医療法人の理事長が、否認されることなく退職金を受け取るためには、“社員総会の議事録”の適切な作成が重要なポイントとなります。
これが適切に作成されていないと、医療法人の理事長は退職金を受け取れないどころか、逆に大きな損失を被ってしまう可能性もあります。
具体的に解説していきましょう。
目次
社員総会の議事録を作成すれば、必ず退職金を受け取れるわけではない
平成27年に成立した改正医療法において、社員総会、理事会の議事録は必ず作成しなければいけないというルールができました。
ただ、作成さえしていれば、必ず退職金を受け取れるわけではありません。
たとえ議事録が存在しても、実際に社員総会が開催されていなければ、それは偽の議事録になるため、退職金は否認されます。
近年、税務当局における“偽の議事録”に対するチェックは非常に厳しくなっているため、医療法人の理事長は、実際に社員を集めて総会を開催し、日時や場所、出席した人物などを正確に記載した、“本物の議事録”を作成する必要があります。
医療法人の理事長が退職金を否認されるととんでもない目に…
冒頭で少し触れたように、医療法人の理事長が退職金を否認されると、経済的に大きなダメージを受ける可能性があります。
実際、退職金が否認されたケースを紹介しましょう。
とある企業において、代表取締役社長の退職金が否認されました。
これは、税務調査の結果、退職した代表取締役社長が、株主総会の議事録を失くしていたこと、取締役会を開催せず、偽の議事録を作成していたことなどが判明したことが理由です。
退職した代表取締役社長は、退職金として3億円を受け取っていましたが、これが否認され、“役員賞与”という扱いになりました。
その上、重加算税や延滞税などの追徴課税が認められ、企業は約1億8,000万円の税金を負担することとなりました。
また、退職した代表取締役社長は、すでに受け取った退職金にかかる税金約6,000万円を納めていましたが、退職金が役員賞与という扱いになったこと、そして追徴課税がされたことにより、さらに約1億4,000万円の税金を払うことになってしまいます。
つまり、3億円の退職金が否認されたことによって、企業と退職した代表取締役社長で、併せて約3億2,000万円を負担するという悲惨な状況が生まれたのです。
これは、一般法人で起こった出来事ですが、医療法人でも同じような事態に発展する可能性は十分あります。
まとめ
医療法人の理事長が退職金を否認されないための方法、そして実際否認された事例について解説してきました。
医療法人の理事長にとって退職金は、これまで数々の苦労をしてきたことへのご褒美であり、充実した余生を過ごすための大切な資金です。
したがって、それが受け取れなくなること、そして受け取れなくなるどころか、さらなる経済的ダメージを負うようなことは、絶対に避けなければいけません。