残業代が出ない!看護師にサービス残業が多い理由と残業代の請求方法

緊急対応などでサービス残業が多く、悩んでいる方もいるでしょう。看護師の仕事で残業代が出ないことは普通なのでしょうか。この記事では、看護師の仕事でサービス残業になりやすいケースや残業代が出ないときの対処法を解説します。

看護師の残業代が出ないのは労働基準法に違反する!

労働者の労働時間は、労働基準法に規定されている事項です。また、厚生労働省のガイドラインによると、「労働者が使用者(会社など)の指揮命令下に置かれている」時間を労働時間と規定しています。指揮命令下に置かれる時間は業務に従事する時間だけではありません。業務上参加義務がある研修や教育訓練などの時間も含まれます。

出典:「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)

そして、法定労働時間は、指揮命令下に置かれる時間も含め、原則1日8時間、週40時間です。使用者は法定労働時間を超えて労働者を働かせた場合、残業代を支払わなければなりません。支払わないときは、労働基準法第119条において、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処されます。

出典:「労働基準法」(e-Gov)

残業代が出ない!看護師業務がサービス残業になる理由

ここでは、看護師業務がサービス残業になる3つの主な原因を取り上げます。

緊急対応が多い

病棟によっては、緊急の入院患者の受け入れやナースコールなどの緊急対応が多い場合があります。このような緊急対応は短時間で済むことが多いものの、終業時間に関わらず発生します。また、患者様やご家族からの相談なども多く、サービス残業になることがあるのです。

記録や確認業務が多い

看護師は、看護業務だけでなく、看護記録も記入しなくてはなりません。看護記録には、看護の内容や経過、看護計画など、事実に基づいて記入していく必要があるため、まとめるのに時間がかかります。

また、看護記録は定時終了後に書くのが当たり前となっているような職場も多いです。看護師の業務は看護記録以外にもあり、業務量も多いため、やむを得ないと考えてしまいやすい環境にあります。

看護師は、仕事開始前の確認作業も多いです。スムーズに仕事を進めるためにも必要な作業ですが、自主的なものだからという理由で残業にならないと認識される傾向にあります。

残業申請がしづらい風土がある

厚生労働省のガイドラインに規定された労働時間から考えると、本来は、カルテの整理や記録、勉強会も業務に含まれるはずです。しかし、実態は、残業ではなく自主的にやるのが普通だという風潮もあります。

また、患者対応や手術延長などの緊急対応は、残業代を請求しづらいと感じる看護師も多いようです。

しかし、残業代が請求できる権利があることに変わりありません。時間外にやるべき仕事と残業代の請求は切り分けて考えるべきでしょう。

看護師は知っておこう!残業代の計算方法

看護師がサービス残業になりやすい事情について説明しました。中には本来支払われるべき残業代が支払われていないこともあるでしょう。残業代が正しく支払われているか確認しておくことも大事です。

本来支払われるべき残業代を計算するためには、まず、平均時給を算出する必要があります。平均時給の算定式は次のとおりです。

平均時給=基本給÷法定労働時間
※法定労働時間は1日8時間、1週間に40時間なので、4週で160時間

残業分には割増賃金率が加算されますので、下の割増賃金率に平均時給をかけて残業代を計算します。

・時間外労働の割増賃金率:1.25倍
・22時から翌5時までの深夜労働の割増賃金率:1.25倍
・時間外労働かつ深夜労働の割増賃金率:1.5倍
・休日労働の割増賃金率:1.35倍

実際に平均時給×割増賃金率をして、正しく残業代が支払われているか計算してみましょう。

看護師の残業代が出ない!請求方法の流れを解説

サービス残業代が出ない場合、または残業代が正しく支払われていない場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。残業代を請求するための流れを説明します。

1.証拠を集める

残業代を請求するにしても証拠がないことには請求ができません。就業規則や雇用契約書をはじめ、タイムカード、シフト表、カルテ、詳細なメモや日記など、残業を証明できる証拠を集めておきましょう。

また、証拠になる書類はできるだけ複数集めておいた方が良いです。その分、証拠能力も高くなります。職場を退職している場合は、元同僚に協力してもらうと良いでしょう。

2.任意の支払い請求を行う

残業の証拠が揃ったら、病院に直接請求を行います。しかし、サービス残業などが常態化している状況で、すぐに認めてくれる可能性は低いです。皆同じようにしているなど、さまざまな理由で請求を断ろうとしてくることもあります。ひとりで解決するのが難しい場合は、次に紹介する解決策を実行していきましょう。

3.支払われない場合は労基に相談する

労働基準監督署(労基)は、全国にある厚生労働省の出先機関で、残業代などの給料未払い事案を相談できる場所です。

残業代未払いの証拠に一定の合理性があり、請求に正当性があると認められる場合は、病院側に対して指導や是正勧告をしてくれます。

しかし、労働基準監督署による行政指導には強制力がありません。労働環境が良くないことが知られるなど病院側がダメージを受けても、残業代などが支払われないこともあります。このような場合には、次の手段を検討する必要があるでしょう。

4.それでも請求されない場合は訴訟を起こす

労働基準監督署への相談で解決しなかった場合は、訴訟を検討します。訴訟は専門家に任せた方が良いため、弁護士に相談するのが良いでしょう。

弁護士であれば資料などをもとに、請求できる金額の見とおしを立ててくれます。また、弁護士は法律のプロのため、証拠や就業規則などから解決の道筋を作ってくれるでしょう。

なお、未払いの残業代は3年以内に請求しない場合には時効となります ので、訴訟を起こすときは早めに動くことをおすすめします。

労働環境が改善されない場合は転職するのもアリ

残業代を請求して無事支払われることになっても労働環境が改善されるとは限りません。労働環境の改善が見込めないときは、転職も視野に入れてみましょう。

看護師の転職先は、病院以外にもさまざまな場所があります。サービス残業で悩んでいるなら、病院以外の転職先も選択肢に入れると良いでしょう。

看護師の転職先についてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

病院以外の看護師の転職先とは?おすすめの転職先と選び方について

まとめ

残業代の未払いやサービス残業に悩んでいるなら、未払い分を請求するとともに、新しい環境に身を置くのもひとつの選択肢です。病院以外では、美容看護師として働く選択肢もあります。美容クリニックは予約制で対応し、施術時間もある程度決まっているため、病院に比べてサービス残業が少ない傾向にあります。

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