看護師が転職する際、不安になることのひとつが収入面ではないでしょうか。失業手当を利用して再就職先を探す人は多いですが、再就職手当も受給できる可能性があります。
今回は、看護師が転職で利用できる再就職手当の解説をはじめ、受給条件や給付額、手続きの方法についてご紹介します。
看護師の転職で「再就職手当」をもらおう
再就職手当とは、退職した人が失業保険の手続きを行い、基本手当の所定給付日数の3分の1以上を残して再就職に成功した場合に支給される手当のことです。
再就職手当を受け取るためには、雇用保険に加入している必要があります。この条件を満たしていれば、パート(常勤、非常勤)で勤務・就職していた人でも再就職手当を受け取ることが可能です。
看護師が転職する際には、失業保険のほかに再就職手当も受給できる可能性があることを知っておくと、経済的な不安を軽減することができるのではないでしょうか。
看護師が再就職手当を受給する条件
看護師が再就職手当を受給するためには、以下8つの条件をクリアする必要があります。とはいえ、ハードルの高い条件ではなく、雇用保険の被保険者であれば、ほとんどの人が受けられる手当です。
・ハローワークでの手続きが完了し、7日間の待機期間後に就職したこと
・離職前の会社に再就職していないこと
・失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上であること
・2ヶ月または3ヶ月の給付制限がある場合、7日間の待機期間後の最初の1ヶ月間については、ハローワークや職業紹介事業者などの紹介で就職したものであること
・1年以上勤務することが確実であること
・過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと
・受給資格決定前から採用が内定していた会社に就職していないこと
このように、雇用保険の被保険者であれば、比較的簡単に再就職手当を受給することが可能です。
また、退職理由が会社の倒産や会社都合による解雇の場合は、再就職先の経路は問われません。ただし、自己都合による離職の場合は、待機期間終了後1ヶ月以内に限ります。
そのほか、ハローワークなど厚生労働省に認可されている職業紹介事業者からの紹介により再就職しなければ、再就職手当を受給できないので注意しましょう。
看護師の再就職手当はいくらもらえる?
8つの条件をクリアすれば再就職手当が受給できますが、受け取る再就職手当の額は、人によって異なります。
再就職手当の支給金額は「基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×支給率(60%または70%)」で算出されるためです。以下でそれぞれの計算方法や支給率について詳しく解説していきます。
基本手当日額の算出方法
基本手当日額とは、1日あたりに受給できる失業保険(基本手当)の金額です。この基本手当日額は、以下の表にあるとおり、賞与を除く離職する前6ヶ月間の給与合計を180で割った金額の45~80%の範囲で設定されます。
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
離職時の年齢が29歳以下または65歳以上 | ||
2,657円以上5,030円未満 | 80% | 2,125~4,023円 |
5,030円以上12,380円以下 | 80%~50% | 4,024~6,190円 |
12,380円超13,670円以下 | 50% | 6,190~6,835円 |
13,670円(上限額)超 | – | 6,835円(上限額) |
離職時の年齢が30~44歳 | ||
2,657円以上5,030円未満 | 80% | 2,125~4,023円 |
5,030円以上12,380円以下 | 80%~50% | 4,024~6,190円 |
12,380円超15,190円以下 | 50% | 6,190~7,595円 |
15,190円(上限額)超 | – | 7,595円(上限額) |
離職時の年齢が45~59歳 | ||
2,657円以上5,030円未満 | 80% | 2,125~4,023円 |
5,030円以上12,380円以下 | 80%~50% | 4,024~6,190円 |
12,380円超16,710円以下 | 50% | 6,190~8,355 円 |
16,710円(上限額)超 | – | 8,355円(上限額) |
離職時の年齢が60~64歳 | ||
2,657円以上5,030円未満 | 80% | 2,125~4,023円 |
5,030円以上11,120円以下 | 80%~45% | 4,024~5,004円 |
11,120円超15,950円以下 | 45% | 5,004~7,177 円 |
15,950円(上限額)超 | – | 7,177円(上限額) |
所定給付日数の支給残日数の算出方法
所定給付日数とは、基本手当が受け取れる最大日数を指します。所定給付日数は、自己都合退職の際に雇用保険の加入期間のみで決定されますが、会社都合退職になると雇用保険の加入期間のほかにも年齢によって決定されるのが特徴です。
また、障がいのある方や、社会的事情により就職が阻害される状況にいる就職困難な方の場合、長期的な給付日数が別途定められています。
このように、さまざまな条件によって、90日~360日の所定給付日数が定められているのです。
支給率
再就職手当の支給率は、失業期間中の収入補償率のことを指します。つまり、受給者が再就職を早期に行う場合には、支給率が高くなります。
具体的には、所定給付日数の3分の1以上を残して就職した場合は、支給率が60%、所定給付日数の3分の2以上を残して就職した場合は、支給率が70%になります。
このような仕組みが設けられているのは、再就職を促進し、失業期間を短縮する目的があるためです。就職前に所定給付日数を考慮して、再就職のタイミングを判断しましょう。
看護師に再就職手当が支給される時期はいつ?
