医療法人財団とは?~メリットや医療法人社団との違い~


医療法人は、大きく医療法人社団と医療法人財団の2つに分かれます。
現在、医療法人の9割以上は医療法人社団が占めていますが、今回ピックアップするのは医療法人財団の方です。
ここからは、医療法人財団の概要や設立のメリット、医療法人社団との主な違いについて解説したいと思います。

目次

医療法人財団の概要

医療法人のうち、金銭その他の財産の寄付行為によって設立され、なおかつ定款に示された設立者の意思を活動の準拠とする法人形態を医療法人財団といいます。
実際の意思決定は、理事・監事を監督とする評議員会、または理事会(業務執行機関)で行われます。
法人財団には出資持分の概念が存在しないため、解散時の財産は国、地方公共団体、他の医療法人のいずれかに帰属させることになります。
ちなみに、医療法人財団の中には、特定医療法人の承認および社会医療法人の認定を受けたものもあります。

医療法人財団設立のメリットについて

医療法人財団を設立するメリットとして大きいのは、やはり患者さんや社会の印象が良くなることが挙げられます。
非営利の運営は、外部の方々に好印象を与えるものであり、今後大きな自身のクリニックを持ちたいと考える医師にとって、こちらは大きな意味を持ちます。
また、医療法人財団は、設立時の資産もすべて寄付でまかなうため、構成員への払い戻しによる資金減少の心配がありません。
こちらは、そもそも医療法人財団に出資という概念がないからです。
その他、特定医療法人、社会医療法人への移行を検討する際、人員補充の面で負担が少ないことも、医療法人財団ならではのメリットだと言えます。

医療法人財団設立にデメリットはある?

医療法人財団を設立するにあたってのデメリットとしては、財産寄付において贈与税がかかる点が挙げられます。
現在、個人で事業を展開している医師が新たに医療法人財団を設立する場合、同族経営者による出資がメインとなる可能性が高いですが、最初から多額の寄付を受けられるとは考えにくいです。
このような理由から、贈与税の課税以前に設立された医療法人財団は存続するものの、新規設立はほとんど見られない状態となっています。

医療法人財団と医療法人社団の違い

医療法人財団と医療法人社団は、どちらも医療法人の類型の1つではありますが、異なる点は多いです。
具体的には、以下のような点に違いがあります。

・趣旨
・議決機関とその性格
・基本事項
・設立時資産
・基金制度
・社員の選任方法
・役員の選任方法
・出資の払い戻し
・解散時の残余財産の帰属先
・合併

趣旨

医療法人社団は、複数の人物が集まって設立されるものであるのに対し、医療法人財団は個人または法人が無償で寄付する財産に基づいて設立されます。

議決機関とその性格

医療法人社団の議決機関は、最高議決機関である社員総会ですが、医療法人財団は、諮問機関と最高決議機関、両方の性格を持つ評議員会を議決機関としています。

基本事項

医療法人社団の基本事項は定款に定めるのに対し、医療法人財団の基本事項は寄付行為に定めます。

設立時資産

医療法人社団の設立時資産は、出資・拠出(第5次医療法改正後は拠出もしくは基金拠出のみ)ですが、医療法人財団は寄付によって設立します。

基金制度

基金制度については、持分なしの医療法人社団のみ、定款に定めることで利用できます。
一方、医療法人財団はこちらを利用することができません。

社員の選任方法

医療法人社団の社員は、社員総会の決議によって選任されますが、医療法人財団の社員は理事会の決議に基づき、理事長が委嘱します。

役員の選任方法

医療法人社団の役員は社員総会、医療法人財団の役員は評議員会の決議によって選任します。

出資の払い戻し

持分ありの医療法人社団は、定款の規定に基づき、社員の退社時に出資を払い戻します。
また、持分なしの医療法人社団は、出資ができないため払戻もできません。
そして、医療法人財団に関しては、そもそも出資の概念がないため、当然払戻も不可能です。

解散時の残余財産の帰属先

持分ありの医療法人社団の場合、解散時の残余財産については、払込済出資額に応じて払い戻しますが、持分なしの医療法人社団、医療法人財団は、以下のいずれかから帰属先を選定します。

・国
・地方公共団体
・医療法第31条に定める公的医療機関の開設者
・郡市区医師会または都道府県医師会
・医療法人財団もしくは医療法人社団で持分の定めのない者

合併

医療法人社団は、総社員の同意があれば、他の医療法人社団と合併することが可能です。
一方、医療法人財団は、寄付行為に合併することが可能である旨の規定があり、なおかつ理事の2/3以上の同意があれば、他の医療法人財団と合併することができます。

まとめ

ここまで、医療法人財団の概要や設立のメリット、医療法人社団との主な違いを見ていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
資産の安定やイメージの向上など、医療法人財団にはさまざまなメリットがありますが、実際はこれらのメリットがデメリットを上回らず、ほとんど新規設立されていないというのが現状です。
もし、医療法人財団成りを検討しているクリニックがあれば、こちらの点もしっかり考慮した上で判断してください。


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