透析看護師を辞めたい理由は?転職時にすべきことやおすすめの転職先を解説

一般社団法人日本透析医学会の調査によると、日本国内において慢性透析患者数は年々増加傾向にあり、2021年時点で34万人を超えています。これは世界的に見ても高い数値で、透析治療を必要とする患者数は台湾に次いで日本が第2位です。そのため、透析看護師の需要はさらに高まっています。

一方、現在透析看護師として働いている方の中には、「仕事内容が辛くて辞めたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、透析看護師が転職を考える理由や転職を成功させるポイントについてご紹介します。

出典:「わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在)」(一般社団法人日本透析医学会)

透析看護師を辞めたいと考える理由

近年、需要が高まっている透析看護師ですが、それでも辞めたいと考える看護師もいます。

透析看護師が辞めたいと考える理由にはどんなものがあるのでしょうか。

機械操作や穿刺が大変

透析看護師は、機械操作や穿刺などの技術が必要です。

透析看護師が穿刺の際に用いる針は採血などに用いる針よりも長くて太く、穿刺するシャントも通常とは太さや血流が異なります。ほかの職場ではベテランの看護師でも、一から学ばなければならず、初めてだと戸惑うことも少なくありません。

高度なスキルが求められるため、機械操作に苦手意識があったり穿刺技術に上達がみられなかったりして、スムーズに業務がこなせないと辛くなってしまいます。

刺激がない

透析看護師はルーティンワークがほとんどであるため、単純作業になりやすいです。

病棟勤務の場合、さまざまな病態の患者様を相手にするため、そのつど対応も異なります。そ一方、透析看護師は基本的に毎日同じ業務の繰り返しです。

そのため、仕事にやりがいを感じたい方にとっては、刺激が少ない職場といえます。

ほかの看護スキルが身に付かなくて不安

透析看護師の業務は、透析に特化されています。一般病棟の看護師が行うような看護業務をするケースは、ほとんどありません。

透析に関わる機械操作や穿刺の技術を向上できたとしても、ほかの看護スキルを身に付けられないのが実情です。そのため、看護師としてのキャリアについて考えると不安が強くなり、辞めたい気持ちになる方もいます。

オープンフロアの環境がストレスになる

透析センターは基本的にオープンフロアになっており、透析看護師は常に患者様の目がある環境下で働きます。

時間内に仕事をこなさなければならないため、患者様がサポートを求めていても十分な対応ができないケースもあります。患者様に寄り添ってケアしたい気持ちが強い看護師の場合、そうした状況に葛藤してしまうこともあるようです。

特定の患者様への対応にストレスがたまる

透析を必要とする患者様は腎臓に問題を抱えており、透析では腎臓のはたらきである血液のろ過を人工的に行っています。腎臓そのものの機能の回復は難しいため、患者様は週に2~3回定期的に透析に通わなければなりません。

加えて、食事や水分の管理を行う必要もあり、そのことがストレスとなる患者様も多いようです。

患者様の対応に悩んだり、ストレスを抱えたりして、仕事を辞めたいと考える透析看護師も多くいるのが現状です。

透析看護師を辞めて転職を成功させるためにすべきこと

透析看護師を辞めたいと思っても、次の職場でもうまく働けるかどうか、悩んでいる方もいるでしょう。

ここでは、転職活動を成功させるためのコツを見ていきましょう。

辞める理由を明確にしておく

まずは、透析看護師を辞めたいと思った理由を明確にしておきましょう。

透析の仕事自体が自分には向いていないのか、もしくは業務内容には問題がないものの、待遇面や人間関係などに不満があるなど、人によって辞めたいと思う理由はさまざまです。

向いていないと感じるのであれば、なぜそう感じたのか、具体的に言語化することが大切です。単調な作業が合わないのか、機械操作や穿刺といった技術を向上させることに難しさを感じているのか、紙やスマホのメモアプリなどで書き出します。

透析看護師を辞めたい理由が明確になれば、自分の適性を見極めたうえで、希望の条件に合った職場が見つかりやすくなります。

スキルの棚卸しを行う

透析看護師の仕事が合わなくて辞める場合でも、これまでの経験やスキルが無駄だったわけではありません。今後の仕事に、これまでの経験やスキルを活かすことはできます。

転職活動を始める前に、まずは経験やスキルの棚卸しをしてみましょう。どんなことを経験したのか、小さなことでも良いので具体的に記します。

例えば、患者様との対応でコミュニケーション能力が向上した、機械操作が苦でなくなったといったことでも構いません。

透析看護師としての経験や経験によって得られたものを具体的に記すと、自分に合った転職先を見極めやすくなります。

自分に合った職場を探すには、自己分析が重要です。自己分析の方法については、以下の記事をご参考ください。
看護師が自己分析をする方法6ステップ!必要な理由やコツも紹介

研修制度が整っているか確認する

透析看護師と一般病棟で働く看護師の業務内容は、大きく異なります。看護師としての経験が長いと即戦力になることが期待されやすいものの、転職先では新人と同じく学びながら実務経験を積んでいかなければなりません。

そのため、一般病棟で行う看護業務などを一からしっかりと教えてもらえるような研修制度が整っているところに入るのがおすすめです。

研修制度が整っていないところだと、十分な指導を受けられないまま仕事を任されてしまい、不安な気持ちで業務をこなしていく必要があります。

先輩看護師に尋ねてもていねいに教えてもらえるとは限らず、大変な思いをしながら新たな仕事に慣れていかなければなりません。

その点、新人教育に力を入れているところであれば、ていねいな指導が期待でき、新しい業務にも安心して取り組めます。

給与額が下がる可能性もあることを理解しておく

透析看護師は、基本的に日勤のみで残業もほとんどありません。また、特殊なスキルを利用するため、比較的給与は高めです。

さまざまなデメリットはあるとはいえ、日勤のみ、残業なしで給与が比較的良いため、透析看護師は好待遇とみなされます。

逆に同様の勤務条件で、他病院やほかの診療科に転職するのであれば、給与が下がることは覚悟しておきましょう。もしも透析看護師のような給与を目指すのであれば、夜勤が多い職場を選ぶなどの工夫が必要です。

透析看護師におすすめの転職先

透析看護師を辞めたいものの、辞めた後にどんな職場を選ぶと良いのかわからない。そんな方のために、透析看護師におすすめの転職先を紹介します。

訪問看護ステーション

転職先として、訪問看護ステーションはおすすめです。訪問看護師は、基本的に日勤のみで透析看護師と近い条件で仕事ができます。

看護する利用者様の状況はさまざまで、必要に合わせてカテーテル管理や点滴、リハビリテーション、ターミナルケアなどを行わなければなりません。

幅広いスキルが求められる職場ではあるものの、利用者様との距離感が近い分、高いコミュニケーション能力も必要となります。透析看護師として培ったコミュニケーション能力を活かせる職場です。

腎臓内科

腎臓内科がある病院に転職するのもひとつの手です。腎臓内科であれば、透析看護師としての勤務経験や知識をすぐに活用できます。

点滴などの管理業務は改めて勉強が必要にはなるものの、ほかの診療科よりはなじみやすく、精神的な負担は軽減される可能性が高いです。

まとめ

需要の高い透析看護師ですが、特殊なスキルが求められる分野であるため、向き・不向きはあります。どうしても続けるのは難しい、辞めたいと感じたら、転職を考えるのもひとつの手です。

転職を決めたら、本記事で紹介した転職を成功させるコツを参考に準備をしてみるようおすすめします。