看護師が残業を減らすには?転職するならどこ?

看護師は「残業がキツイ」と感じる方は多いのではないでしょうか。特に、病院で勤務している場合は、残業が当たり前の現状に不満を持たれているかもしれません。

そこで今回は、日本における看護師の勤務状況の実態を解説し、残業の減らし方をご紹介します。また、残業による心身への影響や、残業が少ないおすすめの転職先もお伝えしますので、参考にしてみてください。

看護師の半数近くが毎日残業している

日本医労連・全大教・自治労連の「2022年看護職員の労働実態調査」により、看護師の労働の状況が示されています。まずは、現状を把握しましょう。

看護師の平均的な残業時間

看護師の平均的な残業時間を勤務時間帯別にみてみましょう。

【勤務時間帯別の看護師の平均的な残業時間】

勤務時間帯 始業前労働(分) 就業時間後労働(分)
日勤 22 46
準夜勤 22 23
深夜勤 19 26
2交代勤務 24 30

参照:「2022 年看護職員の労働実態調査」(日本医療労働組合連合会・全国大学高専教職員組合・日本自治体労働組合総連合)

表をみると、本来は時間外勤務が発生しないであろう交代勤務であっても、シフト上の労働時間よりも20~30分ほど前には就労している様子が伺えます。加えて、勤務時間を過ぎても20~50分ほど残業しているケースが多いようです。

また、時間外労働により、次回までの勤務間隔が短くなり、十分に休息がとれない状態で、つぎの勤務時間を迎えるシフトも多くみられます。

サービス残業をしている看護師は全体の70%

残業が多い看護職ですが、シフトに規定された時間以外の労働については、賃金をもらっていないケース(サービス残業)が全体の70%にもおよんでいます。

1ヶ月のサービス残業時間が「10 時間以上」の看護師の割合は 14.5%おり、フルタイム(8時間)の1日分を超える労働に対して、賃金が払われていません。

本調査で「サービス残業がある」と答えた2万1,649人の不払い労働時間は15万6,937時間(※中間値)となり、時間単価を2,000 円(割り増し分含む)として合計を金額に換算すると、約3億2,826万円にのぼると試算されています。

なお、サービス残業のおもな業務は「記録」「患者対応」「情報収集」が多くみられました。

看護師の過労死ラインは「月60時間以上」

さまざまな業務をこなす看護師は、1ヶ月の時間外労働が「月60時間以上」で過労死の危険性があるラインとされています。

人材不足が叫ばれている日本の医療現場では、過労死ラインを超える時間外労働(サービス残業を含む)をしている看護師が0.7%存在するのです。

また、「月20時間以上」の残業をしている看護師は、高度急性期医療を担っている勤務先で多くみられます。

有給を10日以上取得しているのは全体の50.8%

「年次有給休暇(有給)」の取得状況は、2人に1人が年間10日以上取得できています。しかし、勤続6年半を超えて有給が20日以上発生しているにもかかわらず、20日以上取得している人は、6.4%だけです。

また、20代の若手看護師は、30代以上の看護師よりも有給休暇の取得率が少ない傾向があります。

看護師が残業を減らすには病院側の協力が必要

病院において看護師の残業は、当たり前に行われているのが実態です。人材不足が叫ばれる看護師の残業を減らして、根本的に労働環境を整えていくには、以下の項目に対する病院側の協力が求められます。

・看護職員・看護補助者・夜勤看護師の増員
・健康相談やメンタルヘルスに関する相談窓口の設置
・負担の大きいシフトの組み合わせ(2連続の深夜勤+2連続の準夜勤)では、つぎの勤務までに十分な休息時間(インターバル)を確保し、疲れを回復できるよう工夫すること
・他の看護師のシフトも十分な休息時間を確保するように考慮すること

看護師長などの上司に相談して、業務や労働環境そのものの見直しをしてもらうのが根本的な解決方法です。

残業でストレスが多いなら転職を検討してみては

残業によるストレスは、心身に悪影響を与えます。職場に相談しても、理解が得られない場合は、健康のためにも、残業の少ない職場への転職を検討するのがおすすめです。

残業時間が多い看護師ほど健康の不調を感じている

看護師の2人に1人が「腰痛」や「全身のだるさ」といった身体的な不調を感じています。また、残業時間が増えるほど「憂うつな気分」や「イライラ」といった精神的ストレスが強くなるようです。

休憩を取れない職場は心身を壊す可能性も

残業に限らず、休憩時間がとれていない場合も「全身のだるさ」や「イライラ」が増える傾向がみられました。

休憩時間がとれないほど忙しい現場で、無理をして働くと、心身の健康を害するリスクが高くなります。

自分の健康を守るためにも、残業の少ない職場への転職を視野に入れてみると明るい道が開けるかもしれません。

残業が少ない転職先とは

一般的に残業が少ないとされる看護師の転職先をご紹介します。

美容クリニック

美容クリニックは予約診療のみなので、残業が発生しにくい職場です。夜勤がなく、勤務時間も10~11時スタートのクリニックが多いため、生活リズムも整いやすいでしょう。

ただし美容外科の場合は、患者様の急変により急な残業が発生することがまれにあります。

美容クリニックへの転職にご興味のある方は美容看護師(ナース)専門の転職サイト「ビナラボ」にご相談ください。希望に合った働き方ができる求人のご紹介から面接のサポートまで、希望のキャリアを実現するためのご支援をさせていただきます。

介護施設

介護施設のなかでも、特に訪問入浴やデイサービスは残業が少ない傾向があります。とはいえ、介護対象者の急な体調不良への対応で残業が発生するケースはあると心得ましょう。

透析施設

透析は、1クールのスタート時間と終了時間が決まっているため、看護師の残業が少ない場合が多いとされます。勤務スタイルは、早出・日勤・遅出の時間差で配置されている場合が多く、働きやすい環境から看護師が不足するケースは少ないです。

企業の看護師(産業保健師)

大企業の場合は、産業医が常駐している健康管理室や医務室といった医療施設が常設されているケースがあります。 企業で働く看護師や産業保健師は、会社員の健康管理をするのが仕事です。おもに、健康診断の実施・医務室の対応・生活習慣の改善指導などの業務を担っています。

また、治験コーディネーターや医療アドバイスを行うコールセンター勤務といった企業で働く道もあるので、さまざまな求人をチェックしてみてはいかがでしょうか。

療養型の病棟

リハビリテーションや慢性期といった療養型の病棟は、療養を目的とした患者様が入院しています。そのため、イレギュラーな対応や残業が少ないのが特徴です。また、治療目的ではないので複雑な看護業務も多くありません。

一方で、急性期病棟といった効率的に病床を運用するための調整や管理(ベッドコントロール)が積極的にされている職場では、患者様の回転数が多くなるため、残業が多い傾向があります。

まとめ

看護師の業務で過酷さを感じるのは、残業が多いほかにも「夜勤がきつい」「人の死に関わるのが辛い」といった側面があります。ストレスを抱えて働き続けるのは、心身を疲弊させていくので、よりよい環境を求めて、アクションを起こすのがおすすめです。

残業が少ない職場をはじめ、自分に合った条件の職場で看護師の資格を活かす選択もあるので、いろいろな求人をみてみてはいかがでしょうか。