看護師の失業保険を徹底解説|受給条件や金額、手続きの流れと注意点

看護師で転職したい方にとって、ネックになるのが収入面の心配ではないでしょうか。そんな方にお伝えしたいのが、次の仕事が見つかるまで生活をサポートしてくれる失業保険です。

今回は失業保険の仕組みや受給条件、手続きの流れについて解説します。活用できる制度はしっかり利用し、退職後の収入面での不安を取り除きましょう。

失業保険とは?

雇用保険の被保険者が退職すると、次の仕事に就くまでの間、失業保険の給付金を受け取れます。給付金で就職活動中の生活を安定させ、次の雇用へつなげやすくすることが目的です。

失業を理由に給付されるのは「求職者給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の4つです。

一般的に失業保険というと、求職者給付の「基本手当」のことを指しています。

失業保険の受給条件

失業保険は失業中の生活を支える心強い制度ですが、支給の対象となるには次の条件を満たす必要があります。

条件1.働ける状態で失業していること

条件のひとつが、再就職しようとする積極的な意思や能力があるにもかかわらず、失業している状態にあることです。

次に当てはまる場合は給付を受けられません。

・離職した時点で次の就職先が決まっている
・病気やけが、妊娠、出産、育児で働けない
・休養する予定にある

しかし、病気やけが、妊娠、出産、育児によって働けない場合、受給期間は最大3年間まで延長できます。そのため、退職直後に受給条件を満たしていなくても、働けるようになってから手続きする方法もあります。

条件2. 雇用保険の加入期間が12ヶ月以上

もうひとつの条件が、離職の日以前2年間に、雇用保険の加入期間が通算12ヶ月以上あることです。

ただし閉院など病院の都合によって離職した場合は「特定受給資格者」や「特定理由離職者」となり、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算6ヶ月以上あれば受給可能となります。

看護師の失業保険はいくらもらえる?

失業保険の総支給額は「基本手当日額」×「所定給付日数」で求められます。それぞれどのように決定するのか詳しく見てみましょう。

失業保険の給付金額

失業保険の1日あたりの受給金額のことを「基本手当日額」といい、離職前の給与額や年齢をもとに計算されます。

基本手当日額は、賃金日額(離職日直前6ヶ月間の給与の合計を180で割った金額)の50~80%です。なお、60~64歳については45~80%です。賃金の低い方ほど高い率で支給を受けられます。

また、年齢ごとに定められた上限額や下限額が設けられています。

<年齢区分による基本手当日額の上限・下限額>

離職時の年齢 基本手当日額の上限額 基本手当日額の下限額
~29歳 6,835円 2,125円
30~44歳 7,595円
45~59歳 8,355円
60~64歳 7,177円

失業保険の給付日数

失業保険の給付日数は、離職時の年齢、離職の理由、雇用保険の加入期間などで90日~360日に分かれます。給付日数は次のとおりです。

<一般の離職者(自己都合・定年退職など)>

雇用保険の加入期間
10年未満 10~20年未満 20年以上
離職時の年齢 全年齢 90日 120日 150日

 

<障害者などの就職困難者>

雇用保険の加入期間
1年未満 1~5年未満 5年~10年未満 10年~20年未満 20年以上
離職時の年齢 45歳未満 150日 300日
45~65歳未満 360日

 

<病院都合による退職者などの特定受給資格者>

雇用保険の加入期間
1年未満 1~5年未満 5年~10年未満 10年~20年未満 20年以上
離職時の年齢 30歳未満 90日 90日 120日 180日
30~35歳未満 120日 180日 210日 240日
35~45歳未満 150日 180日 240日 270日
45~60歳未満 180日 240日 270日 330日
60~65歳未満 150日 180日 210日 240日

なお、契約社員の看護師として働いていて、契約更新を望んでいるにもかかわらず病院側から合意を得られず退職となった場合は、受給資格が2009年3月31日~2025年3月31日にある方に限り、給付日数が特定受給資格者と同じとなります。

失業保険を受給するための流れ

それでは、失業保険を受給するための流れについて4つのステップで解説します。

STEP1:離職票や必要書類の準備をする

まずは退職した職場から届く『離職票』を受け取ります。一般的に離職票は約2週間で送られてくるので、そのほかの書類と合わせて準備しておきましょう。

<失業保険の必要書類>

・雇用保険被保険者離職票
・マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票など)
・身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証など)
・顔写真2枚(3×2.5㎝)
・印鑑
・通帳もしくはキャッシュカード