再就職手当は、再就職先が決定すると即日支給されるものではありません。最初のステップとして次の職場への入社日が決まれば、ハローワークに報告をします。
報告後、ハローワーク側が在籍を確認し、手続きを完了させてはじめて支給されるのです。支給されるまでの期間は、再就職した日から約5週間~8週間といわれています。
再就職決定の報告から約1ヶ月程度を要し、さらに在職確認で約1週間~1ヶ月の期間を経て支給されます。手続きにかかる期間は、管轄のハローワークによっても異なります。
できるだけ早く支給してもらうためにも、ハローワークへの報告や手続きがスムーズに進むように、あらかじめ再就職手当に関する知識を得ておきましょう。
看護師が再就職手当をもらうときの手続き
再就職手当をもらうには、新しい職場に就職したあと、ハローワークでの手続きが必要です。転職後は、新しい環境で慣れない業務にあたることもあり、肉体的にも精神的にも負担があるなか手続きを進めなければなりません。
あらかじめ手続きの手順を知っておいて、できるだけスムーズに支給までたどり着けるようにしておきましょう。
手順1:採用証明を提出する
失業保険の申請時にハローワークから発行される受給資格者のしおりの中に、採用証明の記入様式が同封されています。
再就職先に、採用証明の必要事項部分を記入してもらうように依頼して、ハローワークへ提出してください。もし採用証明を紛失した場合は、ハローワークのサイトからダウンロードすることも可能です。
手順2:再就職手当支給申請書を受け取る
ハローワークに採用証明を提出する際は、基本手当日額や受給番号が記載されている雇用保険受給資格者証と、就職活動中の実績が書かれた失業認定報告書も提出しなければなりません。これらを提出し、ハローワークでの確認が終わると、就職手当支給申請書が発行されます。
手順3:再就職手当支給申請書を再就職先に提出する
ハローワークから受け取った就職手当支給申請書を、再就職先に提出します。前職とのつながりがないことを証明する書類も含め、必要事項を再就職先に記入してもらいましょう。
手順4:再就職手当支給申請書と雇用保険受給資格証を提出する
もう一度ハローワークへ出向き、「再就職手当支給申請書」と「雇用保険受給資格証」を提出します。このとき、再就職先での勤務実績の提出(タイムカードの写しなど)を求められるケースもあるので、必要となった場合は就職先に相談しましょう。
これら4つの手順を経て、再就職手当の支給手続きが完了します。再就職手当の申請は、再就職してから1ヶ月以内に行わなければならないので注意しましょう。
まとめ
再就職手当は手続きが必要なものの、比較的簡単に多くの人が受給でき、再就職を支援するための制度です。転職したくても、辞めたあとの収入に不安があり、なかなか転職に踏み切れないという人は、再就職手当があることを覚えておきましょう。
看護師を辞めてからブランクがあるけれど、再就職して復帰を考えているという人は、ぜひこちらの記事もご参考ください。
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