日本医師会の“医師賠償責任保険”について解説します


医師会に加入する開業医は、毎年年会費を支払う必要があります。
また、こちらの年会費には、日本医師会の“医師賠償責任保険”の保険料が含まれているため、医師会に加入した時点で保険にも加入できます。
今回は、こちらの医師賠償責任保険における概要や対象の事故、メリットなどについて解説したいと思います。

目次

医師賠償責任保険の概要

医師賠償責任保険は、日本医師会が運営する保険であり、開業医が医療事故に備えるために加入するものです。
具体的には、クリニックにおいて医療事故が発生した場合に、賠償と紛争の解決を目的とし、保険会社、日本医師会、都道府県医師会の3者が手厚くサポートしてくれます。
クリニックにおいて、医療事故が発生しないに越したことはありませんが、万が一何かあったときために対策を取っておくのと、一切対策を取っていないのとでは、その後の動向に大きな違いが出てきます。
つまり、医師賠償責任保険に加入できるということは、開業医が医師会に加入することによる1つのメリットだということです。

医師賠償責任保険の対象になる事故

医師賠償責任保険は、医師会に加入した開業医のみが利用できる手厚い保険ですが、すべての医療事故が対象になるわけではありません。
クリニックの医療行為によって生じた身体の障害につき、損害賠償を請求され、その請求額が100万円を超えるケースのみが保険の対象です。
また、年間総支払限度額については、1つの事故につき1億円であり、保険期間中の支払限度額は3億円となっています。
ちなみに、開業医であれば、自院における非会員の勤務医による医療事故対策として、任意加入の日医医賠責特約保険を利用することも可能です。
こちらは、1つの事故につき最大3億円、保険期間中の支払限度額9億円までを受け取ることができる特約であり、通常の医師賠償責任保険よりもさらに高額な賠償事例に備えることができます。

医師賠償責任保険のメリット

日本医師会の医師賠償責任保険におけるメリットとしては、まず専門家による調査、審査が行われているという点が挙げられます。
医師賠償責任保険には、各科の専門の医師、医療の知識を持った弁護士や保険者などで構成される、中立的な調査・審査機関が存在します。
専門的な観点から、発生した医療事故1つ1つを丁寧に調査し、賠償責任の有無や額を判断するため、こちらは開業医の安心につながります。
また、概要でも少し触れたように、医師賠償責任保険では、開業医ができるだけ矢面に立つことなく紛争を解決できるよう、交渉や訴訟には医師会が全面にサポートする仕組みが構築されています。
民間の賠償責任保険では、弁護士に委嘱する場合であっても、開業医が自ら弁護士の手配をしなければいけませんが、医師賠償責任保険は手配からその費用の負担まで、当事者に代わって行ってくれます。
もちろん、解決までにかかった争訟費用に関しても、医師賠償責任保険では補償されます。
ちなみに、医師賠償責任保険は会員個人を対象としているため、1人の開業医が複数の医療機関(クリニックの分院など)で診療を行う場合であっても、1事故1億円まで補償の対象となります。

医師賠償責任保険と民間保険の比較

日本医師会の医師賠償責任保険と、民間の賠償責任保険には、以下のような違いがあります。

日本医師会医師賠償責任保険 民間の賠償責任保険
概要 判定機関が医師の責任を構成に判断し、開業医が高額の賠償にも対応できるよう、経済的保証をする ・弁護士がつくことはあるものの、最終的な判断は保険会社が行う
・医学知識に基づく積極的なサポートがあるわけではない
医療紛争の検証 審査会が判断 保険会社が判断
紛争処理の方法 医師会が弁護士の手配を代行 開業医本人もしくは保険会社が弁護士を手配
加入の手続き 医師会の会員であれば、医師賠償責任保険そのものの手続きは不要 開業医自らが保険会社に申し込む
会員の退会および死亡後の特例措置 医師会を退会後、あるいは死亡後でもサポートを受けることができる(適用期間10年) 死亡後のサポートのためには別途保険契約を結ぶ必要がある(年17,000円程度、適用期間5年)
保険料 医師会の会費に含まれる保険料相当額(年間66,000円) 基本保険料(団体割引、年間91,500円程度)

上記のように比較すると、日本医師会の医師賠償責任保険がどれほど手厚い保険であるかがよくわかります。
専門的な知識を駆使して行われる調査や審査はもちろん、開業医の死亡後もそのままサポートを受け続けられる点や、加入手続きがこれといって必要ない点、保険料の割安感など、民間の賠償責任保険よりも魅力的な点は多々あります。

まとめ

ここまで、日本医師会の医師賠償責任保険における詳細について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
医師賠償責任保険は、医師会に加入した開業医のみが利用できるものであり、クリニックにとっての強大なリスクヘッジとなるものです。
また、医師会への加入には他にもさまざまなメリットがあるため、未加入の開業医の方は内容を把握しておくべきです。


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