治験コーディネーターの年収は低い?年収をアップさせる働き方とは

看護師から別の職種へ転職するにあたって、治験コーディネーターとして働きたいと考えている人もいるでしょう。なかでも、治験コーディネーターはどれだけ年収を得られるのか、気になっている人もいるかと思われます。

本記事では治験コーディネーターの年収事情と年収をアップさせる方法について紹介します。

治験コーディネーターの年収事情

治験コーディネーターは製薬会社と医療機関、そして治験被験者の調整役を担い、治験のスムーズな進行をサポートする仕事です。

令和4年賃金構造基本統計調査をもとに、厚労省の職業情報提供サイト「jobtag」が調べたところによると、治験コーディネーターの平均年収は443 .3万円でした。また令和3年度のハローワーク求人統計データによると月給は22.8万円でした。

出典:「jobtag|治験コーディネーター」(厚生労働省)

ただし、治験コーディネーターの年収は地域や勤務する企業の規模によって大きく異なります。

地方よりも首都圏や都市部のほうが給料は高い傾向です。また、勤務する企業によってボーナスの支給額が大きく変わり、年収を大きく左右します。

治験コーディネーターと看護師の年収比較

令和4年賃金構造基本統計調査をもとにした「jobtag」の調べで、看護師の平均年収が508.1万円程度という結果が出ています。

出典:「jobtag|治験コーディネーター」(厚生労働省)

一見、看護師のほうが治験コーディネーターよりも年収がかなり高い印象を受けます。

とはいえ、看護師の年収には基本給に加えて夜勤手当などが多く含まれており、夜勤手当の程度によって年収が大きく変わるのが実情です。夜勤手当なしで日勤のみの看護師は、治験コーディネーターよりも年収が低くなる可能性も考えられます。

治験コーディネーターの年収で知っておきたいこと

治験コーディネーターとして働くことを希望しているなら知っておきたい、年収に関する詳しい情報を紹介します。

会社規模による年収の違い

大手SMO(治験施設支援機関)と中小SMOでは、入社時の想定年収が大きく変わってきます。月給だけを比較するとさほど大差はありませんが、年収に換算すると50万円ほど変わってくるといわれています。

この差はボーナスの有無、またボーナス支給額によって生まれます。

中小SMOのなかには、月給を少し高めにする代わりにボーナスを支給しないところもあります。

また、ボーナスを支給する場合でも支給額は大きく異なります。中小SMOのボーナスは基本給の約2ヶ月分が目安ですが、大手SMOの場合、ボーナスの支給額は基本給の約4ヶ月分とされます。

ボーナスの支給額の差が、治験コーディネーターの年収の違いに大きく影響しているのです。

経験年数や地域による年収の違い

治験コーディネーターは、勤続年数に比例して平均年収が上がるのが一般的です。

2年以上勤務すると、CRC認定資格の受験が可能となり、試験に合格して資格を取得すると資格手当が与えられます。

また、資格を取得してさらに経験を積めば、チームリーダー、管理職といった役職を任され、職場によっては役職手当がつき、年収に反映されます。

地域によっても治験コーディネーターの年収相場は異なります。

「jobtag」によると、神奈川県の年収相場は全国の平均年収より高い510.2万円です。宮城県は507.8万円、奈良県483.6万円、栃木県476.4万円、愛知県470.4万円と、いずれも全国の平均年収よりも高くなっています。

逆に鹿児島県は335.4万円、秋田県331.5万円、沖縄県346.3万円と全国の平均年収より低くなっており、地域によって年収が大きく異なるといえるでしょう(年収はいずれも令和4年賃金構造基本統計調査の結果を加工したデータ)。

出典:「jobtag|治験コーディネーター」(厚生労働省)

昇給率は病院勤務より高い

治験コーディネーターの昇給率は、月給の1~2%程度とされています。病院やクリニックに勤務する看護師や臨床検査技師などの平均昇給額は1,000円~3,000円程度で、ほかの医療関係者と比較して給料は高めに上がります。

