開業医は相続税対策として、遺言を利用することがあります。
院長が生前に遺言で生命保険金の受取人を指定しておき、後継者とその他の相続人における相続財産トラブルを防ぐ場合などです。
今回は、開業医が相続税対策として遺言を利用する際の注意点について解説します。
目次
開業医が相続税対策を遺言で行うなら早めの準備を!
開業医が相続税対策として遺言を利用する場合は、なるべく早く遺言の作成を行うように注意しておきましょう。
なぜかと言うと、院長が認知症になってしまった場合、遺言を利用した相続税対策ができなくなってしまうためです。
認知症とは、認識や記憶、判断などの能力が障害を受け、社会生活に支障きたす状態になることを言います。
もっとも疾患数が多い認知症には、脳の神経細胞が減ってしまい、脳が委縮することによって起こる“アルツハイマー型認知症”が挙げられます。
このような症状が出ている院長が遺言を作成しても、“意思能力がない状態で作成されたもの”と見なされるため、効果は無効になります。
つまり遺言の準備が遅れると、生前贈与や現預金の不動産化、遺産分割などあらゆる開業医の相続税対策ができなくなってしまうということです。
院長が認知症になっても開業医の相続税対策ができる方法
もし遺言の作成前に院長が認知症になってしまった場合は、“成年後見制度”を利用するべきです。
成年後見制度とは、認知症などによって財産の管理、法律行為をするための能力が低下している方の代わりに、裁判所に選任された人物が財産の管理や法律行為を行う制度のことを言います。
つまり院長が認知症になったとしても、後見人が代理人となって相続人との協議や相続に関する手続きなどを行えるということです。
また後見人は、院長に代わって遺言を作成することもできます。
ただ後見人が院長の代わりに遺言を作成するためには、以下の要件をクリアしなければいけません。
・院長が事理の弁識能力を一時回復したときであること
・2名以上の医師の立ち会いがあること
・作成された遺言について、院長が事理の弁識能力を欠く状態になかった旨を記載すること(立ち会いをした医師によるもの)
まとめ
開業医の相続税対策を遺言で行う際は、とにかく早めの準備が必要です。
院長が認知症になってしまうと、開業医の相続税対策における選択肢は極端に少なくなってしまいます。
また成年後見制度が利用できるとはいえ、院長が重度の認知症になってしまっている場合は、後見人でも遺言を作成するのが厳しい状況に追い込まれます。
たとえまだ若い院長であっても、自身には無関係と思わずに準備をしておきましょう。