高齢または障害のある患者様に配慮したクリニックの設計


クリニックを始めとする医療機関には、日々さまざまな患者様が訪れます。
また、患者様の中には、かなりお年を召されている方や、視覚や聴覚などに障害を持たれている方もいます。
今回は、高齢または障害のある患者様に配慮したクリニックの設計について、色々な視点から解説したいと思います。

目次

高齢・障害のある患者様に配慮したクリニック設計のポイント

クリニックを建築する際は、一般の患者様はもちろんのこと、高齢または障害のある患者様にとっても、快適に利用できる設計を心掛けなければいけません。
具体的には、以下の箇所における設計に配慮しましょう。

・敷地内の通路
・駐車場
・建物の出入口
・屋内の通路
・階段
・エレベーター、エスカレーター

敷地内の通路

クリニックの敷地境界、および駐車場から建物の出入口までの通路、同一敷地内の建物間の通路は、高齢または障害のある患者様がスムーズに利用できるものでなければいけません。
具体的には、以下のような点に注意して建築すべきです。

・手すりを設けているか
・表面は滑りにくい仕上げであるか
・段がある部分は識別しやすいものか、つまずきにくいものか
・点状ブロック等は敷設しているか
・歩行者用の通路、車路は分離されているか
・車椅子の方に対応した通路幅員は確保されているか
・夜間の照明の明るさや数は十分か など

駐車場

高齢または障害のある患者様にとって、車は非常に有効な移動手段であるため、クリニックには駐車場を設けることが望ましいです。
また、そのような患者様がより使用しやすい駐車場にするためには、以下のポイントを押さえておくべきです。

・車椅子の患者様用の駐車施設を設けているか
・駐車スペースの幅は350cm以上であるか
・建物の出入口までの経路が短い位置に駐車スペースがあるか
・駐車場があることの表示は見やすい位置に設けられているか
・標識は内容が容易に識別できるものか など

建物の出入口

クリニックの建物における出入口を設計する際は、高齢または障害のある患者様が利用しやすいよう、出入口の幅や段差などに注意しなければいけません。
以下のポイントを押さえておけば、スムーズに利用できる出入口となります。

・車椅子の方が通行できる幅が設けられているか
・車椅子の方の通過を妨げるような段がないか
・車椅子の方が方向転換できるスペースがあるか
・扉は開閉しやすい形式か(自動ドア等)
・扉のガラスには安全ガラスが使用されているか(衝突時の事故防止のため) など

屋内の通路

クリニックにおける屋内の通路では、高齢または障害のある患者様が目的の空間まで到達できるように、わかりやすい設計を心掛けるべきです。
以下のポイントについては、必ず意識しましょう。

・手すりを設けているか
・表面は滑りにくい仕上げであるか
・通路はわかりやすく、通行しやすい動線計画、形状か
・通路に段はないか(段がある場合、傾斜路または昇降機を設けているか) など

階段

階段は、転落や転倒などの事故が多い箇所であり、高齢または障害のある患者様にとっては特に危険な場所です。
そのため、クリニックの建築時には、隅々まで安全性に配慮した設計にしなければいけません。
具体的には、以下の点に注意して設計しましょう。

・階段の形状は直階段または折り返し階段になっているか(回り階段は視覚障害のある患者様などが方向を失ったり、踏面の寸法が内側と外側で異なるために踏み外しやすかったりするため、避ける)
・転倒時の危険防止を考慮した踊り場があるか
・手すりを設けているか
・踏面や踊り場の表面は滑りにくい材料、仕上げであるか
・段鼻(踏面の先端部)は識別しやすく、つまずきにくい形状か
・階段上端部には点状ブロックが敷設されているか など

エレベーター、エスカレーター

高齢または障害のある患者様に配慮した設計を考えるにあたって、エレベーターやエスカレーターの存在は欠かせません。
また、エレベーターやエスカレーターの具体的な設計に関しては、以下のポイントをすべて押さえることが望ましいです。

・エレベーターは主要な経路に隣接して設置されているか
・エレベーターの入口までわかりやすく誘導できる案内表示が設置されているか
・エレベーターの乗降ロビーには、前面に車椅子の方が回転できるスペースが確保されているか
・直進でエレベーターに進入または退出できる設計になっているか
・エレベーターにおける間口、カゴの形状、大きさ、操作盤の位置は、高齢または障害のある患者様の利用を配慮したものになっているか
・緊急時の応答、過負荷ブザー等の音声情報については、視覚情報化する等、聴覚障害のある患者様に配慮されているか
・エスカレーターの乗降口には乗降用誘導用固定手すりを設けているか
・エスカレーターの乗降口近くの壁面または柱面等には非常停止ボタンを設けているか
・エスカレーターの乗降口部には、点状ブロックもしくは音声案内装置が設置されているか など

まとめ

ここまで、高齢または障害のある患者様に配慮したクリニックの設計について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
今回解説したのはほんの一部であり、トイレや避難設備など、身体の不自由な患者様に配慮して設計しなければいけないポイントは他にもたくさんあります。
すべてのポイントを押さえて建築するのは簡単なことではありませんが、箇所ごとに設計を進めていけば、大きな漏れが発生する心配はありません。


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