【2021年版】“医療法人社団”とはどのような組織なのか?


美容クリニックの開業を目指す方は、医療業界に身を置く立場として、“医療法人”に関する知識を身に付けておかなければいけません。
また、医療法人にはいくつかの種類がありますが、今回解説するのは“医療法人社団”についてです。
果たして、こちらはどのような形態の医療法人なのでしょうか?

目次

そもそも医療法人とは?

まずは、そもそも医療法人がどのような組織なのかについて解説します。
医療法人は、病院やクリニック、介護老人保健施設または介護医療院などの医療施設を開設する際に、設立される法人です。
医療法でその定義などが定められていて、イメージとしては株式会社の医療版のようなものです。
設立には主たる事務所の所在地の都道府県知事から認可を受ける必要があり、都道府県知事は認可判断にあたって、都道府県医療審議会の意見を聞かなければならないとされています。
また、認可後に設立の登記をすることで医療法人が成立し、登記においては組合等登記令が適用され、登記所で実施されます。
全国の病院のおよそ68%、クリニック(診療所)のおよそ42%、歯科診療所のおよそ21%が医療法人であり、数的にも医療の根幹を支えている組織だと言えます。
ちなみに、医療法人でない者は、その名称中に医療法人という文字を用いることができません。

医療法人社団とは?

医療法人社団について知るためには、まず“社団”や“法人社団”という言葉の意味を理解する必要があります。
社団は、一定の目的を持った人物の集まり、団体です。
そして、法人社団は、法律によってその団体に法人格が与えられた法人を指しています。
つまり、医療法人社団とは、一定の目的のもと集まった、法人格を持つ団体からなる医療法人だということです。
よりわかりやすくいうと、一般的な会社の構成と非常に近い医療法人です。
個人または法人が拠出した財産に基づいて設立され、医療法人全体の実に99%は医療法人社団が占めています。

医療法人社団の特徴について

医療法人社団の大きな特徴としては、法人格の対象が挙げられます。
先ほども少し触れたように、社団という形態を選択した場合の考え方は、一般的な会社の設立と類似しています。
例えば、化粧品を販売する会社を設立したいと考えたとき、その理念や目的に共感もしくは一致した人達が集まります。
こちらが、“一定の目的のもと集まる”ということです。
医療法人社団も、このような一般的な会社と同じように設立されるため、法人格は“人”に与えられていると考えて良いでしょう。
美容クリニックの開業を目指す方は、今後医療法人化を行うことになるかもしれませんが、その際にまず目指すべき医療法人の形態は、こちらの医療法人社団だと言えます。

主な医療法人社団の設立方法について

医療法人の形態の1つである医療法人社団は、基本的に“持分の定めのない医療法人”です。
持分は、医療法人設立の際の出資者が持つ財産権であり、“持分の定めのない”とは、出資者に対する残余財産の配当行為ができないことを意味しています。
法改正により、2007年4月1日以降は、こちらの持分の定めのない医療法人しか設立できなくなりました。
そこで登場したのが、“基金拠出型法人”と呼ばれる制度です。
こちらは、法改正によって“持分の定めのある医療法人”が新たに設立できなくなったと同時に導入されたものです。
具体的には、外部から出資資金を集めて設立することができる、持分の定めのない医療法人であり、より一般的な会社に近い設立形態だと言えます。
先ほども触れた2007年の法改正以降、医療法人社団の新設はこちらの方法が一般的になっています。
ただし、基金拠出型法人には、いくつかの注意点もあります。
こちらの方法を用いて設立した場合、外部から集めた資金に対し返済の義務が生じるため、美容クリニック等を経営するにあたっては、マイナス要素にもなり得るため、注意が必要です。

医療法人社団のメリット・デメリットについて

医療法人社団のメリットとしては、やはり法人としての構造が一般的な会社に近く、比較的運営しやすいという点が挙げられます。
また、設立件数が圧倒的に多いため、スムーズな設立や運営を実現している他の医療法人を参考にしやすいという点や、社員の意思で解散や合併がしやすいという点も、大きなメリットだと言えます。
一方で、先ほども触れたように、基金拠出型の場合、払い戻しによる資金の流出に備えなければいけないというのはデメリットです。
その他、法人財産と社員個人の財産を混同しやすいという点に関しても、注意しなければいけません。

医療法人社団の解散について

医療法人社団の解散、清算手続きは、医療法に基づいて実行されます。
また、医療法人社団は解散することによって事業活動を停止し、残った財産を整理する清算手続きが完了すると、法律上消滅することになります。
ちなみに、解散の事由については、主に以下のことが挙げられます。

・定款で定めた解散事由の発生
例えば、「〇〇クリニックを廃止したとき」「〇〇クリニックを休止し、その期間が1年以上に及ぶとき」といった解散事由を指します。

・目的たる業務の成功の不能
医療法人社団における業務について成功する見込みがなくなり、その存在意義がなくなったような場合です。

・社員総会の決議
社員総会の決議は、総社員の3/4以上の同意が必要です。

・合併
合併により消滅する医療法人社団の権利義務は、承継する医療法人に移転します。
この場合、解散によってただちに法人格が消滅します。

・社員の不足
社員が1人もいなくなった場合、医療法人社団は解散します。
社員が死亡した場合でも、社員としての地位は相続されないため、このような状況が続くと、社員が1人もいないということが起こり得ます。

・破産手続き開始の決定
・医療法第66条の規定による都道府県知事の設立認可の取り消し

医療法人社団と医療法人財団の違い

医療法人には、医療法人社団の他に、もう1つ種類があります。
それが“医療法人財団”です。
こちらは、個人や法人からの寄付金を基に設立される医療法人であり、寄付金には持分が認められていません。
医療法人全体のわずか1%程度しか存在しない形態で、社団が人の集まりであるのに対し、財団は“金銭”の集まりを意味しています。
つまり、法人格の対象が人ではないというところが、医療法人社団と大きく異なるということです。
医療法人財団のメリットとしては、設立時の資産が寄付のみであるため、構成員への払い戻しによる資金の流出がなく、法人の資産が安定する点が挙げられます。
また、非営利性のイメージについては社団より有利な点もありますし、特別に認可された“特定医療法人”や“社会医療法人”への移行では、人員補充の面で負担が少ないです。
しかし、医療法人財団は、医療法人社団のように基金制度で資金を調達することができません。
その他、解散時の残余財産を構成員に分配する方法がないことや、理事会が重要な意思決定と業務執行を行うことにより、運営の民主制や柔軟性に欠けるところもデメリットだと言えます。

まとめ

ここまで、医療法人社団という組織の詳細について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
美容クリニックの開業を目指す方は、経営が安定してきた段階などで、医療法人社団の設立を検討するかもしれません。
また、この場合は基金拠出型の設立が予想されますが、手元には確実に債権が残るため、出資面をどうするかについては、優先的に検討しておきましょう。


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