これからクリニックを開業しようとしている方であれば、“医師優遇税制”という言葉は聞いたことがあるでしょう。
特定の要件をクリアした開業医にとって、医師優遇税制は必ず利用すべき制度です。
今回は、そんな医師優遇税制の歴史や概要、そして利用すべき時期について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
医師優遇税制の歴史と概要
医師優遇税制とは、正確には“社会保険診療報酬の所得計算の特例”と言います。
“租税特別措置法”という法律の26条に記載されているため、“措置法26条”と呼ばれることもあります。
この制度は、簡単に言うと、年間の保険収入が5,000万円以下の医師あるいは歯科医師が、“概算経費”を計上できるという制度のことを言います。
概算経費とは、実際にどれだけの経費がかかったかを細かく計算することなく、おおよその金額で経費を算出することを指します。
つまり、年間の保険収入が5,000万円以下の医師や歯科医師は、実際よりも多くの経費を計上できる可能性があるということです。
ちなみに、医師優遇税制は、昭和29年に初めて施行されたものですが、その当時は、所得計算の際、社会保険診療にかかる収入の72%を経費にできるという、今よりも莫大な恩恵を受けられる制度でした。
ただ、この制度に対して、「不公平な税制だ」という声が相次いだ結果、現在はかなり内容が縮小されています。
医師優遇税制を利用すべき時期について
医師優遇税制は、社会保険診療収入が5,000万円を超えると利用できず、また自由診療も含めた“医業収入”が7,000万円を超える場合も、利用の対象外になります。
つまり、クリニックがある程度成長してしまうと、すぐに利用できなくなるということです。
そのため、医師優遇税制を利用すべき時期として適しているのは、やはりクリニックを開業した年、そしてクリニックから医療法人に移行した年だと言えます。
特にクリニックを開業した年は、それほど売上が多くならないことが予想されるため、できるだけ経費を削減し、税金を計算する際には医師優遇税制を利用するという形を取るのがベストです。
実際に多くの開業医が、クリニック開業年、医療法人への移行年に医師優遇税制を利用しています。
まとめ
ここまで、医師優遇税制の歴史と概要、そして利用すべき時期について解説してきました。
医師優遇税制には、資金面で優遇される制度であることだけでなく、とても利用しやすいというメリットもあります。
適用の際、税務署などに申請を行う必要はありませんし、要件をクリアしていれば、確定申告時に利用するかどうかを自由に選択できます。