妊娠中の看護師の働き方とは|報告のタイミングや働く上での注意点

妊娠すると体調の変化により、普段どおりに働けない場面が増えてきます。妊娠後も看護師の仕事を続けたくても、不規則な勤務形態が体の負担にならないか心配な方もいるでしょう。

妊娠した後は、体調を第一に考えて、職場への報告や勤務の調整などを滞りなく進めることが大切です。そこで今回は、妊娠中の看護師の働き方や注意点などについて紹介します。

看護師が妊娠発覚後にするべきこと

妊娠後は職場への報告や申請書類の確認などが必要です。まずは、看護師が妊娠発覚後にすべきことを解説します。

1.職場へ報告する

妊娠発覚後は、速やかに直属の上司へ報告することが大切です。看護師は体に負担がかかる業務もあるため、妊娠中は体調を優先して、無理なく働ける環境を整えましょう。

早めに報告しておけば、つわりなどで仕事に支障がでてしまっても、周囲の理解を得やすくなります。

報告するタイミングとしては、心拍が確認できる妊娠8週目前後の初期段階がおすすめです。なかには、安定期に入る妊娠16週目以降に報告する方もいるようです。

2.産前産後休業の申請手続きをする

産休の取得時期が曖昧だと、勤務スケジュールを組みにくく、仕事の分担も難しくなってしまいます。上司や同僚の負担を軽減するためにも、産休を取得する場合は、早めに伝えておきましょう。

産前休業は出産予定日の6週間前から、産後休業は出産翌日から8週間目まで取得できます。

ただし、病院によって申請方法が異なる場合もあるため、事前に準備しておくことが大切です。早めに調べておけば、申請日の直前で焦ることなく落ち着いて対処できます。

3.育児休業を検討しておく

出産後も仕事を続ける場合は、育児休業も検討しましょう。育児休業とは、産後休業終了の翌日から子どもが1歳になるまで取得できる制度です。

ただし、育児休業は産前産後休業と異なり、取得条件がある場合が多いため注意が必要です。例えば、入社後1年以上雇用されていることなど、労使協定(病院や施設などの使用者と従業員の間で書面により締結された協定)で定められている場合があります。

勤務日数が不足していると、育児休業を取得できないケースもあるため気をつけましょう。職場復帰を考えているのであれば、条件を満たしているか確認しておくことが大切です。

4.手当や給付金制度を確認する

妊娠や出産には、さまざまな手当や給付金制度があります。妊娠中に確認しておきましょう。

出産育児一時金

健康保険の加入者やその被扶養者が出産したときに、ひとりの子どもにつき42万円給付される制度です。健康保険組合加入者は、さらに10万円給付されます。退職後でも国民健康保険に加入していれば問題なく受給できます。

出産手当金

産前産後休業を取得すると、健康保険から出産手当金が給付されます。標準報酬日額の2/3に相当する額を受給できます。退職後2年以内であれば、申請可能です。

育児休業給付金

育児休業の取得者を対象として、子どもが1歳になるまで支給される給付金です。原則として180日までは賃金の67%、その後は50%の金額が支給されます。ただし、育児休業後に退職予定がないなどの条件があります。

妊娠中の看護師が働く上で気を付けること

妊娠中に看護師の仕事をする際は、体に負担がかからないように注意しましょう。ここからは、妊娠中の看護師が無理なく働くためのポイントを紹介します。

夜勤や準夜勤は控える

24時間体制の職場では、夜勤や準夜勤などの不規則な勤務形態で働かなければなりません。昼夜逆転になると体内リズムが乱れやすくなり、母子ともに影響を与えてしまいます。

妊娠中は日勤のみに変更したり、勤務時間を短くしてもらったりしながら、体への負担を軽減しましょう。妊娠証明書や母性健康管理指導事項連絡カードなどを主治医に書いてもらうと、夜勤免除が申請できます。

