4つの法律から見るクリニックの適切な建築について


クリニックの建物は、一般的な住居などとは異なるルールを遵守して建築しなければいけません。
また、建築に関わる法律にはいくつかの種類があり、それぞれの内容をしっかりと把握しておく必要があります。
今回は、クリニックの建築に関わる4つの法律について、これらの法律から見る適切な建築について解説します。

目次

クリニックの建築に関わる4つの法律とは?

クリニックを一から建築し、開業しようと考えている方は、まず以下の4つの関連法律について知るところから始めましょう。

・建築基準法
・医療法
・消防法
・バリアフリー法

建築基準法

建築基準法は、建物を建築する際や利用する際に守らなければいけない最低限のルールを定めた法律です。
こちらの法律には、建築物やその敷地、設備、構造、用途、工事の図面の確認方法、工事の検査など、建築に関するあらゆるルールが記載されていますが、大きく分けると単体規定、集団規定という2つの規定で成り立っています。
単体規定は、建物そのものについての規定であるのに対し、集団規定は、建物および周辺環境についての規定となっています。

医療法

医療法は、国民の健康の保持に寄与することを目的とした、医療に関する基本的なルールを定めた法律です。
クリニックにとってもっとも関わりの深い法律と言っても過言ではない医療法ですが、実はこちらはクリニックの建物を建築する際にも関係してきます。
建築基準法は、建築物全般に適用される法律ですが、医療法はクリニックを始めとする医療機関の建物を建築する際の基準が設けられています。

消防法

消防法は、火災を予防し、国民の生命や財産を火災から保護するとともに、火災または地震等の災害による被害を軽減するための法律です。
建築基準法では、建物などの最低基準を示し、避難のための廊下幅や歩行距離、内装仕様などを定めています。
しかし、こちらだけでは不十分であるため、消防法では設備の設置基準や点検方法、防火管理者の有無、誘導灯や消火栓、警報器などに至るまでをより細かく定めています。

バリアフリー法

バリアフリー法は、正式名称を“高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律”というものです。
その名の通り、高齢者や障害者の方が移動を円滑にするため、利用者数や建物の規模により、ハードとソフトの両面でのバリアフリー化が義務付けられるというものです。

それぞれの法律から見るクリニックの適切な建築

では、上記4つの法律から見るクリニックの適切な建築とは、一体どういったものなのか、いくつか例を見ていきましょう。

建築基準法から見るクリニックの適切な建築

クリニックは、病床の数によって病院と診療所のいずれかに区分されます。
病床数の基準は19で、19以上のベッドがあれば病院、それ未満の場合は診療所となります。
また、病床が1つでも存在する場合、そのクリニックは特殊建築物という扱いになりますが、病床数がゼロの場合、診療所ではあるものの、建築基準法上は特殊建築物ではなく、一般建築物とみなされます。
ちなみに、特殊建築物に該当するクリニックは、防火避難規定上、廊下の幅や直通階段、2以上の直通階段、排煙設備、非常用照明といった基準に適用させなければいけません。

医療法から見るクリニックの適切な建築

建築基準法は、建物の安全性を考慮して法律が定められていますが、医療法では、医療行為から指導基準を元に基準が定められています。
例えば、診察室の広さは9.9㎡以上が望ましい、待合室の広さは3.3㎡以上が望ましい、レントゲン撮影室は放射線防護をするといった項目です。
ちなみに、建築基準法と医療法とで基準が異なる場合は、基本的には建築基準法を優先してクリニックを建築すべきとされています。

消防法から見るクリニックの適切な建築

消防法に基づいてクリニックの建築を行う場合は、医療法で定める有床診療所の条件が異なる点に注意すべきです。
医療法では、19床以上を有床診療所としていますが、消防法では4床以上あり、患者様を入院させる施設を有床診療所として定めています。
また、火災を鎮火させる消化器やスプリンクラーなどの設置は、クリニックの延べ面積によって決定します。
無床診療所の場合、消化器は150㎡以上、スプリンクラーは6,000㎡以上、火災通報装置は500㎡以上のクリニックに設置しなければいけません。

バリアフリー法から見るクリニックの適切な建築

クリニックの場合、トイレやスロープ、廊下の幅や手すりなどが、バリアフリー法の対象となります。
そのため、建築の際には、廊下を滑りにくい仕上がりにしたり、車椅子トイレを設けたり、駐車場の幅を350cm以上確保したりしなければいけません。
また、出入口は車椅子が通過できる幅でなおかつ水平であり、トイレには腰掛けやすくするための手すりがあることが望ましいです。

まとめ

ここまで、建築基準法、医療法、消防法、バリアフリー法という4つの法律から見るクリニックの適切な建築について解説してきました。
今回解説したのはほんの一部であり、各法律には他にも遵守しなければいけない、あるいは採り入れることが望ましいルールが数多くあります。
建築会社や設計士などに相談しながら、安全なクリニックを建築・開設しましょう。


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