても、経営を続けるのが難しくなってしまいます。
また、院長だけでなく、相次いで従業員が退職したり、体調を崩してしまったりすることでも、美容クリニックは経営を続けるのが困難になります。

収益の低下

単純に、収益が低下して経営が悪化することも、美容クリニックが閉業を考える理由の1つです。
新型コロナウイルスの感染拡大により、美容クリニックを含む医療業界全体は赤字傾向にあるとされています。
こちらは、やはり以前と比べて、不要不急の外出を控える方が増加したことが理由です。

後継者がいない

院長の体調が悪化したり、高齢化が進んだりしても、後継者さえいれば、美容クリニックは経営を続けることが可能です。
しかし、医療業界は深刻な後継者不足に悩まされていて、一代で閉業してしまうクリニックも珍しくなくなっています。
また、後継者が見つかったとしても、後継者自体がすでに高齢であるというケースも散見されます。
このような、高齢の医師から高齢の医師に美容クリニックが承継され、すぐ次の後継者が必要になるという状況は、いかに医療業界の高齢化、人材不足が進んでいるかを表しています。

閉業するクリニックにおける従業員への心遣い3選

前述のように、美容クリニックが閉業する理由はさまざまですが、どのような理由であっても、院長は従業員の今後を考えた行動を取る必要があります。
具体的には、以下のような心遣いが必要です。

・なるべく早く閉業の旨を伝える
・次の勤務先を確保する
・解雇予告をするもしくは解雇予告手当を支払う

なるべく早く閉業の旨を伝える

閉業する美容クリニックの院長は、従業員に対し、なるべく早く閉業する旨を伝えなければいけません。
これはもちろん、ギリギリで伝えてしまうことにより、従業員が次の勤務先を見つけられないという状況を防ぐためです。
ただし、早く伝えすぎるのも良くありません。
例えば、まだ正式に閉業が決まっていない段階で伝えるのは、タイミングとして早すぎると言えます。
なぜなら、早めに伝えすぎてしまうと、今後のことを不安に思った従業員が続々と退職し、閉業予定日までの経営が回らなくなる可能性があるためです。
このような状況になると、院長の予定は大きく狂ってしまうため、注意してください。

次の勤務先を確保する

閉業する美容クリニックの院長は、従業員ために次の勤務先を確保することも検討しましょう。
例えば、他のクリニックや病院への紹介状を作成したり、希望条件を聞いて、該当するクリニックや病院を提案したりすべきです。
美容クリニックで勤務する従業員の中には、一家の大黒柱として、家族を養っている方もいるため、このようなサポートはとても大切です。
ちなみに、紹介状を作成して別のクリニックを紹介するということは、従業員に対してだけでなく、患者さんに対しても行わなければいけません。
患者さんも従業員と同じく、これまで通っていた美容クリニックが閉業するとなった場合、行き場をなくしてしまうからです。

解雇予告をするもしくは解雇予告手当を支払う

閉業する美容クリニックにおける従業員は、実質解雇扱いになります。
そのため、院長先生は実際閉業する少なくとも30日前に、従業員に対して“解雇予告”をしなければいけません。
従業員の重大または悪質な背信行為等があって解雇する場合には、所轄の労働基準監督署長の認定を受けることで、解雇予告なしに従業員を解雇することができますが、そうでない場合に解雇予告を怠った美容クリニックは、刑事罰に問われる可能性があるため、注意しましょう。
もし、解雇予告を行わないのであれば、その代わりとして“解雇予告手当”を支払う必要があります。
こちらは、平均賃金の30日分以上(最低30日分)の金額を支払うものであり、解雇予告をしない場合には、支払いが義務付けられています。
たとえ週1日しか労働日がないアルバイト等であっても、即日解雇を行うのであれば、美容クリニックの院長は、30日分の解雇予告手当を支払わなければいけません。

クリニックにおけるその他の閉業手続きについて

美容クリニックが従業員に対して心遣いをすることは、いわば閉業手続きの1つです。
では、その他にはどのような閉業手続きが必要なのかを見てみましょう。
個人で美容クリニックを経営する方が行うべき閉業手続きは、主に以下の通りです。

・閉業が必要かどうか検討する
・閉業準備、スケジュール立案
・閉業の申請、届出の提出
・従業員や患者の対応

閉業が必要かどうか検討する

美容クリニックの院長は、実際に閉業手続きをする前に、まず本当に閉業が必要なのかどうかを考えなければいけません。
状況によっては、閉業以外にもさまざまな選択肢があることも考えられます。
例えば、単に後継者不足が原因の場合は、閉業ではなく売却を行うことで、院長はある程度利益を得た後にリタイアすることができます。
特に評判の良い美容クリニックの場合、買い手がつきやすくなることが期待できるため、なおさら売却を選択した方が良いでしょう。

閉業準備、スケジュール立案

美容クリニックを開業することが決定した場合は、閉業準備とスケジュールの立案を行います。
具体的にいつまでに閉業するのか、従業員や患者さんへの対応や手続きの段取りなど、あらゆることを考慮して計画を立てましょう。
また、提出が必要な届出のテンプレート取得など、手続きに向けての準備も着々と進めておきます。

閉業の申請、届出の提出

個人経営の美容クリニックを閉業する場合、管轄の保健所に閉業の旨を申請します。
具体的には、保健所に診療所廃止届を提出するなど、美容クリニックの業務に関する各種の届出が必要になります。
また、閉業に必要な書類の提出先や提出期限に関しては、自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

従業員や患者の対応

こちらは先ほども解説したように、美容クリニックで勤務する従業員に閉業の旨を伝えたり、次の勤務先を紹介したりする手続きです。
また、患者さんに関しては、美容クリニックの閉業に合わせて他院への引き継ぎなどを行います。
ちなみに、このときには美容クリニックの取引先への対応、未収金などの回収も必要になります。

まとめ

ここまで、閉業する美容クリニックにおける、従業員への心遣いを中心に解説しましたが、いかがだったでしょうか?
美容クリニックを閉業することが決まった後は、許認可の手続きなどを淡々とこなせば良いと思っている方もいるかもしれませんが、決してそれだけではありません。
従業員や患者さん、その他の関係者すべてに対して配慮がなければ、スムーズに閉業できない可能性があるため、注意してください。


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