クリニックのWeb・広告戦略

広告も戦略が重要

新たにクリニックを開業したとき、これまで勤務していた病院の近隣エリアでの開業ならば、勤務医時代に信頼関係を築いた患者が全員ついてきてくれるかもしれません。
ところが開業予定先が別のエリアならば、できるだけ広く認知してもらい、集患につなげなければならないでしょう。
よく知らない医師・クリニックに足を運ぼうと思う患者は、ほとんどいません。不安や疑問があるかぎりは来院してもらえないと考えるべきです。その心理的な障壁を取っ払うために、重要になってくるのが広告です。

開業するにあたって、周辺の調査・分析は済んでいると思いますので、想定しているターゲットに届くような広告戦略をとっていきましょう。想定ターゲットがより多くリーチできる媒体を選ぶことも、重要な戦略のひとつといえます。

広告の種類について

普段、皆さまが目にしているとおり、世の中にはさまざまな広告であふれています。
チラシ、インターネット広告、ホームページ、駅や電柱の看板、リーフレット、求人誌やミニコミ誌・新聞広告……。

闇雲にたくさんの媒体に広告を出すのは、コストもかかり得策ではありません。ターゲットの目につきやすく、費用対効果の大きい媒体を活用していきましょう。
たとえば、30万円かけて300万円の売上が見込めれば、十分効果はあったといえます。しかし、いくらコストが安く抑えられてもパフォーマンスが0円なら、まったく意味がありません。目先の数字にとらわれないことが重要です。

とはいえ、開業時には多額の資金が必要なもの。広告にお金をかけすぎて経営が悪化するようでは、元も子もありません。したがって、費用対効果の高い媒体をしっかりと見極めていかなければならないのです。

Web広告が最もコストパフォーマンスがよい?

結論から言ってしまえば、費用対効果の高い媒体はWebを活用した広告であり、ホームページです。
これまで、クリニックに来院するきっかけはクチコミによるものが多数でしたが、近年はそのクチコミにも変化が訪れています。
それは、クチコミでさえもWeb上で行われているということです。

今の時代、何をするにもどこへ行くにもWebで検索することが当たり前になりました。
「地域にどんなクリニックがあるかを調べる」「クリニックへのアクセス方法を調べる」という目的の方もいらっしゃるでしょうが、その多くはクリニックの情報を求めています。つまり、クリニック側が積極的にWebを活用し、情報を発信してコンテンツを充実させていけば、集患につながる可能性は高いといえます。
眼科などの「高齢患者が多い診療科目」であっても、代わりに子どもや家族がWebを調べて、患者本人の来院に繋がるケースも少なくありません。たとえターゲットが高齢患者だとしても、Web広告は、全科目に密接に関係しています。

また、折り込みチラシや一般的な広告出稿は、量を増やせば増やしただけ、コストが発生しますが、Webにはそれがありません。いくらクリニックのホームページを更新して、ブログ投稿を続けても、決まった人件費以外はかからないのです。
多くの人に見てもらいやすく、低コストで済む。Web媒体が最も費用対効果が高い理由です。

医療広告には制約がある

さて、Webを活用した広告活動を行う際に注意すべき点があります。
他の媒体と同様に医療法(昭和23年 第205号)による「医療広告ガイドライン」の規制を受けるということです。
なお、「誘因性」「特定性」「認知性」のすべての要件を満たす場合に広告と判断されます。
誘因性のない論文や新聞記事、認知性のない院内パンフレットなどは広告に該当しません。
平成25年9月にはガイドラインの改正が行われているため、確認が必要です。

禁止されている広告表現

  1. 広告してはいけない事項の記載
    医療法で広告できるとうたわれていない事項については、記載できません。たとえば手術前後の治療効果などは禁止されています。
  2. 著名人が患者である旨の記載
    「あの○○さんも来院!」のように、著名人が来院していることは優良誤認を招くため、禁止されています。
  3. 他の医療機関と比較し優良と記載
    一般的な広告でよくある「○○ランキング1位」「○○売上ナンバー1」という文言は、比較広告として禁止されています。
  4. 客観的事実として証明できない内容の記載
    患者の体験談や医療従事者の証言などが該当します。これらは主観であり、客観的事実ではないからです。

禁止されている広告表現

  1. 費用を強調した記載
    他のクリニックと比較して、コストメリットが売りだとしても、費用を強調した広告は品位を損ねるとして禁止されています。
  2. 虚偽の内容の記載
    「100%成功!」「絶対安全!」など医学的に存在し得ない内容の広告は、虚偽広告として扱われます。広告表現の禁止だけではなく、6ヶ月以下の懲役または30万以下の罰金が科せられる対象にすらなりえます。
    また、虚偽でないとしても誤認を招くような誇大広告も禁止です。
  3. 薬事法に抵触する内容の記載
    未承認の医薬品に関わる内容のものは、たとえ商品そのものの告知ではない医療の広告だとしても、掲載できません。
  4. 公序良俗に反する内容の記載
    わいせつ表現、差別表現なども禁止されています。