看護師長の平均年収は?仕事内容や必要な資質についても徹底解説

看護師長の平均年収

日本看護協会の「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」では、看護師長の平均月収は約41万円と公表されています。基本給の平均は月額37万949円、役職手当の平均は4万5,439円でした。

また、看護師長を含む看護職の中間管理職の賞与額は、平均124万5,754円です。

これらのデータから計算すると、看護師長の平均年収は約620万円になります。

なお、役職のない病院看護師の基本給の平均は月額32万3,298円、賞与額の平均は89万1,909円です。諸手当を含めると年収は500万円前後でしょう。

看護師長になると、役職なしの人に比べて120万円ほど年収が上がることになります。

参照:「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」(日本看護協会)

看護師長と看護主任・看護部長との給料差

看護師長は、一般の会社でいう課長クラスの管理職です。看護師長の下位役職にあたる看護主任や、上位役職である看護部長との給料差についても、先の調査から紹介します。

なお、看護師の給与体系は経験年数が関係すること、夜勤の回数によって手当額が大きく変動することも考慮が必要です。

看護主任の平均年収

看護主任は、一般企業では係長にあたる管理職で、看護師長を補佐する役割を担っています。

月収平均は、基本給約32万円+役職手当約7,000円で、約33万円です。月収では8万円ほど看護師長のほうが高くなります。

年収で見た場合には、役職のない看護師より少し高い530万円前後になるでしょう。

看護部長の平均年収

看護部長は、看護師長よりも上位の役職で、部長クラスの管理職になります。月収平均は、基本給約42万円+役職手当約8万円で約50万円です。月額では看護師長よりも9万円ほど高くなります。

また、看護部長を含む管理職の賞与平均は約149万円でした。これらのデータをもとにすると、年収は750万円前後になるでしょう。看護師長よりも130万円ほど年収が高くなります。

看護師長の仕事内容・役割

看護師長は、管理職としてマネジメント業務に携わることが、役職のない看護師との大きな違いです。看護師長の仕事内容や、組織内での役割について解説します。

看護目標の設定と達成

看護師長は、管理職として看護の質を向上させる役割を担います。

看護師は個人の看護について目標を設定しますが、看護師長は部署内の目標を立て、達成に向けて看護師への働きかけを行います。例えば、誤薬の発生率20%削減を目標としてマニュアルを作成し評価指標を管理するといった、実践的な取り組みを実施することが仕事です。

看護師の育成と管理

看護師の育成として、看護師個々の知識レベルやスキルを把握し、適切な教育を行うことも看護師長の仕事です。看護手順の整備や、教育計画の立案、院内研修の設定などを行います。

加えて、看護師のメンタル面のケアや、キャリアプランについての面談などのマネジメントにも関わります。

日々の業務の中で、困りごとについて看護師長に相談した経験がある人も多いでしょう。指導者、先輩として、看護師をバックアップして現場を支えることも看護師長の重要な役割です。

他部署との連携・交渉

看護師は、医師をはじめさまざまな職種や部署の人と関わります。

特に規模の大きな病院では、外来や病棟、手術室など各部署間の調整が必要になる機会が多いです。担当部署の管理者として、他部署との連携を行うことも看護師長の仕事になります。

看護師長に必要なスキルとは

看護師長は、部署のマネジメントを幅広く行う立場で、必要なスキルも多岐にわたります。その中から、特に重要なスキルを紹介します。

リーダーシップ

看護師長には、部署をまとめ上げるためのリーダーシップが必要です。ただし、指示役ではなく、看護師の意見に耳を傾け意見を取りまとめ、目標達成や課題への改善に向けて積極的に取り組んでいく能力が求められます。

また、部署の看護師の特性を見極め、適切な業務を割り振ることで組織をより良い状態に導いていくことも重要です。良いことはきちんと評価し、できていないところはできるようサポートしていくことも、看護師長に必要なリーダーシップのひとつといえます。

判断力

判断力も看護師長がもつべきスキルです。

看護の現場では、予期しない急変やインシデント、部署間の連絡ミスなどのトラブルが発生することもあります。そのようなときに、部署の管理者として状況を的確に判断し、早急かつ冷静に対処しなければなりません。

コミュニケーション能力

看護師長には、部署内ではもちろん、他部署との連携や交渉時にも相手の立場を尊重しつつ、自分の意見をしっかり伝えられるコミュニケーション能力が必要です。

ときには、経営陣や医師、現場看護師との板挟みとなることもあります。そのようなときにも、看護師が業務に専念できるよう、コミュニケーション能力を駆使してうまく折衝していかなければなりません。

また、看護師のマネジメントにあたってもコミュニケーション能力は必須です。部署の看護師が抱える悩みや問題を解決するにも、まずは意思疎通を図り、余裕をもって受け止めることが重要になります。

看護師としての知識や経験

看護師長は、部署の頼れる管理者です。現場看護師に対して、適切な指導やアドバイスを行えるだけの知識や経験も欠かせません。トラブルやクレームなどに的確に対処するためにも必要なスキルです。

また、多くの看護師をまとめ上げるには、看護師からの信頼も重要になります。信頼の獲得には人間的な部分だけでなく、知識や経験に裏付けられた看護師としての実力も必要です。

看護師長になるためには?

看護師長になるには、まずスタッフナースとして経験やスキルを積み、その後、看護主任として看護師長の補佐を経験して昇格するというステップが一般的です。昇格には、試験への合格や看護部長の推薦が必要になります。選ばれた一部の人が、看護師長にキャリアアップできると考えて良いでしょう。

現在の職場で看護師長へのポストが期待できない場合には、転職して新たな場所で看護師長を目指すのもひとつの方法といえます。

また、スキル獲得のために、認定看護管理者の資格を取得するのも良いでしょう。

認定看護管理者とは、医療施設の管理者としての知識を認定する資格です。看護師として5年以上の実務実践のある人が、所定の認定看護管理者教育もしくは看護管理の修士課程を修了したのち、認定審査に合格することで取得できます。

資格を取得すれば必ず管理職になれるとは限りませんが、管理者としての能力を評価されることにつながるでしょう。また、知識を身に付けていることで、自信をもって日々の業務に取り組めます。

なお、給料アップを目指したいなら、看護師長にこだわらず給料の高い職場に転職する方法もあります。以下の記事では、看護師の給料が高い職場について解説しているので参考にしてください。

給料が高い5つの職場を紹介!給料を上げる方法も解説

まとめ

看護師長は部署のマネジメントに携わるやりがいのある仕事です。年収面でも、100万円以上のアップが期待できます。

看護師長になるには、看護主任として数年の実績が必要です。看護師としては、おおむね15年以上の臨床経験を積んだのちに就ける役職になります。

ただし、規模の小さな医療施設では、看護主任を置かないこともあるので、スタッフナースから看護師長へと昇格することもあります。

将来看護師長を目指しているなら、まず今の職場で描けるキャリアステップを確認しておきましょう。