クリニックの源泉徴収義務が発生する報酬やケースについて


クリニックを経営する場合、医師に対する給与を始め、他にもさまざまな報酬を支払うケースが出てきます。
また、これらの報酬について、クリニックには源泉所得税を差し引く源泉徴収義務が発生することがあります。
ここからは、源泉徴収をしなければいけない報酬の種類、ケースなどについて解説します。

目次

クリニックが支払う報酬の種類

クリニックが支払う報酬とは、一般的に他人のために何か(仕事)をしてもらった場合に支払う以下のような対価のことを指しています。

区分

詳細

給与所得

・給与

・嘱託医報酬

・非常勤医報酬

・休日、夜間診療委託料 など

雑所得または事業所得

・税理士、弁護士、社労士報酬

・経営コンサルタント報酬

・講習料、謝礼

・原稿料

・指導料、教授料 など

ちなみに、厳密には、クリニックに所属している医師に支払う対価などは報酬ではなく、給与(給与所得)という扱いになりますが、ここでは給与も報酬の1つとして数えさせていただきます。

クリニックの源泉徴収義務が発生する報酬の種類

前述した報酬のうち、基本的に給与は源泉徴収が必須です。
また、雑所得または事業所得に関しては、支払先が個人である場合、源泉徴収義務が発生することがありますが、もちろんすべての報酬が源泉徴収の対象になるわけではありません。
クリニックが支払う可能性があるもので、なおかつ源泉徴収をしなければいけない報酬(給与以外)は、主に以下の通りです。

・原稿料
・デザインの報酬
・講演料
・翻訳料
・雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬
・技芸、スポーツその他これらに類するものの教授料または指導料
・弁護士、司法書士、税理士、社労士、土地家屋調査士などに支払う報酬
・企業診断員、火災損害鑑定人もしくは自動車等損害鑑定人に支払う報酬 など

源泉徴収額の計算方法について

上記のような報酬の源泉徴収を行う場合、クリニックは下記の源泉所得税を徴収しなければいけません。

支払う報酬の金額

源泉所得税額

1回に支払う金額が100万円以下の場合

報酬額×10%

1回に支払う金額が100万円以上の場合

(報酬額-100万円)×20%+10万円

ちなみに、報酬に消費税が含まれている場合は、原則消費税の額を含めた金額で100万円を超えるかどうか判定し、源泉所得税の計算をする必要があります。
ただし、請求書等により、報酬と消費税の額が明確に区分されている場合、消費税抜きの金額で計算しても差し支えありません。

このような場合はどうする?~源泉徴収するケース、しないケース~

ここからは、クリニックにおいてよくある報酬の事例を紹介しながら、源泉徴収をしなければいけないのか、それとも必要ないのかについて解説します。

ホームページ作成に対する報酬の支払い

ホームページ作成に対する報酬は、サイト構築料やデザイン料などに分類されます。
依頼する業者からの請求書に、ホームページ作成料とのみ記載されている場合は、主なサイト構築料を指すと考えられるため、クリニックは源泉徴収をする必要がありません。
一方、請求書の内容がサイト構築料、デザイン料に分かれているなど、明らかにデザイン料とわかる部分については、源泉徴収を行う必要があります。

ホームページ管理に対する報酬の支払い

ホームページの管理費は、契約内容によって給与所得か雑所得等に分かれます。
給与所得に該当するものは、雇用またはこれに類する原因に基づき、非独立的に提供される労務の対価であり、クリニックの指揮命令下にあるものです。
一方、雑所得等になるものは、自己の計算と危険において独立して営んでいるものであり、こちらは給与所得とは違って、源泉徴収義務が発生しません。

医師に対する報酬の支払い

クリニックに所属する常勤医への給与は、当然源泉徴収を行わなければいけませんが、その他にも医師に対する報酬の支払いには、下記のような特殊なケースがあります。

・代診医に報酬を支払う場合
・専門医に訪れてもらい、その対価として診療報酬の一部の報酬を支払う場合
・技術指導に対する謝礼として報酬を支払う場合

代診医は、常勤医の代わりに診察を行うため、こちらに支払う報酬は必ず源泉徴収しなければいけません。
また、専門医に支払う報酬に関しては、代診してもらっている常勤医に同程度の専門技術がない場合、クリニックの指揮命令下にあるとは言えず、源泉徴収も行わないことがほとんどです。
例えば、矯正専門医に診療を依頼した歯科クリニックにおいて、矯正やインプラント等の知識を同程度持っている常勤医がいないケースなどが該当します。
ちなみに、技術指導に対する謝礼は、報酬の種類にも記載した“技芸、スポーツその他これらに類するものの教授料または指導料”に該当するため、クリニックには源泉徴収を行う義務が発生します。

まとめ

ここまで、クリニックが源泉徴収をしなければいけない報酬の種類、源泉徴収が必要なケースとそうでないケースについて解説してきました。
給与や報酬はさまざまな項目に分かれているため、クリニックがはまずこれらの詳細を把握するところから始めなければいけません。
また、支払いを行う際は、今行っている支払いがどの報酬に該当するのか、その都度意識する必要があります。


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