クリニックの中には、開業医の配偶者や子ども、親戚といった親族が従業員を務め、経営しているところもあります。
では、クリニックを家族や親族で経営することには、果たしてどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
余すことなく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
クリニックを家族や親族で経営するメリット
家族や親族でクリニックを経営することには、主に以下のようなメリットがあります。
・節税効果がある
・人間関係のストレスが少ない
・資金管理を安心して任せることができる
・コミュニケーションが円滑
節税効果がある
家族、親族経営のもっとも大きなメリットといえば、やはり節税効果です。
開業医が個人事業主の場合、専従者控除制度というものが利用できます。
こちらは、事業主である開業医と生計を共にする15歳以上の家族、親族間において、年の半分以上をその事業に専念した場合に利用できる制度であり、対象者に給与を支払うことが認められているだけでなく、その金額については経費計上が可能です。
また、医療法人化しているクリニックの場合は、医療法人から支払われる理事報酬を家族に分散することができます。
開業医、従業員が生計を共にする家族の場合、世帯収入に変化はありませんが、こうすることで1人1人の課税額を少なくすることが可能です。
人間関係のストレスが少ない
開業医と従業員が家族や親族同士ではない場合、性格が合わなかったり、気を遣ったりすることがストレスに感じることもあります。
一方、クリニックを家族や親族で経営する場合、お互いの性格は熟知していますし、よほど関係性が悪くない限り、気を遣わずに診療などの業務に集中することができます。
資金管理を安心して任せることができる
こちらはクリニックに限ったことではありませんが、企業などにおいて、管理を任せていた資金を従業員に使い込まれたり、持ち逃げされたりといったケースはよくあります。
その点でいうと、関係の深い家族や親族はそういったリスクが少なく、安心して資金管理を任せることができます。
もちろん、リスクはゼロではありませんが、関係が良好であれば、それほど気にすることではありません。
コミュニケーションが円滑
開業医が他人である従業員とコミュニケーションを取る場合、夜間や休日などはメールなどで確認を取らなければいけません。
もちろん、必ずしもすぐに返信が来るとは限らず、場合によっては聞きたいことがなかなか聞き出せないということも考えられます。
一方、従業員が家族や親族の場合、一緒に住んでいればその場ですぐ話ができますし、ある程度遅い時間でも連絡しやすく、コミュニケーションは自然と円滑になります。
また、家族や親族同士であれば、互いに助け合う環境が整っているため、多少無理な依頼もしやすくなります。
クリニックを家族や親族で経営するデメリット
一方で、家族や親族でのクリニック経営には、以下のようなデメリットもあります。
・トラブルになると収拾がつきにくい
・他の従業員を雇用しづらい
・公私混同が起こりやすい
トラブルになると収拾がつきにくい
家族や親族間でトラブルが発生した場合、なかなか収拾がつかないことがあります。
お互いに意地になって無視するようなこともあれば、言い争いをすることもあり、それが患者さんの目に触れると、クリニックのイメージダウンになってしまいます。
他の従業員を雇用しづらい
開業医と従業員が家族、親族同士であるクリニックは、他の従業員を雇用しづらくなります。
その理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・家族、親族と他人の従業員を公平に扱いづらい
・他の従業員が気を遣う
・他の従業員が疎外感を覚えやすい
・ひいきから不信感や不満感が生まれる
家族、親族同士の中にポツンと入った他の従業員は、公平な扱いを受けないことに不信感や不満感を覚えたり、親族でないことに疎外感を覚えたりすることにより、居心地が悪くなり、退職してしまうリスクが高くなります。
しかし、家族や親族だけでクリニックを経営するのは簡単なことではないため、実際には従業員を雇用し、不快な思いをさせないように注意した上で経営を行うのが現実的です。
公私混同が起こりやすい
家族や親族で経営するクリニックでは、当の本人に意識がなかったとしても、公私混同が起こりやすくなります。
例えば、家族旅行の費用を経費で落としたり、勤務時間外の従業員がクリニックに遊びに来たりといったケースです。
また、これによって税務否認されたり、前述のように他の従業員に迷惑をかけてしまったりすることも考えられます。
まとめ
ここまで、クリニックを家族や親族間で経営するメリット・デメリットについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
家族、親族経営は、人間関係のストレスが少なく、信頼できる従業員とともに、スムーズな経営を実現できる可能性が高いです。
その反面、公私混同を避けることや、他の従業員への気遣いを強く意識しなければ、人的なリソース不足に陥ることも考えられます。