クリニックの建物における制限や規制について解説します


クリニックを建築する際は、必ずしも開業医が理想とするものを建てられるとは限りません。
なぜなら、建物にはさまざまな制限や規制があるからです。
つまり、自身の土地で行う建築であっても、ルールの範囲内でなければいけないということです。
ここからは、そんな制限や規制について詳しく解説していきます。

目次

斜線制限

地面から斜線を引き、その範囲内でしか建築を認めないなど、建物の各部分の高さにおける制限を斜線制限といいます。
風通し、日当たり等を確保し、建物の良好な環境を保つことを目的としています。
敷地いっぱいに建物を建築してしまうと、隣家との間隔が狭くなり、風通しの確保が難しくなります。
また、日当たりの良さに惹かれて立地を選んだにもかかわらず、隣や正面に新しいマンション等が建ってしまうと、十分な日照りが確保できないことにもなりかねません。
このような問題を未然に防ぐべく設けられているのが、斜線制限だということです。
また、斜線制限の種類は1つではありません。
細かく分けると、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の3種類があります。
道路斜線制限はどのエリアであっても適用されますが、隣地斜線制限は第一種・第二種低層住居地域、北側斜線制限は中高層住居専用地域の日影規制対象区域には適用されません。
ちなみに、斜線制限は建物が属するエリアによって受ける制限が異なりますが、2つ以上のエリアにまたがる建物の場合は、部分ごとに制限が適用されます。

絶対高さ制限

第一種・第二種低層住居専用地域において、住環境を良くすることを目的に、建物の高さを10mまたは12m以下に制限することを絶対高さ制限といいます。
先ほど、第一種・第二種低層住居地域では、隣地斜線制限が適用されないという話をしましたが、その理由は上記の制限が適用されるからです。
また、絶対高さ制限が10m以下になるのか、あるいは12m以下になるのかについては、全国的に統一されているわけではありません。
ちなみに、低層住宅に関わる良好な住居環境を害するおそれがない建物や、学校その他の建物で、建築審査会あるいは特定行政庁が認めたものに関しては、制限が緩和されることもあります。

日影規制

冬至の日(12月22日頃)を基準にして、一定時間以上の日影が生じないよう、建物の高さを制限することを日影規制といいます。
つまり、日影に入ると暗くなるため、周囲の敷地の日照を確保することを目的としているわけです。
天井を高めに設計した2階建てのクリニックを建てたい場合などは、特にこちらの規制を意識しなければいけません。
具体的には、冬至の日の太陽が真南にきた時間を12時として、午前8時~午後4時までの間、建物がどのように影を落とすかを検討し、規制をかけるかどうか判断します。
また、日影測定の際には、地面にどれだけの影を落とすかではなく、定められた一定の高さにおいて測定がされます。
こちらは、隣の建物の日当たりに及ぼす影響が焦点であり、隣の建物の1階、2階の窓の高さを基準と想定しているからです。
ちなみに、日影規制の条件は、“5-3h/4m”という風に表記されます。
“5-3h”は、冬至の午前8時~午後4時までの間に、敷地境界線から5~10m離れた範囲では5時間以内、10m以上離れたところでは3時間以内であれば、日影になっても良いことを意味しています。
そして、“4m”は「地面から高さ4mのところで計測した」という意味です。
少し難しい規制ですが、しっかり覚えておきましょう。

市街化調整区域

市街化調整区域とは、都市計画法により定められる区域区分のうち、市街化を抑制する地域のことをいいます。
市街化を目的としていないため、原則として住宅や商業施設などの建物を建てることはできません。
ただし、こちらの区域の周辺地域に、すでにある程度の住民が暮らすエリアが存在し、なおかつその住民たちにとって公益上必要な建築物であることが認められた場合は、クリニックを建築することが可能です。
ちなみに、クリニックが有床の場合、建築基準法第2条2項により、特殊建築物として扱われることになります。
こちらは、読んで字のごとく特殊な設備や構造を持った建物であり、不特定多数の人が利用します。
そのため、通常の建物より火災発生の可能性、人命に関わる大きな事故につながる可能性などが高く、それらを可能な限り防ぐために、立地条件や防火設備、構造、工事中の取り扱いまで、さまざまな義務が定められています。
よって、有床のクリニックを建築する場合、理想の土地探しには時間がかかることが予想されるため、できる限り早めに動き出すことをおすすめします。

まとめ

ここまで、クリニックの建物における制限や規制について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
建物の制限や規制を把握していないと、土地を選んだ後に後悔する可能性もあります。
なぜなら、ただでさえ建築基準法等の制限を受ける建築において、さらにしがらみが多くなるからです。
もちろん、明確な目的があって制限・規制は定められていますので致し方ありませんが、できるだけ想定外の出来事は避けなければいけません。


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