市街化調整区域でクリニックを建築することは可能なのか?


“市街化調整区域”は、可能な限り市街地開発を抑え、無秩序な市街地の拡大を防ぐ地域です。
そのため、建築に関する制限も多いですが、すべての建築が認められないのかというと、決してそういうわけではありません。
今回は、市街化調整区域でクリニックを建築することは可能なのかを中心に解説します。

目次

市街化調整区域で建築できる建築物は大きく2種類に分かれる

市街化調整区域での建築が認められるものは、都道府県知事の許可が必要な建築物、許可が不要な建築物の大きく2種類に分かれます。
ここでいう都道府県知事の許可とは、開発許可のことを指しています。
こちらは、開発行為を行う者に対して出される許可のことで、開発行為には以下の3つが当てはまります。

・区画の変更
・形状の変更
・形質の変更

区画の変更は、敷地内に新たに道路を設置する行為などをいい、形状の変更は、一定の高さ以上の盛土や切土を指しています。
また、形質の変更は、宅地以外の土地を宅地に変更することであり、市街化調整区域内にある建物が建っていない雑種地や原野、山林などに建物を建てることは、形質の変更に該当するため、都道府県知事の許可を取らなければいけないということです。

都道府県知事の許可が必要な建築物

以下のような建築物を建築する場合には、役所に必要な書類を提出し、都道府県知事の許可を得なければいけません。

・基本的に、市街化調整区域内の開発許可基準と同様のもの
・地区計画、集落地区計画の区域内にある場合、地区計画に適合しているもの
・排水施設、擁壁、地盤の状態が一定の基準を満たしているもの

市街化調整区域内において、建築許可が必要な建築物は、都市計画法第34条に記載されているものと基本的には同じです。
具体的には、市街化調整区域内の鉱物資源、観光資源などの有効な利用上必要な建築物などが該当します。
また、地区計画や集落地区計画の区域内では、それらの計画に適合し、許可を得ることで建築物を建てることができます。
地区計画とは、地区の課題や特徴を踏まえ、住民と市区町村が連携しながら、地区の目指すべき将来像の設計、実現を行うことをいい、集落地区計画とは、都市近郊の農村集落について、集落地域の土地の区域内で、営農と居住環境が調和した土地利用を図るための計画を指しています。

都道府県知事の許可が不要な建築物

以下の建築物については、市街化調整区域内であっても、都道府県知事の許可を得ずに建築することが可能です。

・農林漁業用の建物および従事者住宅
・駅舎、公民館などの公共用建物
・都市計画事業施行による建築物、第1種特定工作物
・非常災害のための必要な応急措置としての建築物、第1種特定工作物
・仮設建築物
・都市計画法第29条により許可が必要ない開発区域内での建築物、第1種特定工作物
・通常の管理行為、軽易な行為
・附属建物(車庫、物置など)

農林漁業に従事する方の住宅や、畜舎、蚕室、温室、堆肥舎、サイロといった農林漁業用の建物は、許可を得ることなく建築することが可能です。
非常用災害時の応急仮設建築物、工事の現場事務所、仮説興行場といった仮設建築物も、市街化調整区域内での建築許可は必要ありません。
また、ここでいう通常の管理行為、軽易な行為とは、仮設建築物の建築、土木事業などに一時的に使用するための第1種特定工作物(周辺地域の環境悪化につながるおそれのある工作物)の建設、附属建物の建築、建築物の増築で増築に係る床面積の合計が10㎡以内のもの、建築物の改築で用途の変更を伴わないものなど、政令で指定するものを指しています。

市街化調整区域でクリニックは建築できる?

クリニックは、診療所として都市計画法第34条に記載されているため、市街化調整区域であっても建築することが可能です。
ただし、市街化調整区域での開業には、用途変更や開発許可申請など、多数の行政手続きが必要になります。
そのため、余裕を持ってスケジュールを組んでおかなければ、手続きがずれこんだり、思うように進まなかったりして、開業時期が大幅に延びてしまう可能性があります。
また、このような状況を回避するためには、土地の用途変更や形質変更、建築面などにおいて、高度な専門知識が求められるため、早い段階から専門家に関与してもらうことが重要です。

市街化調整区域でのクリニック建築、開業におけるメリット

市街化調整区域でのクリニック建築、開業における一番のメリットは、やはり土地を安く購入できるというところです。
また、あえて市街化調整区域での開業を目指すクリニックは少ないため、そのエリアにおける多くの患者さんに選んでもらえる可能性があります。
その他、市街化調整区域は土地が広いことが多いため、広大な駐車場を用意できるというところもメリットです。
ただし、駅までの距離が遠いケースが多いことや、すぐ近くに調剤薬局がないこと、また手続きや許認可に時間、コストがかかることなどはデメリットと言えます。

まとめ

ここまで、市街化調整区域の概要や、市街化調整区域でのクリニック建築に関することを中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
法律上は少し複雑なエリアですが、市街化調整区域でのクリニックの建築が可能かどうかを知っておくだけでも、開業エリアの選択肢は大きく広がります。
また、場合によっては、開業してすぐに多くの集患を実現できる可能性もあります。


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