看護師として働くうえで、夜勤手当は重要な要素のひとつです。夜勤手当が妥当な金額かどうかは、看護師としてのモチベーションを維持するうえで大きな意味があります。
しかし、夜勤手当の相場や妥当な金額は、職場によって異なるため、正しい情報を知っておくことが重要です。ここでは、看護師の夜勤手当の相場をはじめ、労働基準法で定められている深夜割増料金に関する知識や夜勤手当が高い病院について解説します。
看護師の夜勤手当の相場は?
看護師の夜勤手当の相場は、働き方によって異なります。日本看護協会「2020年病院看護実態調査」のデータをもとに金額相場を紹介します。
三交代制・準夜勤の場合
三交代制の準夜勤では、1回あたりの平均手当が4,154円です。
同調査の過去の手当額を調べてみると、2017年が4,149円、2018年が4,090円、2019年が4,141円という結果で推移しており、ゆるやかですが年々手当が上がっていることがわかります。
三交代制・深夜勤の場合
三交代制の深夜勤では、1回あたりの平均手当が5,122円です。
過去の調査をさかのぼると、2017年が5,066円、2018年が5,053円、2019年が5,033円という結果で推移しており、手当の額は、ほぼ横ばいであることがわかります。
2020年の調査では5,122円になっているため、今後徐々に高くなることが予想されます。
二交代制の夜勤の場合
二交代制の夜勤では、1回あたりの平均手当が11,286 円です。二交代制の夜勤の場合、勤務時間も長いため、三交代制の夜勤に比べ手厚い手当が支給されます。
過去のデータを見ても、2017年が10,999円、2018年が11,019円、2019年が11,026円となっており、着実に年々手当が上がっているのがわかるでしょう。
二交代制の夜勤は長時間の勤務になるため避けたいという方もいますが、夜勤明けは休みが取れたり、休憩や仮眠がしっかり取れたりするため、手厚い手当を理由に選ぶ人も多いです。
出典:「2020年 病院看護実態調査 報告書」(日本看護協会)
労働基準法で定められた深夜割増賃金は?
労働基準法第第37条では、「午後10時から午前5時の労働には通常勤務の25%以上の深夜割増賃金を支払う」と定められています。ここでは、基本給やシフトの例をあげながら、深夜割増賃金の計算例を見ていきましょう。
三交代制の深夜割増賃金
ある病院の日勤、準夜勤、深夜勤のシフト例をもとに、深夜割増賃金を計算してみましょう。
勤務時間 | 休憩 | |
日勤 | 午前8時~午後5時 | 1時間 |
準夜勤 | 午後4時~午前1時 | 1時間 |
深夜勤 | 午前1時~午前9時 | 1時間 |
看護師の基本給を相場である24万円と想定して、上記のシフトでひと月の労働時間を160時間とした場合の準夜勤と深夜勤、それぞれの深夜割増賃金を計算すると以下のようになります。
【準夜勤】
まず、基本給を時給換算すると以下のとおりです。
240,000円÷160時間=1,500円
25%増の割増分の賃金は、以下の計算で求められます。
1,500円×0.25=375円
準夜勤帯では深夜割増に該当するのが3時間のため、深夜割増賃金は以下のとおりです。
375円×3時間=1,125円
【深夜勤】
深夜勤でも同じ式を用いて計算できます。深夜割増に該当するのは4時間のため、深夜割増賃金は以下のとおりです。
375円×4時間=1,500円
二交代制の深夜割増賃金
上記と同じ条件の基本給24万円の看護師で、二交代制の場合を考えてみましょう。日勤と夜勤のシフト例は以下のとおりです。
勤務時間 | 休憩 | |
日勤 | 午前8時30分~午後5時30分 | 1時間 |
夜勤 | 午後5時~午前9時30分 | 2時間 |
このようなシフトの場合、深夜割増に該当するのは、夜勤の午後10時~午前5時の間です。
この間に取る休憩を1時間とすると、深夜割増に該当する実働時間は6時間となり、深夜割増賃金は以下の金額になります。
375円×6時間=2,250円
二交代制の夜勤では深夜割増に該当する時間が長いぶん、三交代制と比べると高い割増賃金が得られます。
求人の記載から夜勤手当を計算する方法
看護師の求人には、シフトごとの夜勤手当まで細かく記載してあることはほとんどありません。「月給330,000円~」というように、ざっくりとした給与が書かれていることが一般的です。
ここからは、求人に掲載されている情報から夜勤手当を計算する方法を紹介します。少ない情報から夜勤手当を計算して、転職の際の材料に活用しましょう。