身体の負担が大きい業務は避ける

妊娠初期はお腹もまだ大きくないので、つい無理をしてしまいがちです。しかし無理のしすぎは早産や切迫流産のリスクがあります。

妊娠中はハードな業務や重いものを持つ仕事は避けましょう。

重いものを持ち上げたり、患者様の介助をしたりするときはお腹に力が入ります。腹圧がかかる動作は、子宮の萎縮につながり出血のおそれがあるため注意が必要です。

妊娠中は労働基準法により、重いものを扱う業務などは制限されます。体調を優先して業務内容を相談しておきましょう。

院内感染に注意する

感染症リスクの高い職場で働く看護師は、ウイルスの媒介者にも感染者にもなるおそれがあります。感染すれば、胎児への影響も考えられます。

特に、耐剤耐性菌や結核の患者様と接する場合は注意が必要です。感染リスクの高い業務は担当から外してもらい、ほかの看護師に引き継ぎましょう。

マタニティハラスメント対策をする

万が一のために、マタニティハラスメント対策についても考えておきましょう。妊娠中は体調不良になりやすく、周りの看護師にフォローしてもらう場面も多いものです。人手が足りなくなる分、看護師一人あたりの業務量は増えてしまいます。

余裕がない環境だと、妊娠中であることを理由に心ない言葉を向けられることがあるかもしれません。

周囲の言動がマタニティハラスメントかもしれないと思ったら、日時や場所、相手の言動をしっかり記録しておくことが重要です。記録しておくと、マタニティハラスメントの証拠として提出できます。気になるときは、記録をもとに上司や相談窓口に相談しましょう。

妊娠中でも安心して働けるように、労働基準法では「母性保護規定」が定められています。仕事内容や労働時間などの権利を主張できるため、知識を得ておくことも大切です。

看護師が妊娠・出産した後のキャリア

妊娠・出産はキャリアを見直すきっかけになります。職場復帰や退職、転職などの選択肢から、自分に合った働き方を見つけましょう。

産休・育休を取得して復帰する

キャリアアップを考えている方は、産休や育休制度を取得して復帰するのがおすすめです。産休や育休を取得すると、給付金を受給しながら育児に専念できます。

育休中には保育園探しなどもできるため、仕事と育児を両立するための準備期間として活用できます。職場復帰を前提に考えていれば、家計の見通しも立てやすくなるでしょう。

円満退職する

妊娠・出産を機に退職する場合は、なるべく早めに上司へ伝えましょう。円満退職するコツは、ポジティブな退職理由を伝えることです。「出産・育児に向けてしっかり準備したい」といった自分の気持ちや事情を伝えましょう。

退職が決まると、残された職員への引き継ぎが必要です。業務に支障がでないように、時間に余裕をもって対応しましょう。

他の職場で復職する

妊娠・出産により生活環境が大きく変わると、今までのように働けなくなるかもしれません。退職してから育児が落ち着いたタイミングで、仕事への復帰を考えてみるのもひとつの方法です。

妊娠中や出産後の転職活動は心身ともに大きな負担がかかります。産休や育休が申請できる職場であれば制度を有効活用して、体を休めてからキャリアプランを考えても遅くありません。

とはいえ、一度退職すると、ブランクが気になる方もいるでしょう。ほかの職場へ復職を希望する場合は、仕事と育児の両立に理解がある、復職者向けの研修制度があるなど、復職後に働きやすい職場かチェックすることも大切です。

仕事と子育てを両立できる働き方について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
子育て中の看護師におすすめの働き方!利用できる制度も紹介

まとめ

妊娠してつわりがはじまると、看護師の仕事が思うようにできなくなるかもしれません。夜勤や重労働は体の負担になるため、妊娠発覚後はなるべく早めに上司へ伝えましょう。

産前産後休業や給付金制度などを上手に活用すれば、育児に専念することができます。妊娠・出産後は、体調や家庭の状況を考慮しながら、自分に合った働き方を検討していきましょう。