看護師としてキャリアアップするにあたり、管理職を目指す道があります。管理職になるとどのような役割が求められるようになるのでしょうか。
今回は、看護師の主な役職が担う役割について解説します。また、平均年齢や年収も紹介しているので、キャリアプランの参考にしてみてください。
看護師の主な役職とその役割
看護師の役職は、「看護主任」「看護師長」「看護部長」の3つがあります。医療機関の規模が大きくなるほど、多くの看護師をまとめるために管理職のポジションが設けられます。
1.看護主任
看護主任は一般の看護師の1段階上のポジションで、看護師長の補佐や現場看護師をサポートする立場の役職です。主な業務内容は以下のようなものが挙げられます。
【包括的な看護業務の管理】
看護計画や目標設定に沿って看護業務を管理します。シフト調整や病床管理などに携わることもあります。
【看護師の指導や相談対応業務】
看護師の行動援助やフォローなどの人的マネジメントです。現場で直接指導に携わります。
【看護師の職場環境の整備】
病棟内の問題改善を行い、看護師が働きやすい環境づくりや安全な看護提供を目指します。
看護主任の役割は看護師と看護師長の橋渡しで、現場で看護師の指導や相談に携わりながら、管理職としてマネジメントの役割も果たします。
2.看護師長
看護師長は看護主任と看護部長の間に立つ中間管理職で、担当病棟や部門全体の看護師スタッフの統括を行います。主な業務内容や役割は、以下のように看護主任よりもさらにマネジメント要素が強くなるものが多いです。
【病棟内全体の看護の質の向上】
看護研究の推進や看護師の支援をし、看護の質の向上を目指します。
【チーム医療の推進】
院内の他部門との調整や看護師のとりまとめなどを行います。
【病棟のマネジメント】
入院調整や患者様同士や医師とのトラブル対応なども、部門の責任者として看護師長が担います。
看護師長に求められる役割は、部署内のマネジメントだけではありません。院内の他部署との連携を取り、院内全体の運営にも関わります。加えて、部署の看護業務において決定権も持ちます。
3.看護部長
看護部長は看護師のトップであり、看護師と経営陣の橋渡しの役割を担います。通常、病院に1人のみ配置される役職です。 看護部長になると、現場での看護業務はほとんど行いません。業務はマネジメントが主で、以下のような業務に携わります。
【病院全体に関わる運営・管理】
経営責任者との折衝や他の医療従事者との関係調整に入り、看護業務の円滑な運営を目指します。大病院では、看護部長が副院長を兼任するケースも多いです。また、経営陣の補佐など、病院運営にも参画します。
【看護部のマネジメント】
看護師の採用や人事に関わり、研修や教育計画の作成や看護師長への計画指示なども行います。
看護師の役割に就くために必要なこと
看護師が役職につくには、看護師として一定の経験年数が必要です。また、知識やマネジメント能力なども必要になるため、病院によっては管理者になるために資格が求められる場合もあります。
勤務経験年数を重ねる
管理職になるには、一般的に以下の実務経験が必要です。
・看護主任:看護師として10年以上の実務経験
・看護師長:看護師として15年以上、看護主任としての実務経験
・看護部長:看護師長として10年以上の実務経験
まずは看護主任となり、看護師長、看護部長としてキャリアアップしていく必要があります。
必要な資格を取得する
病院によっては、看護師長以上の管理職になるにあたり日本看護協会が認定する「認定看護管理者」の資格が必須となります。
認定管理看護者の資格を取得するには、5年以上の実務経験および3年以上の看護管理経験を積み、以下の要件を満たし、認定審査に合格しなければなりません。
・認定看護管理者教育課程(サードレベル)を修了
・看護管理に関する領域で修士以上の学位を取得
看護師長候補者に、まず管理者教育を受けさせる病院も多く見られます。認定看護管理者教育課程は3レベルがあるので、将来的に管理職を目指しているなら、早めに資格取得に取り組むのも良いでしょう。なお、認定看護管理者の資格は取得後5年ごとに更新が必要です。
一定以上の管理職については、このほかにも内規で要件が設定されている病院もあります。管理職を目指したいなら、職場の規定についても確認しておきましょう。
看護師の役職別の平均年齢
看護師が役職につくには実務年数が必要とされており、役職者になれる年齢はおおよそ以下のとおりです。
・看護主任:30歳前後
・看護師長:40歳前後
・看護部長:50代以上
病院の規模によってはこれよりも早く主任や師長になれる可能性もありますが、基本的には経験ベースでの昇進となります。
看護師の役職別の給料は?
役職につくにあたり、給与がどうなるのか気になる看護師の方もいるでしょう。
看護師は役職につくと、役職手当がつくようになります。また、役職につくためには勤務年数を重ねているため、上位の役職になるほど基本給は高くなることが多いです。
日本看護協会が公表している「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」を参考に、看護師の役職別の年収をまとめました。
看護師の役職の年収
看護師の役職別の年収の目安は、以下のとおりです。
役職 | 基本給 | 年収 |
看護主任 | 32万7,143円 | 500万円前後 |
看護師長 | 37万949円 | 550万円前後 |
看護部長 | 42万7,573円 | 600~650万円前後 |
役職が上がるほど、基本給は上昇します。
ただし、役職につくにあたり経験年数が求められるため、年数による昇給も含まれる金額となる点に留意が必要です。また、役職が上がるにつれ時間外手当の発生する機会が少なくなるため、想定ほど大きく給与が増加しないケースもあります。
看護師の役職手当
看護師の役職手当の目安は以下のとおりです。
役職 | 役職手当 |
看護主任 | 1万円前後 |
看護師長 | 2~5万円前後 |
看護部長 | 8万円前後 |
役職手当は一律定額制を採用している病院が多くなっていますが、等級や基本給に比例した額の支給や、手当が設定されていない病院もあります。
出典:「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」(公益社団法人 日本看護協会)
看護師の管理職に向いている人・向いていない人
看護師が管理職につくには、看護能力だけでなくさまざまな能力が求められます。管理職に向いている人、向いていない人の特徴を紹介します。
向いている人
以下のような人は、管理職に向いています。
・高いコミュニケーション能力がある人
・リーダーシップが取れる人
・マネジメント力がある人
・身体的・精神的に強い人
・忍耐力がある人
・問題解決能力がある人
管理職に求められるのは、現場を束ねる力です。コミュニケーション力やリーダーシップ、マネジメント力は不可欠といえます。
また、ハードな仕事のため、心身ともに強く忍耐力があることも条件です。責任者として問題に対処していかなければならないので、冷静な判断力や問題解決能力も必要になります。
向いていない人
逆に、管理職に向いていない人は、次のとおりです。
・ストレス耐性が弱い人
・心身ともに不健康な人
・協調性がなく自己中心的な人
ストレス耐性が弱い人や心身ともに不健康な人は、責任のある立場で多くの看護師をまとめていくのは難しいでしょう。また、協調性がなく自己中心的な人はほかの看護師や医療従事者からの信頼を獲得できない可能性があります。
まとめ
看護師には、「看護主任」「看護師長」「看護部長」の役職があり、実務経験を積みながらステップアップが可能です。役職が上がるにつれて責任が大きくなり、求められるスキルも高くなります。病院によっては資格の取得も必要です。
役職につけば任される範囲が広くなるものの、それだけやりがいも大きくなります。看護師としてさらに活躍したいのであれば、管理職を目指してみましょう。
看護師のキャリアアップについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「看護師のキャリアアップには何が必要?実現に役立つポイントを紹介」