クリニックの事業承継におけるパターンと教育方法について


開業医のセカンドキャリアの1つに、クリニックの非常勤医師というものがあります。
具体的には、自身の開業したクリニックで事業承継を行い、そのクリニックで非常勤医師として後継者のサポートをするというものです。
今回は、非常勤医師を目指す開業医における事業承継のパターンと、後継者の教育方法について解説します。

目次

クリニックの事業承継における3つのパターン

クリニックの開業医が実施する事業承継には、以下の3つのパターンがあります。

・後継者が親族
・後継者が親族以外
・M&A

後継者が親族

親族への事業承継は、主に開業医の子どもが後継者となります。
子どもを後継者にするメリットとしては、まずクリニックの取引先、従業員、その他の関係者の理解や協力を得やすいという点が挙げられます。
開業医がしっかりと従業員や取引先と良好な関係を作っていれば、事業承継の後継者に子どもを選んでも、「院長先生の息子なら」と力を貸してくれる可能性が高くなります。
また、子どもを事業承継の後継者に選ぶ場合、早めに決定して教育に時間をかけるということもしやすいと言えます。
子どもに事業承継をする意思があるのであれば、早い内からクリニックの経営に関してのノウハウを叩き込むことができるというわけです。
一方、デメリットとしては、後継者本人が経営者としての自覚や能力に欠ける場合があるということが挙げられます。
開業医は、子どもに事業承継をするからといって甘やかさず、新たな院長先生としての意識をしっかりと植え付けた上で後継者にするべきです。

後継者が親族以外

すでにクリニックで働いている従業員や、募集した人材を後継者にするという方法です。
こちらのパターンには、クリニックの後継者としての意識が高い人物、能力が高い人物を開業医が選択できるというメリットがあります。
開業医が「この人材であれば、後継者にピッタリだ」と決めることができるため、対象になるのは元々非常に優秀な人材である可能性が高いです。
ただし、従業員や取引先の理解を得るのに時間がかかるケースもあります。
開業医と血の繋がりがない人物に経営を譲るわけですから、より他の従業員や取引先が納得するよう、立派な経営者に育て上げる必要があります。

M&A

M&Aによって事業承継の後継者(企業)を探す場合、資金力がある企業にクリニックを譲ることになるので、今後の経営が安定する可能性が高いです。
また、クリニックの事業を全て売却する場合は、売却した分の利益を得ることもできます。
自身の要望にすべて応えてくれる買い手企業を探すのは簡単なことではありませんが、もし理想の買い手が見つかれば、効率的に開業医にかかる負担を減らすことができます。

クリニックの事業承継における後継者の教育方法

M&A以外の選択肢を選ぶ場合、さっそく後継者教育の計画を立てなくてはいけません。
事業承継を実行する時期を明確にし、その時期に計画通りクリニックの事業承継ができるように、職場や現場、院外において後継者を教育する必要があります。
具体的にどのような教育方法を実践するのかについては、以下の通りです。

職場、現場で行うべき教育

まずは、クリニックにおける職場、現場で行うべき教育から見てみましょう。
後継者が決定したら、クリニックにおいて重要な業務をローテーションで経験させるところから始めます。
クリニックでは、診察や営業、在庫管理・発注などが重要な業務となります。
各業務を後継者に少しずつ経験させる事で、クリニックにおける業務のプロセスや、専門的な技術、知識を身に付けさせるための教育となります。
また、その他にも、取引先との交渉や経営に関わる意思決定を後継者に任せることで、経営者としての自覚や責任感を芽生えさせることができます。
いくらクリニックにおける業務を理解し、専門的な知識と技術が身についていたとしても、こちらの能力、意識を上手く活用しなければ、後継者は務まりません。
そして、最終的に院内で行う後継者の教育には、現開業医からの引き継ぎも含まれます。
院内で後継者にさまざまなことを経験させた後、こちらの引き継ぎのためにまた時間を設けるようにしましょう。
現開業医から後継者に引き継ぐ内容は、クリニックにおける大事な情報ばかりです。
例えば、クリニックの経営状況、今後の展望、市場や業界の動向など、後継者として知っておくべきことを現開業医から直々に伝えます。
もちろん、現開業医が持つ経営に関するノウハウ等も引き継ぐことにより、開業医が理想とする後継者を作り上げるための教育に近づきます。

院外で行うべき教育

院外で行うべき後継者の教育として有効なのは、別のクリニックに勤務させるという方法です。
こちらの方法では、別のクリニックにしかない独自の経営スキルを身に付けさせることができ、そこから新しい人脈を広げることにもつながります。
その他には、後継者の教育を支援してくれるセミナーへ参加させることも挙げられます。
院外でのセミナーは、クリニックの後継者に必要な知識、技術を短時間で習得させられることが期待できます。
また、クリニックの現場での後継者教育と並行することも可能であるため、セミナーで身に付けた知識や技術をすぐに現場で活かすこともできます。

まとめ

クリニックの事業承継における後継者は、決定するだけで満足していてはいけません。
事業承継が実行される時期から逆算して教育し、時期が来たら何の問題もなく引き継ぐための準備が重要です。
また、上手く後継者が育たないという場合や、目ぼしい後継者が見つからないという場合には、クリニックのM&Aという選択肢もある事を把握しておきましょう。


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