治験コーディネーターの年収が低いと言われる理由

治験コーディネーターの年収が他の職種と比べて低いわけではありません。しかし、治験コーディネーターのなかには「年収が低い」と感じる人もいるようです。

なぜ、治験コーディネーターの年収が低いと言われるのか、その理由を確かめましょう。

年収が割に合わないと感じる人が多い

治験コーディネーターは幅広い知識が必要とされる職業です。医療の分野は常に進歩していることから、実務経験があっても勉強は継続しなければなりません。

そのため、求められる知識量の割に、年収が低いと感じる人もいるようです。

加えて、治験コーディネーターの仕事は残業や休日出勤も多くあります。なぜなら、治験コーディネーターは担当する医師また治験被験者のスケジュールに合わせて動くことが求められるからです。

また、休日でも被験者の体調不良といった事態が発生すると、問い合わせ対応や、製薬会社への連絡などの業務が生じることもあります。

残業手当などによる収入も見込めるとはいえ、仕事に割く時間や精神的な負担を考えると収入が見合わないと感じる人が多いのです。

国家資格を持っていても年収がほとんど変わらない

多くの医療系の職種では、国家資格の有無が給料や手当に反映されます。年収をアップさせようと、国家資格の取得を目指す人が多くいます。

一方で治験コーディネーターが医療系国家資格を取得したとしても、年収に大きな影響はありません。

また、治験コーディネーターは国家資格の有無よりも経験が重視されます。国家資格を取得していても、未経験であれば年収のスタートラインは変わりません。

せっかく時間や費用をかけて資格を取得したのに、それが年収に反映されず割に合わないと感じる人が多いのです。

治験コーディネーターが年収アップを目指すには

年収面で満足できなければ、治験コーディネーターとしての仕事を続けるのは大変です。できれば年収アップを実現させて、納得のいく収入を得たいものです。

治験コーディネーターが年収アップを目指す方法を紹介します。

公認CRC・認定CRCを取得する

年収アップを目指すひとつの方法が、公認CRCや認定CRCを取得することです。

いずれも国家資格ではないものの、2年以上治験コーディネーターとして勤務した人のみが受験できる資格です。

先述したように、治験コーディネーターの仕事は経験が重視され、資格が年収に大きく影響を与えるわけではありません。

しかし、取得しておけば治験コーディネーターとしての実力をアピールできるメリットがあり、昇進を目指す際には有利となるでしょう。加えて資格手当を設けている企業もあります。

業界大手のSMO企業に転職する

治験コーディネーターは勤務先によって年収はまちまちです。業界大手のSMO企業であれば、年収水準が高く、年収アップが見込めるでしょう。

基本給については勤務先によって大きな違いはないものの、大手SMO企業であれば中小SMO企業よりも高いボーナス支給額が年収の差に直結します。

また、勤務地によっても平均年収は異なるので、都市部など平均年収が高い地域の転職先を探すのもおすすめです。

キャリアチェンジを視野に入れる

年収の大幅アップを目指すなら、キャリアチェンジも検討してみましょう。

治験コーディネーターとして経験を積んだ人のなかには、臨床開発モニターにキャリアチェンジする人も多くいます。

臨床開発モニターになると、製薬会社に転職する機会が開けることが大きな理由です。

製薬会社の年収相場は600万~1,200万円程度といわれており、治験コーディネーターの平均年収を大幅に上回ります。

治験コーディネーターとして働き続けて少しずつ年収アップを目指すよりも、思い切ってキャリアチェンジしたほうが良いと感じる人は多いのです。

治験コーディネーターの求人事情

治験コーディネーターになるのに必須とされる資格はないものの、医療や薬などに関する幅広い知識が必要で、医療系の国家資格を取得していると優遇されやすい傾向があります。

実際、治験コーディネーターとして活躍している人の多くが看護師、臨床検査技師、薬剤師、管理栄養士といった資格を保有しているといわれているのです。

雇用形態については正社員が半数以上を占めています。近年大手企業は賃上げをする傾向にあり、これから治験コーディネーターを目指す人にとっては良い傾向といえるでしょう。

まとめ

治験コーディネーターには、医療に関する幅広い知識とコミュニケーション能力が求められます。やりがいのある仕事ではありますが、仕事量や精神的・身体的な負担の割には年収が低いと感じる人もいるようです。

とはいえ、経験を積んでいけば年収は上がっていきます。また、職場を選び資格を取得しながら経験を重ねれば、年収アップを目指すのも無理ではありません。本記事を参考に治験コーディネーターを目指してはいかがでしょうか。