「せっかくクリニックを建築するのであれば、限りなく自身の理想に近いものにしたい」
そのような思いで、クリニックを建築しようとする開業医の方は多いかと思います。
また、クリニックを建築する場合、買主が設計や工事の内容のほとんどを決定することになるため、建築に関する用語は多く知っておく必要があります。
いくつか解説しましょう。
目次
アプローチ
道路、あるいは門から出入口に至るまでの通路をアプローチといいます。
アプローチ設計の計画をする際は、まずアプローチをどこに、またはどのようにして配置するのかを検討しましょう。
また、その際は駐車スペースや植栽、さらには建物の配置とあわせて計画する必要があります。
もっと言えば、各スペースを有効に使うために、道路、門から出入口までを直線で結ぶのではなく、曲線のある通路にするなど、さまざまな工夫が必要です。
そうすることで、クリニックのデザイン性もアップします。
サービスルーム
建築基準法上、居室として認められない部屋のことをサービスルームといいます。
納戸とも呼ばれます。
建築基準法では、人が長い時間過ごす部屋を居室と呼んでいて、こちらには採光、換気における最低条件が定められています。
具体的には以下のような条件です。
・採光に必要な窓などの開口部が床面積の1/7以上
・換気に必要な開口部が床面積の1/20以上
サービスルームには、上記の採光、換気環境が備わっていません。
ただし、クリニック内にサービスルームを設けることで、収納スペースとして、あるいはスタッフルームとして活用することができます。
ステップフロア
床の半階ずつずらし、少し高い位置に居室を設ける設計をステップフロアまたはスキップフロアといいます。
いわゆる中二階を造る設計です。
こちらは、クリニックの建物において、独立性を高めたり、動線を短縮したりする目的で設けられるものです。
また、法律上建物の高さを制限されている土地であっても、ステップフロアを設ければ有効面積を増やすことが可能です。
ただし、クリニックの客層や診療科目によっては、バリアフリーの観点からステップフロアが適さない可能性もあるため、注意が必要です。
デッドスペース
建物の中で、やむを得ず有効に活用できていない無駄な空間をデッドスペースといいます。
例えば、上階と下階をつなぐ階段下、家具や家電の隙間、イスの下などは、デッドスペースになりやすいといわれています。
ちなみに、階段下のデッドスペースにおける解消法としては、収納スペースとして活用するという方法が一般的です。
また、階段の形状によっては、トイレを配置するという方法も有効です。
ユーティリティー
建築用語では、家事作業の設備が集中している部屋のことをユーティリティーといいます。
具体的には、洗濯機や乾燥機、アイロンやミシンなどを置いて、主婦の家事室として利用したり、読書や家計簿をつけるのに利用したりする部屋です。
クリニックにおいては、給湯室やランドリールームといった各作業を行う部屋を、ユーティリティーとして設置することがあります。
また、ユーティリティーを設置する際にもっとも考慮しなければいけないのは、なんといっても動線です。
例えば、医師や従業員が、診察室での業務とユーティリティーでの業務を同じ時間帯にこなす場合は、診察室とユーティリティーを隣り合わせにするなど、業務のこなし方に応じて配置を検討することが大切です。
スケルトン
スケルトンとは、建築用語で内装がない状態のことを指しています。
クリニックを建築する際には、一から建物を建築するケースと、スケルトン状態の空き物件を購入し、内装を設計、工事するケースがあります。
後者の場合、工事自体の工期は一般的に1ヶ月半~2ヶ月程度であり、一から建物を検討するよりも短縮化できる可能性が高いです。
また、スケルトン物件での内装工事の基本としては、まず軽量鉄骨で天井、間仕切り壁の骨組みを造作します。
その骨組みに石膏ボードを貼ることにより、壁や天井を造っていくというイメージです。
その後は、軽量鉄骨の柱の中に電気の配線を通したり、水回り(流し台、トイレ、手洗いなど)を設置したり、換気、空調設備を取り付けたりしていきます。
もちろん、クリニックの雰囲気づくりのためには、温かみのある電球色の照明器具を用いるなど、照明計画にも工夫を凝らす必要があります。
ちなみに、クリニックは不特定多数の出入りがある施設ですので、消防・防災設備が必要です。
例としては、火災報知器やスプリンクラー、消火栓や消火器などが挙げられます。
まとめ
ここまで、今後クリニックを建築する開業医の方のために、さまざまな建築用語について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
冒頭でも少し触れましたが、理想のクリニックを建築するためには、なるべく多くの用語を知り、なるべく多くの選択肢を持っておくことが重要です。
間違っても、「自分で設計したにもかかわらず、不便なクリニックになってしまった」というような状況にはならないようにしましょう。