大学病院で働く看護師の年収・給与事情
まずは、大学病院で働く看護師の年収・給与事情についてご紹介します。
看護師全体の年収との差
令和4年賃金構造基本統計調査によると、看護師全体の平均年収は508万円程度です。ほかの職業と比較すると少し高めとなっていますが、これは夜勤や残業手当などが含まれているためです。
大学病院で働く看護師に限定すると、勤務先によるものの年収相場は平均500万円程度が目安です。規模が大きい病院ほど給与は高めになりますが、大学病院に勤務したからといって高収入が保障されるわけではないといえます。
大学病院は全体的に賞与額が高い
国公立の大学病院は、全体的に賞与が高い傾向です。一般的な病院の平均よりも1.5~2倍になるケースがあります。毎月の月収は一般的な病院とほとんど同じでも、賞与が高額であれば年収に開きが生じることになります。
大学病院の賞与が高い理由は、収益が多いことが考えられます。
大学病院の多くは、高度の医療を提供している病院、また高度医療技術の開発や研修を行う特定機能病院に指定されています。
一般の病院よりも重症度・難易度の高い治療や手術を行うことが多く、それに付随して診療報酬も高くなる傾向があります。その結果、大学病院に勤務する看護師の賞与は高めになるのです。
大学病院での看護師の仕事については、以下の記事もご覧ください。
大学病院看護師はきつい?理由やおすすめ転職先を紹介
【施設別】大学病院で働く看護師の年収相場
一口に大学病院といっても、国公立もあれば、私立の大学病院もあり、勤務する施設によって年収相場も変わってきます。大学病院で働く看護師の年収相場を施設別にご紹介します。
国立大学病院の年収相場
国立大学病院は全国に42院(平成20年4月時点)です。全大学病院(163院)の1/4を占め、病床が600床以上の大規模病院が多くあります。
出典:「大学医学部・付属病院の状況」(厚生労働省)
日本看護協会のデータによると、国立大学病院で勤務する看護師の平均基本給与額は25万9,794円、平均税込給与額は33万4,188円となっています。
出典:「2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書」(日本看護協会)
これを年収に換算すると、401万256円(33万4,188円×12ヶ月分)です。
大学病院の賞与はおよそ100万円程度なので、これをプラスすると年収相場は約501万円となります。
公立大学病院の年収相場
国立大学病院や私立大学病院と比較すると、12院(平成20年4月時点)と公立大学病院は数が少なめです。
出典:「大学医学部・付属病院の状況」(厚生労働省)
日本看護業界のデータによると、公立大学病院で勤務する看護師の平均基本給与額は26万7,644円、平均税込給与額は33万8,084円となっています。
出典:「2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書」(日本看護協会)
年収に換算すると、405万7,008円(338,084円×12ヶ月分)です。
大学病院の平均賞与100万円をプラスすると、年収相場は約505万円となります。国立大学病院と公立大学病院では年収相場はほとんど変わりません。
私立大学病院の年収相場
私立大学病院は106院(平成20年4月時点)と、大学病院のなかで一番数が多いです。病床数についても500床未満の病院から1,000床以上の大規模病院まで幅広くあります。
出典:「大学医学部・付属病院の状況」(厚生労働省)
日本看護協会のデータによると、私立大学病院の平均基本給与額は27万2,996円、平均税込給与額は35万8,662円となっています。
出典:「2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書」(日本看護協会)
年収に換算すると、430万3,944円(358,662円×12ヶ月分)です。
これに大規模病院の平均賞与である100万円プラスすると、年収相場は約530万円となり、大学病院のなかでは高収入を得やすい職場といえます。
【年齢別】大学病院で働く看護師の年収相場
看護師の年収は、50歳ごろまでは経験年数が上がるごとにアップするのが一般的です。大学病院の看護師についても同様の上がり幅となります。
参考までに、看護師全体の年収別給与額は以下のとおりです。