STEP2:ハローワークで受給申し込みを行う

必要な書類が揃ったら、ハローワークに持参して受給の申し込みを行います。受給資格があると判断された場合、受給説明会の日程を案内されますので必ず出席してください。

案内を受ける方には「雇用保険受給資格者のしおり」が渡されます。

STEP3:受給説明会に参加する

待機期間(受給資格決定日から通算して7日間)経過後に、指定された日時の受給説明会に参加しましょう。「雇用保険受給資格者のしおり」と筆記用具などを持参してください。

説明会が終わると、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡されて、初回の失業認定日が案内されます。

STEP4:失業認定日にハローワークで求職活動の報告を行う

失業認定日は失業状態にあるか、求職活動を行っているかなどを確認する日のことです。

失業保険の対象を継続するには、原則として4週間に1回、定められた失業認定日の間に2回以上の求職活動の実績が必要です(自己都合の離職は、待機期間終了から2回目の失業認定日までに3回以上の求職活動が必要)。

なお、求職活動の実績としては、以下の活動が当てはまります。

・求人へ応募する
・ハローワークや転職エージェントで相談や紹介を受ける

失業保険が振り込まれる時期は離職理由によって異なりますが、自己都合での離職の場合、2回目の失業認定を受けたあとになります。その後は支給が終了するまで「失業認定」と「支給」を繰り返しながら求職活動をすることになるでしょう。

看護師が失業保険を受給する際の注意点

失業保険を申請する方のなかには、転職経験が少ない方もいるのではないでしょうか。これから失業保険を受給したい方が気を付けたほうがよい注意点や、知っておきたいことを紹介します。

待機期間中はアルバイトをしてはいけない

失業保険の申し込み後7日間の待機期間中にアルバイトをしてしまうと、待機期間が延長となってしまいます。この期間のアルバイトは避けましょう。

しかし、自己都合による離職者の場合、待機期間終了後から2ヶ月間は「給付制限期間」として給付が受けられません。無収入の期間が生じてしまうことで生活が苦しくなる状況を防ぐため、給付制限期間や失業保険給付中のアルバイトは認められています。

ただし、働いた日や時間、得た収入などは不正受給とみなされないように正確な申告が必要です。

求職活動状況や就労状況は正確に申告する

求職活動状況は正直に申告しないと不正受給とみなされるケースがあります。また、アルバイトの日数や収入額によって受給不可となる場合があるので、次にあげる条件に該当しないよう注意しましょう。

<受給不可になるケース>
・雇用保険の対象になる働き方をする(31日以上の雇用が見込まれている、1週間の所定労働時間が20時間以上など)
・アルバイト代が1日の受給額の80%以上となる

<受給が先送りされるケース>
・1日の労働時間が4時間以上となる

注意点として、看護師のアルバイトをする場合、受給額の80%以上を超えてしまうおそれがあるため、アルバイト先には注意しましょう。

また、先送りにより離職日から1年を超えてしまうと、受給不可となります。

早めに再就職先が決まっても損ではない

失業保険は就職が決まると給付が終わりますが、早めに再就職しても損をするわけではありません。条件を満たしていれば「再就職手当」がもらえるからです。

再就職手当の金額は、失業手当の給付日数がどのくらい残っているかで異なります。

・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上
→所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額

・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上
→所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額

再就職手当は、早めに再就職すればより多くの給付額がもらえます。失業保険を最後まで受給するよりも、再就職手当と再就職先からの賃金があれば、月々の収入が早めに安定する可能性があります。自分の希望条件に合う求人があったら、積極的に転職活動を行いましょう。

看護師が転職活動に向けてやるべきことはこちらの記事で紹介しています。
看護師が転職する方法は?5つの手順や求人の探し方を徹底解説

まとめ

雇用保険に加入している方は離職時に失業保険をもらえます。受給までの流れや給付金額を知り、転職活動中の生活についてイメージしておくと安心です。

アルバイトによる減額や支給停止に気を付けながら、納得して働ける再就職先を見つけるまでじっくりと転職活動を行いましょう。