クリニックの源泉徴収義務、義務者になるための届出について


医師を始めとする従業員を雇用するクリニックには、源泉徴収義務が発生します。
また、クリニックは開業後、自動的に源泉徴収義務者になるわけではなく、必要な届出を済ますことで、初めて源泉徴収義務者として手続きが可能になります。
今回は、これらの点を中心に解説したいと思います。

目次

源泉徴収の概要

年間の所得にかかる税金を、あらかじめ事業者が給与から差し引くことを源泉徴収といいます。
従業員の給与を支払う事業者は、こちらの手続きを必ず実施しなければいけません。
事業者が源泉徴収を行うことにより、従業員は確定申告を行う必要がなくなり、毎月の給与から少しずつ税金を納めることができます。
また、クリニックの源泉徴収は、医師や従業員の給与所得から必要な控除をした上で行います。
そのため、各従業員にどのような控除が適用されるのかを把握する必要があります。
これらを把握するために、医師や従業員を雇用した際には、控除対象配偶者の有無や扶養親族の有無、従たる給与(本業以外の給与)に該当するか否かなどを確認することができる“(該当年度の)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書”の提出を求めます。
ちなみに、源泉徴収には、安定的な税収を得ることができる、確実に所得税を徴収するといった、国にとってのメリットもあります。

源泉徴収義務者になるための届出について

クリニックは、医師や従業員に給与を支払う以上、源泉徴収義務が発生するという話をしました。
また、クリニックを設立し、従業員を雇用した場合、設立から1ヶ月以内に、“給与支払事業所等の開設届出書”を提出しなければいけません。
こちらは個人が事業を始めるため、事務所を開設したときに提出する“個人事業の開業届出書”とは異なるものです。
法人の場合は経営者に対し法人から給与を支払うため、従業員がいなくても給与支払事業所等の開設届出書“を提出しなければいけません。
ちなみに、クリニックの開業直後などで、しばらくは無給で働くような場合、その期間内であれば提出しなくても良いとされています。
ただし、提出しないメリットは特にないため、クリニックの設立時に他の提出書類とあわせて提出するのが無難です。

給与支払事業所等の開設届出書の詳細について

前述の通り、クリニックが源泉徴収義務者となるためには、給与支払事業所等の開設届出書を提出しなければいけません。
こちらの提出先は、給与支払事業所の所在地を管轄する税務署です。
ほとんどの場合、クリニックの所在地を管轄する税務署と同様と思って差し支えありません。
給与支払事業所等の開設届出書の様式については、国税庁のWebサイトで確認することができ、こちらから記入上の注意がついた書類をダウンロードすることも可能です。
なお、こちらの書類を提出する際には、マイナンバーと本人確認が必要になります。
クリニックの開業医は、窓口で提示するか、郵送する際には本人確認書類(写)添付台紙を利用し、本人確認書類の写しを添付して提出してください。

給与支払事業所等の開設届出書とあわせて提出する書類について

税務署に給与支払事業所等の開設届出書を提出する際は、“源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書”もあわせて提出すべきです。
クリニックが医師や従業員から源泉徴収した税金の納付は、本来であれば毎月1回実施しなければいけないものです。
しかし、従業員が常時10人を下回る規模の小さい事業者に限り、税金の納付を年2回にまとめて行うことができます。
また、こちらの制度を利用するために提出しなければいけないのが、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書です。
こちらの提出期限は特に定められておらず、提出した翌月以降に支払う給与から、こちらの制度が適用されます。
そのため、クリニックは前もって要件をクリアしているかどうか確認し、適宜準備と提出をしなければいけません。

源泉徴収義務を怠った場合のペナルティについて

源泉徴収義務のあるクリニックが、前述した届出を行わなかったり、医師や従業員からの源泉徴収を怠ったりした場合には、正当な理由があると認められる場合を除き、不納付加算税として、納付税額の他に納付税額の10%がペナルティとして課税されます。
また、不納付加算税は、税務署から指摘を受ける前に自主的に納付した場合、税率が納付税額の5%まで下がります。
さらに、源泉徴収義務を怠った場合、単純に納付が遅れたことに対するペナルティとして、延滞税も加算されます。
ちなみに、これらの税金に関しては、クリニックの経費として計上することができないため、注意してください。

まとめ

ここまで、クリニックの源泉徴収義務、源泉徴収義務者になるための申請や義務を果たさなかった場合のペナルティなどについて解説してきました。
クリニックの開業にはさまざまな手続きが必要であり、少しバタバタすることもありますが、源泉徴収に関する手続きはおろそかにしてはいけません。
医師や従業員の負担を減らすため、源泉徴収を行ったり、徴収額を年末調整で調整したりすることは、源泉徴収義務者として当然のことです。


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