年代 | 年収相場(年収+賞与) |
---|---|
20~24歳 | 388万4,200円 |
25~29歳 | 460万1,100円 |
30~34歳 | 478万6,400円 |
35~39歳 | 479万9,000円 |
40~44歳 | 534万8,100円 |
45~49歳 | 541万200円 |
50~54歳 | 533万800円 |
55~59歳 | 563万2,500円 |
60~64歳 | 465万7,900円 |
65~69歳 | 4416万1,800円 |
出典:「令和3年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)
20歳~24歳から、25~29歳までが最も給与の上がり幅が大きくなっています。40歳を超えると徐々に停滞し、60歳を超えると下がります。
これは、ライフスタイルの変化、体力などの理由で、夜勤に入る回数や残業時間が減ることが要因と考えられるでしょう。役職につくと、役職手当の代わりに残業手当がもらえなくなるケースもあるようです。
【地域別】大学病院で働く看護師の年収相場
大学病院で働く看護師の年収は、地域によっても異なります。
看護師全体の平均年収で見ると、鹿児島県の平均年収は全国平均を大幅に下回り、400万円程度です。
それに対して東京都は560万円程度、大阪府は530万円程度、愛知県は520万円程度となっており、都市部のほうが平均年収は高めであることがわかります。
大学病院勤務でも地域によって年収相場は変わってくるので、「地元の大学病院に就職したら年収が思っていたよりも少ない」ということは起こり得ます。
転職を考えているなら、その地域の看護師の年収相場もチェックしておくと良いでしょう。
大学病院の看護師が年収アップを目指す方法
大学病院の看護師は、工夫次第でさらに年収アップを目指すことができます。大学病院で年収アップを実現させるために重要な4つのポイントをご紹介します。
職場に長く勤める
多くの病院では、勤続年数が長いほど看護師の給与は高くなります。そのため、いろんな職場を転々とするよりも、ひとつの職場に長く勤めるほうが年収アップは目指しやすくなります。
また、ただ長く勤めるのではなく、意欲的に業務に取り組んで看護師としてのスキルを磨くことも大切です。勤続年数に見合った実績を積んでいくことで職場からも評価されやすくなり、昇給につながります。
各種手当を受ける
勤務する診療科目によっては手当が支給されるところと、あまり手当が付きにくいところがあります。
配属先によっては、夜勤手当のほか手術室手当や透析手当といったものが支給されるケースがあります。また、皆勤手当や精勤手当といった手当が受けられるところもあるので、どんな手当が付くのか、求人情報で確認しておくのがおすすめです。
役職に就く
役職に就くと昇給したり、手当を受けられたりするので、年収アップが見込めます。看護スキルを磨いて、看護主任や看護師長、看護部長などの役職を目指すと良いでしょう。
看護師に求められるスキルやコミュニケーション能力、判断力などを身に付け、周りの信頼を得られるようになると、役職に就ける可能性を高めることができます。
上位資格を取得する
専門看護師や認定看護師などの上位資格を取得すると、それが給料に反映され、年収アップにつながる可能性があります。
主な上位資格は、以下のとおりです。
<専門看護師>
・小児看護
・老人看護
・在宅看護
・慢性疾患看護
・がん看護
・精神看護 など
<認定看護師>
・認知症看護
・糖尿病看護
・透析看護
・集中ケア
・手術看護
・救急看護
・がん化学療法看護 など
これらの資格を取得すると、基本給のアップや、各種手当が期待できます。業務にも活かせるので、看護スキルの向上につながるほか、自分の仕事の幅を広げられるといったメリットもあります。
まとめ
大学病院で働く看護師の年収は、勤務する施設や地域、年齢によっても異なりますが、500万円程度が相場です。大学病院のうち、最も高収入が期待できるのは私立大学病院で、相場は530万円程度です。
どの職種にもいえることですが、一般的には年齢が上がるにつれて給与アップが期待できます。
少しでも高収入を目指すなら、「長く勤める」「各種手当が支給されやすい診療科目を選ぶ」「役職に就く」「上位資格を取得する」などを意識したキャリアプランを考えましょう。