給与から計算する
求人広告では、月給例として給与を掲載していることが一般的です。この月給例は総支給額である場合が多いため、そこから基本給の相場とその他の手当を引いて、おおよその夜勤手当を算出できます。
「月給33万円(住宅手当2万円、夜勤手当含む)二交代制」と記載がある求人を例に、計算してみましょう。
月給から経験10年の基本給の相場である248,000円と住宅手当20,000円を引き、夜勤手当の総支給額を計算します。
330,000-248,000-20,000=62,000円
さらに、62,000円を二交代制の回数相場である5回で割ると、1回あたりのおおよその夜勤手当がわかります。
62,000円÷5=12,400円
ただし、看護師の基本給は年齢や経験によって大きく異なり、夜勤回数も病院によって異なります。この計算でわかるのは、おおよその金額であることを念頭においておきましょう。
夜勤手当の総支給額から計算する
求人に夜勤手当の総支給額が記載されている場合も、1回あたりのおおよその夜勤手当額を算出できます。
例えば、求人に「基本給25万円+各種手当+夜勤手当5万円(準夜勤4回、深夜勤3回)」という記載があると想定しましょう。
準夜勤4回、深夜勤3回で夜勤手当の合計が5万円になるように計算すると、1回あたりの支給額がわかります。
準夜勤 6,500×4=26,000
深夜金 8,000×3=24,000
合計 26,000+24,000=50,000
この場合1回あたりの夜勤手当は、準夜勤で6,500円、深夜勤で8,000円です。
三交代制の夜勤手当の平均が、準夜勤で4,154円、深夜勤で5,122円であることを考えると、かなり高いことがわかります。
看護師の夜勤手当が高い病院は?
夜勤手当は、年収をアップさせていきたい看護師にとって重要なポイントです。勤める病院によって、夜勤手当に大きく差がつくこともあります。ここからは、夜勤手当が高い病院の特徴を3つに分けて解説します。
病床数が多い病院
病床数の多い病院は、大手グループの医療機関であることが多いです。そのため、財政基盤が安定しており、看護師に設定されている給与も高い傾向にあります。福利厚生も手厚く、高待遇な条件であることも多いです。
大手グループの医療機関でなくとも、病床数が多いことは、看護師一人あたりの業務負担が大きくなることから、夜勤手当を高めに設定している病院もあります。
病床数が多い病院を選ぶ際は、大手企業グループの病院をはじめ、公務員として働く国立・公立病院などを検討すると良いでしょう。
専門性が高い病院
夜勤手当が高い病院の中には、二次救急や三次救急を担う救急指定病院や特定集中治療室を備えた病院があります。
こうした専門性の高い病院では、夜間の急患や緊急手術に対応することも多く、看護師の業務負担の大きさから、高めの夜勤手当が支給される傾向があります。
また、業務負担の大きさから離職率が高く、人員確保を目的に高額の夜勤手当を支払う病院もあります。
高レベルのスキルを求められる環境であるため、転職を検討する際は夜勤手当だけでなく、自分のスキルや病院の労働環境、福利厚生なども十分に考慮することが重要です。
都市部の病院
都市部にある病院は、もともと給与水準が高く設定されているため、夜勤手当も地方都市に比べて高めに設定されています。とくに、東京都内は夜勤手当がほかの地域と比べて高めです。
日本看護協会の調査でも、主な都市圏における平日1回あたりの二交代制夜勤手当平均額は、以下の結果となっています。
・東京都 13,107円
・神奈川県 12,696円
・千葉県 13,353円
・埼玉県 12,961円
・大阪府 12,522円
・兵庫県 12,634円
・京都府 12,546円
地方と比較し人口が多い都市部では、求人倍率も高くなることが予想されますが、地方からの引っ越しも視野に入れている場合は、検討してみましょう。
出典:「2020年 病院看護実態調査 報告書」(日本看護協会)
まとめ
看護師の夜勤手当は、勤め先の病院や勤務体制、基本給によっても異なります。夜勤手当がもっと高い病院に転職したい場合は、この記事で紹介した病院を参考にしてみましょう。
夜勤はつらいけれど、ある程度の収入は稼ぎたいという人は、以下の記事でも紹介している夜勤なしで働ける職場も参考にしてみてください。
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