クリニックの開業医として長期間働いた後、60歳前後から医師としての働き方を変える方は非常に多いです。
また、このとき開業医に選ばれることの多いセカンドキャリアの1つに、“健康診断医”というものがあります。
今回は、健康診断医の概要や、新たな働き方としてこちらを選ぶことのメリット・デメリットを解説します。
目次
健康診断医の概要
健康診断医とは、主に健診センターに勤務し、健康診断を行う医師のことをいいます。
健診センターは、病気を未然に防いだり、早期に発見したりするための検査(健康診断)を行う施設であり、病院に併設されているものと独立しているものに大別されます。
クリニックの開業医が現役を退き、セカンドキャリアとして健康診断医を選ぶ場合、クリニックを廃業あるいは譲渡した後、健診センターに移籍するという流れになります。
健康診断医の業務内容について
健康診断医の業務内容は、先ほども触れたように健診センターで健康診断を実施することです。
健康診断では、訪れた方の年齢に応じた検査を行い、全身の健康状態をチェックします。
主な種類としては、企業で勤務する方が勤務先から案内される定期健康診断(一般健康診断)の他、學校での健康診断や歯科検診、生活習慣病の予防や早期発見のため、40~74歳の方を対象に行う特定健康診査などが挙げられます。
また、健康診断は法定検診と任意検診に分かれていて、上記のうち定期健康診断(一般健康診断)、學校での健康診断や歯科検診、特定健康診査は法定検診に該当します。
法定という文言が示す通り、法律に基づいて対象者への検診の実施が義務付けられています。
ちなみに、基本的な検査項目に加え、CTやMRI、胃カメラといった検査を行い、より詳細に健康状態をチェックする人間ドックは、個人の意思によって受診する任意検診に当たります。
健康診断医として働くことのメリット
クリニックの開業医が、セカンドキャリアとして健康診断医を選ぶことのメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。
・残業が少ない
・精神的な負担が少ない
・業務がシンプルで覚えやすい
残業が少ない
健診センターに勤務する健康診断医は、残業がほとんどありません。
ほとんどの場合、17時頃に業務が終了します。
こちらは、すべての受診者や検査内容があらかじめ決まっていることが理由です。
また、夜間勤務もないため、家族との時間を確保したり、適度に身体を休めたりしながら、自身のペースで働くことができます。
精神的な負担が少ない
健康診断医の主な業務は健康診断を実施することです。
そのため、病院やクリニックで勤務するときのような、「常に命を預かっている」という緊張感、ストレスなどから来る精神的な負担は少ないです。
もちろん、病気を見逃さないために、一定の緊張感を持って業務に取り組む必要はありますが、一刻を争う業務ではなく、周囲の医師や看護師と相談しながら対応することができます。
業務がシンプルで覚えやすい
健康診断医の業務は、医師としての経験が豊富な元開業医の方にとっては、シンプルで覚えやすいものになっています。
また、ほとんどの健診センターにおいて、研修やオリエンテーションが実施されるため、新しい働き方に不安がある方にとって、とても優しい職場環境だと言えます。
健康診断医として働くことのデメリット
セカンドキャリアとしての健康診断医にはさまざまなメリットがありますが、その一方で以下のようなデメリットもあります。
・早朝からの勤務がある
・年収があまり高くない
・刺激が少ない
早朝からの勤務がある
健康診断医は、残業がほとんどないことがメリットだと解説しましたが、その代わりに早朝から勤務が始まる場合があります。
例えば、出張型検診で遠方に出向く場合などは、早朝もしくは夜明け前に自宅を出なければいけないことも珍しくありません。
そのため、仕事の前日には、早朝勤務に備えて生活リズムを整えることも必要です。
年収があまり高くない
健康診断医は、残業や夜間勤務がほとんどない分、他の医師と比べて年収は低めです。
そのため、これまで開業医として働いてきた方にとっては、少々物足りなさを感じるかもしれません。
ただし、生活に困窮するほど収入が減少するわけではないため、開業医時代の蓄えが十分あるという場合は、それほど心配する必要はないと言えます。
刺激が少ない
健診センターでの業務は、基本的にルーチンワークの繰り返しです。
こちらを徹底することにより、安全な検査を実施することができます。
しかし、新しい技術や医療に関する知識を得る機会が少ないため、日々の刺激が足りないと感じることもあるかもしれません。
まとめ
ここまで、開業医のセカンドキャリアの1つ、健康診断医について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
開業医のセカンドキャリアには、他にも非常勤医師や産業医、介護老人保健施設で勤務する医師など、さまざまな選択肢があります。
事前にメリット・デメリットを把握し、自身の希望や性格、環境に合っていると感じるものをじっくりと選定してください。